2014/03/01

北陸新幹線

北陸地方は昔から東京から遠くて、雪深くて、簡単にはいけないような場所であった。なにしろ、上越新幹線が出来てからちょっとはマシになったが、それまでは金沢から上野に出るのには、当時のL特急・白山やはくたかを使っても、7時間近くかかっていた。上越新幹線開通後は、途中駅の越後湯沢から別の路線を経由して北陸本線にいくと、格段に時間が短縮した。それでも5時間近くはかかるので、まだまだ遠いところであるとはいえよう。なぜなら小さいときに、小学生のときに金沢に住んでいて、両親のどちらの親も東京に住んでいたので、夏休みのときに遊びに行くとするときに、この列車に乗っていくのだが、乗っても乗っても全然到着しないし、寝ても寝ても着かないくらい遠い場所だという印象があった。

かの加賀百万石の城下町として、京都と江戸の次に金を持っていた藩を治めていた前田家は当時の支配者の策略により、金沢から参勤交代をして歩いて通っていたというから、まぁ恐れ入る。これも江戸幕府が各藩に金を使わせて、徳川に歯向かう気力をなくしてしまうというのが根本的な理由だった。それでも年に1度は江戸に来ないといけないのは藩には重荷だったとおもうが、百万石の加賀藩にとっては、たぶんたいしたことではないことだったろう。でも、片道にかかる時間はハンパない時間だったとおもうから、現代に加賀藩の侍たちが生きていたら、その高速交通網の発達にビックリしていたことだろうと思う。

そんな遠い場所であった北陸3県に対して、長年切望していた北陸新幹線がようやく2015年3月15日に開通する予定までやってきた。路線としては、上越新幹線の延長ではなく、長野新幹線の延長として開通し、まずは最初に金沢まで開通する予定である。最終的には福井県を通って、京都・大阪へ接続される予定のようだが、そこまではまだまだだいぶ先になる予定だ。ルートから考えると、以前のL特急・白山のルートをそのまま継承することになる。このルートで金沢から上野を越えて、一気に東京まで行くことができ、これで最速・2時間半でいけるというというから、もう驚きを隠せない。

長野新幹線の延長として北陸新幹線は営業開始するのだが、そうなると長野新幹線はどうなるのか?という素朴な疑問が残る。もともとは、長野新幹線自体が北陸新幹線の一部として、長野オリンピックを開催するのに合わせて、先に開通することになっただけのことなのだが、長野オリンピック開催から既に16年も経過しているんだから、すっかり長野新幹線という名前自体は馴染んでしまったといってもおかしくない。そんなあとに本来の北陸新幹線が開通となったのでは、長野の名前が消えるんじゃないのかと心配になっている長野のひとたちは多いことだろう。なにしろ、長野オリンピックのときには長野が世界に広まったが、そのあとは長野があっという間に陳腐化してしまったのは記憶に新しい。しかし、できてしまった新幹線がそのまま無くなることはなく、むしろ、長野あたりが東京への通勤圏として変わってしまったことは、もう通勤サラリーマンにとっては消滅させてはいけないものになっている。このことで、長野に集客するはずだった客がみんな東京に出てしまったので、長野自体の経済が急落したのは高速交通網が整備されたあと、必ずその土地にやってくるお決まりの事象だ。高速交通網が発達すると、都会から人がやってくると思って誘致をしようとする地元のひとたちは、開通したあとに、人口と経済の流出が誘致したものによって根こそぎもっていかれることを知るのは、開通後のことであるのはどこの世界でも同じこと。それは通勤という2時間圏内だったら通えなくも無いと思えるほどの距離だから、大都会へ余計人が集まることになるのであって、それよりも時間がかかるものであれば、話はまた全然変わってくる。通勤という概念はどうしても時間が長いので無理であるため、今度はこれまで時間がかかってなかなか行き難かった場所として思われていた所が今度は都会にとって少し身近な場所に変わってくるわけである。つまり、本来の都会の客を呼び込むための交通手段として誘致した地元の思惑が実現することになるのだ。ところが、そうは問屋は卸さない。金沢は東京への通勤圏内にはならないが、都会の人たちが客としてやってくるとしても、途中の長野はどうかというと、単なる途中駅であるため、そこで降りる人が激減するくらい減ることになるだろう。つまり通過地点の役割として長野が存在するだけになるのは目に見えている。これは長野の危機であるのだが、当の長野のひとたちは、おそらく金沢へ向かう客を途中で狙うドジョウとして思っているだけなのだろう。今後が危うい。

さて、北陸新幹線で使われる車両は、青森に行っている新幹線と同じ形式の車両を使う予定で、3つのレベルの車両が存在するのも同じだ。特にグランプラスのシートは、オール革張りになっているし、席が広いので、2時間半の列車の旅は全然苦痛じゃないことだろうとは思う。

途中の停車駅は、これも既存の駅を利用するようなものかと思っていたところ、実際には違っていた。一番名前が魅力的な駅の名前は「黒部宇奈月温泉」という駅だろう。黒部峡谷は夏になったら、大変山岳ファンにとっては魅力的な登山ルートの入口として訪問する人はたくさんいるのだろうということは予想できるし、紅葉の時期なったら、黒部峡谷鉄道のトロッコ列車から見る景色は最高に美しいと思われるので、これを見るためにやってくるひとたちも多いことだろうと思う。このトロッコが走る鉄道と新幹線が接続するのかもしれないとおもうと、驚異的にこのトロッコ列車に乗ろうとする観光客がやってくることが想像できる。そうなると、辺境のような場所だったところに、くだらない観光客がたくさんやってくると、地元の金目当てのひとたちは「地域活性化」という名前のもとに商売繁盛するのだろうが、自然破壊の深刻さは収まっていかないことだろう。マナーのない下らない客がたくさん来るからである。そうなったあとでは地元も金儲けよりこの自然を守ることが重要と思うはずであるが、そのときには既に遅い。

北陸という魅力的な路線を走ることになる新幹線が開通することによって、困った会社が2社ある。1つは石川県の主要ゲートウェイになっている小松空港を使っている航空会社であろう。小松空港は、羽田空港からだと50分程度で行ける場所なので、飛行機を使えば確かに使えるといえよう。小松空港自体は日本海側にある航空自衛隊の基地も兼用しており、日本の空港としては最大に近いくらいの大きさがある空港である。なにしろ、北朝鮮や中国の脅威があった場合には、いち早くスクランブル発信するための最前基地になっているからである。その一部を商用利用としている場所だ。だから、小松自体が空港で成り立っている成田みたいなものだと思っても良いだろう。その小松自体が金沢からは結構離れており、空港直行バスでも1時間はかかる場所にあるのだ。それに飛行機に乗るために出発する寸前に空港に言っても乗れないのは常識。その前時間を考えると、実は東京駅から金沢まで2時間半でいける新幹線のほうがトータルとして実は時間的に近いということになるのである。そして、新幹線であるために、それなりに本数が多いことだろう。ANAとJALをあわせて1日の便数は決まっているだろうし、1機に乗せられる乗客の多さは多くても250人くらいだとは考えると、新幹線で大量に輸送できるほうが断然便利になることは間違いない。あとは、新幹線の料金が飛行機との競争としてどの程度安いものになるのかということにかかってくることだろう。もちろん、競争が新幹線になると、かつての東京~大阪間の輸送競争として新幹線と航空会社が競争になったように、今度は東京~金沢間が新たな新幹線と航空会社との間の競争になることだろう。

そして、もう1つ地味に痛い影響を受けることになるのが、上越線の六日町から犀潟まで結んでいる北越急行なのだと思う。越後湯沢からこの北越急行の線路を使って直江津まで特急を使い、金沢方面の列車に乗り換えていくというひとは既存でも多かったことだろう。北越急行の途中の駅で降りることは無いと思うが、鉄道会社にとっては、自社線路を通るだけでも接続会社から通常営業分の収入が入ってくるわけだから、駅設備にあまり手をかけず、沿線開発をしなくても、漁夫の利のようにして得られる収入で成り立っていたことだろうと思う。それを今度は全く経路として北越急行の路線を使わない金沢方面の新幹線が開通ということになると、北越急行を使うようなひとは、激減するのは決まっている。新幹線料金が高いのであれば、それなら乗り継ぎでもいいから北越急行経由でいこうというひとはでてくるかもしれないが、これまでの乗客利用率に比べると、桁が1つ変わるくらい違ってくるのは容易に想像できることだ。結果的には北越急行自体が消滅してしまう可能性が出てくるかもしれない。それは軽井沢~横井間の路線がなくなってしまったのと同じ影響である。上越新幹線の開通と同時に第三セクターとして運営していた会社も終焉を迎えることは目に見えている。

京都は日本人の心のふるさととは言える場所だが、京都の次に京都らしいのが金沢で、それは金をもっていた加賀百万石前田家が育んだ街も、和の文化を十分すぎるくらい体験できる場所であるため、もっともっと金沢へ行く人が増えれば良いと思う。それと同時に、金沢はこれまでと同様にあまり近代化はしないで欲しいと思っている。

◆北陸新幹線停車駅(長野以北)

長野-飯山-上越妙高-糸魚川-黒部宇奈月温泉-富山-新高岡-金沢

◆北陸新幹線(2025年以降)

金沢-小松-加賀温泉-芦原温泉-福井-南越-敦賀

ビットコイン管理会社が倒産?

ビットコイン(BitCoin)がここのところ金融界では注目される金融商品の1つであったが、それを管理および取引機関とする世界最大の会社であるマウントゴックス社(MTGOX)は実は日本の渋谷に存在していたのだが、この会社が会社更生法を申請した。これが普通の会社であったり、普通の銀行であったのであれば、そうですかーで終わるところなのだが、取り扱っている商品がビットコインだったため、そのビットコインとは一体なんなのか、そしてリアルの世界で取引されている貨幣と互換性はあるのか、実態はなんなのか?という点で、一般的には疑問符がたくさん付くような商品だったために、そんな怪しいものを取り扱っているのであれば、別に会社更生法を申請したとしても、それで一体オチとしてどういう結論に落としたいわけ?と思う人もいるし、行政機関としても対応に苦慮する自体に陥ってしまった。

ビットコインは、ネット上の仮想的な貨幣であり、実世界では、鉱物の金と同じように、埋蔵量は決まっていることと、埋蔵化されているビットコインは暗号化されており、それをビットコインとして利用できるようにするには、非常に難しい復号処理をして「発掘」作業を行うという意味では、まさしく金山から金鉱脈を探して、金を掘り出していると言うのと同じであり、その発掘量があまり多くないために希少価値化していて、その価値に対しては、もともと実世界とネットの仮想空間上の世界は別々のものだったものを強引に取引できるようにしてしまったのがマウントゴックスのような取引機関である。全体の「埋蔵量」は」2400万ビットコインであり、それを全部発掘するにはまだまだとてつもない年月が必要になってくるものである。そして、その埋蔵量というのは、誰かが決めているというわけじゃなく、どこの世界にも属さず、どこの管理機関が指示しているというわけでもないのだ。したがって、普通の貨幣は、その国家の中央銀行がその国家の価値を量るための指標でもあるのだが、ビットコインは国家というわけに属さないために、仮想貨幣としての価値を独自に持てるという意味では世界共通貨幣といえるだろう。まさしく金が実貨幣と取引でき、その価値はその時勢にあわせて変わっていくのと全く同じである。

リアル通貨と交換できるのが取引所であるのだが、実際にビットコインを通用通貨として利用できる店舗や会社なんかも実は世界中に結構たくさん存在する。一番ビックリしたのは、給与をビットコインで支払っているという会社だ。ビットコインとして社員に渡される給与は同じ「量」なのだが、それを実生活で利用できるためにリアル通貨に変換するときに、ビットコインと例えば米ドルとの間の為替は、毎日のようにビットコインが強くなるようなレートになっているのであるため、同じビットコインの給与だったとしても、毎月給与が勝手に上がっているということになるのと同じだ。

今回会社更生法を申請したマウントゴックス社は、この右肩アガリになっているビットコインの世界で、所詮取引所として運営しているだけだったら、その管理費だけをユーザからふんだくっているだけで左団扇のような会社経営ができたはず。そうは黙って運営できなくなってしまった理由はというと、それは数年前からシステムの脆弱性を狙ったネットハッキングの攻撃によって、管理していた顧客の口座のすべての預金に該当する金額が抜き取られる事件が発覚してしまったのだ。被害総額はリアル貨幣価値でいうところの480億円分。マウントゴックス社が世界最大のビットコイン取引会社であったために攻撃者は一番狙っていたのだとは思う。全口座を全部抜き取られてしまったので、この会社に資産を保有していた人は、一瞬にしてパーになってしまった。口座に資産がなくなってしまたのであれば、本来の銀行だと、預金を補填する義務がある。ところが、このビットコインの世界は日本の金融管理とは全く関係ないところで管理されているところであるために、普通の日本の会社が会社更生法を申請したら、銀行の場合はある程度政府から補償を得たりすることもできるところを、政府としても仮想貨幣なのだから補償しようにも出来ないというオチになってしまっているわけである。これで一気に問題が表面化してしまったわけだ。

リアルの世界では、ほぼドルを世界通貨の基軸として、その為替レートに従って経済が廻っているのだが、そこにどこの国の制御も関わらないという第三勢力が入ってきたことによって、アメリカが市場をコントロールできると思っていた自体を脅かすことになってしまって苦々しく思っていたことなのだろう。なにしろ、世界をアメリカが握っているようなものだった経済が、アメリカの支配とは全く関係ない経済支配が出てくるということは脅威のなにものでもない。貨幣価値が低い通貨を発行している国にとっては、基軸がドルになるのか円になるのかユーロになるのかと同じようにビットコインになるかの違いだけだから、そういう国にとっては基軸が変わることは大して影響が無い。今回の攻撃としては、既存経済を脅かすことに違和感を感じる国家が一番怪しいと睨んでも良く、その国家の秘密警察を中心としたサイバーテロ対応機関が攻撃したのではないかという話が出てくることも分からなくも無い。

溜まったもんじゃないと思っているのは、この倒産したマウントゴックス社に口座を持ち、闘志目的に資産をぶん投げていた人たちだろう。投資した金額が短期間で100倍以上の価値に上がったビットコインの世界を、どこかのタイミングでは引き出そうとは思っていたことは間違いないのだろうが、下がる気配が一向にないような動きをしていた仮想貨幣に対して、もう良いから下ろそうと思っていたような人はほとんど居なかったのではないだろうか。まだまだ価値は上がると思っていた矢先に、いきなり口座は消滅するわ、資産はパーになってしまうわというオチになったことによって、全財産がいきなりなくなってしまったという悲しい人も出てきた。日本に会社があるからといって、この会社に日本人ばかりが預けていたかというと、そうでもない。むしろ外国人のほうが積極的にビットコインに投資をたくさんしていたひとたちが結構多い。テレビで何度も出てきたイギリス人は、2週間も自分の口座にアクセスが出来ない状態に非常に不安を感じて、マウントゴックスがある日本にまでやってきて、必死になって会社の前で「なんとかしろ!」と1人でシュプレッシコールを行っていたのだが、消滅してしまったものは残念ながら戻ってこない。

今回の出来事を「事件」と見た場合、かつて「円天」なんていうわけのわからない仮想通貨があって、一部の熱狂的な老人や主婦層が盛り上がっていたという事件があった。結果的には、その円天ワールドに参加していた人たち全部の資産が主宰者に持っていかれて、円天を主宰していたひとが逮捕されるという結果に終わったことがあった。今回出来事は、ある意味、この円天に似ているような気もする。ただし、仮想通貨として有効利用できている範囲が、円天の場合は日本国内だけだったが、ビットコインの場合は世界規模であるというところが違う。そして、ビットコインの取引所というのは、世界各地に会社が存在しているというところも違うのである。

さらにもう1つ、こういう仮想貨幣に近い空間で商取引をしていた仕組みがあったことお覚えている人はいるだろうか?かつて「アバター」という仮想空間上のキャラクターを使って、仮想空間内で商取引や生活などをする半リアル型シムシティーである「セカンドライフ」というものが流行っていた。あれもいつの間にか誰も何も騒がなくなってしまったものだったが、一時期、世界中でその利用について大騒ぎして、大量のリアル貨幣と、セカンドライフ内の貨幣へ変換されて、セカンドライフ内での商取引が馬鹿みたいに盛り上がっていた。究極の育てゲーをネットで接続された空間で、世界中のビジネスマンが本当の金を大量に投入して遊んでいたとしか思えないようなことだったのだが、あのときには、自分は全くのカヤの外で、そこで盛り上がっているアホたちののんきさと、必死さについて馬鹿馬鹿しいと思いながら様子を見ていたのを思い出した。円天のときも、セカンドライフのときも、今回のビットコインについても、見えないものに対して無理やり可視化して、そこに参加していることが最先端な事業であるというような風潮でいることが、参加していない目からみると、AKB48の握手会に熱狂的に参加している人たちを外部から冷めた目で見ていると馬鹿馬鹿シイと思っているのと同じに思えた。

そんなマウントゴックスのサイトは、もう閉鎖されてアクセスできない。マウントゴックスに口座を置いていたひとは、残念でした。お疲れ様でした。