2007/12/02

丸かじりドンキホーテ


世界最大量の出版物というのは、キリスト教の聖書であることは誰でも分かる。しかし、その次に多い出版物というのは何だろうというと、意外にほとんどの人は何だろうか答えることが出来ない人が多いのではないだろうか。実は、「ドン・キホーテ」なのだそうな。東方見聞録とかシェークスピアのいずれかの書物か、またはゲーテかジュリアス=シーサーのガリア戦記あたりかなーと思う人は多いだろうが、どれも違うのだそうな。ちなみに、日本での最大量出版物は、これも意外に知られていないが、「電話帳」である。誰も「購入する出版物」を対象としているわけではないのを改めて言及しておく。

しかし、名前は知っていても、ドン・キホーテの物語とは一体どういう内容なのか答えられる人はどれだけ居るのだろうか?この本の中でも「スペイン人でさえも全部読んだことがある人はいない」ということが書かれている。確かに、源氏物語や平家物語の内容は知っていても、全巻詳細に読破したひとは文学系以外の人でどれだけの日本人が読破しているのか疑問である。自分もその中の一人である。世界第2位の出版物であるにも関わらず、このありさま。その理由は、ドン・キホーテが実は長い物語であること、当時のスペインの風土・文化・思想・政治についての知識がないと、その物語の面白さを理解できないということが、日本人にとってもハードルの高さがあるのだろうとおもう。確かに、ドン・キホーテの物語は、小学生向きに簡単に書かれたり、絵本のようなものにして売られているものがあるが、それは所詮子供だましであって、全体のあらすじは分かっても詳細のあらすじと物語が「バカ受け」する理由は知ることができない。文学作品においてはどれも同じだと思うが、その書物が書かれた時代背景を知らないと、全然理解できないのだろうなというのは感じた。

作者もその点を痛快に述べて、じゃぁ、途中で諦めてしまうドンキ・ホーテを、出版当時仕事をしなくても読ことに熱中するひとが多かったという、いまでいうところの、ハリーポッターの出版と同じような現象が起こったことの解説がされているものが良い。もちろん、物語をこの本の作者なりに簡潔にまとめているところもいいが、過不足無く簡潔にまとめているところもいい。これを読むと、スペインという国がどのような国であったのか、そして、いまではスペインの観光地で有名になったところが、なぜ有名になったのかというのも理解できる。ドン・キホーテを読まずして、スペインを観光することは、全く意味が無いことも分かる。観光旅行の企画で、ドン・キホーテの道筋を歩くという企画を見たことがあるのだが、それって、物語を読んだことが無い人にとっては全く意味が無いだろうなとおもう。買物しか興味が無い人にとっては、買物が出来ない場所への観光は、買物と買物の間の余興にしか思われないと思うので、そういう人は別に海外にまで行って買物する必要はなく、銀座や表参道で買物をしていたほうが断然安いはすだから、こういう本を読む必要は無いのだろう。ヨーロッパ人にとっては、教養は重要な会話のファクターであるので、これはアジア人にとってはなかなか難しいハードルである。ドン・キホーテあたりは超基礎的な物語であるので、これを知らずしてスペインに行くことほど恥ずかしいものは無い。無知のままスペインに行って、それなりに感動して、帰国することは、単なるその観光客の自己満足としかない。

表面的なスペインを知っているだけでは、観光旅行をするにはつまらないとおもう。それで十分だという人は不必要なことだろう。金が続く限り買物を続けて貰えればいいとおもう。そうじゃない何故スペインに観光旅行にいくのかと考えた人は、是非一度はドン・キホーテを読んでからスペインに行くことをお勧めする。そのドン・キホーテを最初から詳細に読むのが面倒くさいという人にとっては、この解説本を読んでから行くのがいい。これを読めば、食文化、キリスト教とイスラム文化の融合、そしてスペイン王国の文化というのがすぐに理解できるだろう。ましてや、ドン・キホーテの軌跡を辿ろうとする人は、道中の町で何をするべきか、何を見るべきかというのがよくわかるはずだ。きっとどのガイドブックよりも重要なことが書かれていると思う。

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