2007/09/08

ヌーン・デイ・ガン

1850年ごろから始まったから続いている伝統的な儀式であるヌーン・デイ・ガン(Noon Day Gun)は、その始まりと今でも続いている歴史の理由が面白い。もともとジャーディン・マセソン商会が香港に入港した際に祝砲として撃ったのが始まりなのだが、その祝砲をイギリス海軍が見て、「軍人でもない人間が港に入っただけなのに、なぜ祝砲を撃つんだ?」という疑問から、裁判が始まり、その刑として永久に毎日12時に空砲を撃つという裁判結果が出る。
さて、そのヌーン・デイ・ガンを見るためには、地下鉄銅鑼湾駅から歩いていくのが良い。エクセルシオールホテルのほうに歩いていけばいいのだが、ヌーン・デイ・ガンが行われるのは、ヴィクトリアパークロードを挟んで、エクセルシオールホテルとは反対側の海に面しているところだ。しかし、この道を渡るというのが実は困難なのだ。というのも横断歩道が無いのである。しかし、広い幹線道路なので、車がびゅんびゅん通っている。じゃ、どのように行けばいいのかというと、ヌーン・デイ・ガンが行われるエリアに直通で繋がる地下道を通っていくのが良いのだ。しかし、この地下道の入り口が本当に分かりにくい。ガイドに「世界貿易センタのビルのエクセルシオール側にある入り口」と書いているのだが、これが探せない。結局、世界貿易センタのドアマンにどうやっていけばいいのかというのを聞いたら、世界貿易センタの地下駐車場の入り口から行くことになる。こんなの普通じゃわかんない。







地下駐車場経由の地下道を通って行くと、いかにも地下の秘密の道という感じのところに出くわす。緑の複数のパイプが通っている場所を通るのだが、これが下水なのか上水なのかは全然分からない。いずれにしろ、センタビルに関する水道管だろうというのは想像できる。
地下道から地上に出てくると、ボートがたくさん停まっている海に面したエリアに出てくる。背後は道になっており、ヌーン・デイ・ガンが行われる場所は、柵で覆われて、その出番をいまかいまかと待っている。実際に空砲を撃つ係官というのがしきりに時計を気にして、出番を待っているようなのだが、撃つまでにはそれなりの儀式があるようで、なかなか前に進まない。毎日正午きっちりに行うという決まりがあるので、1秒ともずれることは許されないというルールにしばられているからなのだろう。空砲が撃つまでが本当のクライマックスで、撃つ前2分間が一番の見所だと思う。2分くらい前になると、「いまから空砲を撃ちますよ」という合図の鐘を鳴らす。まるで火事場の鐘のような音がするものを鳴らすので、なかなか雰囲気がよい。そして、1分前になると、銃砲のすぐ傍にやってきて、しきりに時計を気にする。実際に空砲を撃つときは、あっというまに終わってしまうのだが、それが単なる空砲ではないくらいの強烈な音が響き渡るので、ビデオカメラを廻している人たちは、その音の大きさで手ぶれしてしまうかもしれない。一瞬のイベントのために柵越しに観客は見ており、空砲を撃ったあと、係員が後始末をしたあとは、自由に柵の中に入り、銃砲を間近にみたりすることは可能だ。
面白い習慣だとは思うが、毎日12時の1回きりしかしないので、香港に来たときには見逃さないほうが良い。

香港の大仏

ランタオ島は香港空港やディズニーランドもある島なのだが、それができるまでは香港から近いどうしようもない田舎島だったらしい。それが、いまではエアポートエキスプレスはできるは、地下鉄はできるわ、ゴンピン360と呼ばれるロープウェイができるはで、かなり観光島になったと聞く。しかし、前から変わっていないのは、ここに香港で一番大きな大仏「天壇大仏」だろう。でも、これもそれほど昔にできた大仏ではない1993年に開眼した大仏だ。仏教徒が多い香港人の観光客がたくさん来ている観光スポットである。

ここに行くには、本当ならMRT+ゴンピン360が一番良かった方法だと思うが、自分たちがでかける2週間くらい前に、ロープウェイのゴンドラが墜落するという事故が起こって以来、いつ再開するのか分からない休業状態になってしまっている。となると、行く方法はMRTの終着駅である東湧(Tung Chung)駅からバスに乗って大仏がある場所まで行くしかない。バスは東湧駅を降りてから、ちょっと分かりにくいバスターミナルのなかで、23番のバスに乗るといける。このバスは満員になったら出発してしまう。ほとんど時間がいつ発車するというのは決まっていないようだ。ただ、すぐに満員になるし、すぐに新しいバスが来るのでそれを待って乗ると良い。特に週末になるとお参りする人が多いようなので、時刻表はあってないようなものだ。バスは片道1人HK$16だ。到着までだいたいバスで1時間くらいの道のりを乗るので、結構遠い。山道らしい山道を通って行くためだからだ。
大仏がある終点にバスが到着したら、目の前に長い階段の上に聳え立つ大仏がお目見えする。バスターミナルがある場所はとても広い広場になっており、そこで大仏の写真を撮っている人もたくさん居るのが見られた。大仏へ繋がる階段は見た目としては凄く長いように見えるが、実際にはたった220段程度しかないので、金毘羅宮を知っている人にとってはたいしたことが無い階段だ。それでも香港人にとっては、この階段はかなり強烈な階段に思えるようで、みな、ひーひー言いながら上っているのが笑える。ただ、上ると大仏が微笑んで見えるので、それを拝みたい一身で上っているというように思えた。
それにしても上った後に大仏をしたから眺めてみると実に大仏は可愛らしい顔をしているように見える。中国の人形や寺に飾られている像の顔は、どれも漫画みたいな顔をしているのだが、やはりこういう大仏だけは日本と同じような大仏と同じような顔をしているのだと、改めて仏教という共通基盤では同じ思想があるのだと気付く。
大仏があるエリアから下界を見てみると、ここが高原の上に聳え立っているということが分かる。島なので海が近くにあるというのは当然なのだが、なにせここは標高950mくらいの高原地帯なので、ここだけ見ていると、とても近くに海があるとは思えない。ただし、大仏の立っているエリアに来ると、それが遠目でも見ることが分かる。
ちなみに大仏の中に入ることも可能である。実は大仏に繋がる階段を上る前に入場券を買うのだが、ここで入場券を払うと、上で参拝後、飲み物とアイスクリームを無料でくれるのだ。それで一人10ドル程度だから、なんとなく儲けたという感じになる。しかし、あんまり参拝後に飲み物を貰っている人とか、アイスを食べている人というのを見かけなかった。何故だろう?がめつい広東人なら絶対もらえるものは何でも貰おうと思うはずだと思ったのに、不思議だ。
さて、大仏の中に入ると、実は結構面白くない。仏教に関する展示物がずらっと並んでいるので、本当に仏教が大好きな人でなければ特に楽しさを得ることは無いだろう。貴重な像やら書物があるわけでもないからだ。ただ、2階へ繋がる螺旋階段の真ん中に掲げられている像だけは立派に見えた。しかし、年代物のようには見えない。ちなみに、館内は全面的に撮影不可である。だから、下記の写真は、こっそり撮った違法的写真である。
大仏を拝んだら、また地上に降りて寶連寺に行くのもいいだろう。ちなみに大仏のあるところから寶連寺を見ると、こんな感じに見える。
入り口を入ると、線香の煙を出している巨大なつぼのところに出くわす。さらに奥に進んでいくといかにも中国の寺といわんばかりの建物が見えてくる。中には3体の黄金の仏像が厳かに立っているのがわかる。
香港らしいところではない香港を知るのも、なんだか楽しいと思った。

喫茶店での広東語

いろいろマカオの中を歩き回っていたら、結構疲れたので、セナド広場の傍にあるお洒落っぽいカフェで一休みしようとした。今回入ったのは、ガイドにも載っていた「カフェ・チョコラ(Cafe Chocola)」というところだ。
確かに中に入ったら、代官山あたりにあるカフェのような雰囲気ではある。店は2階立てになっており、1階に数席のテーブル席があり、もちろんディスプレイに並べられたケーキ類もあって、どれも美味そうである。2階のほうは、地元のがきんちょが占拠しているようであるが、二階のほうが雰囲気が良さそうである。

ちょうど自分たちが入店したときには、ほとんどの席が埋まっていたので、無理かなとおもったら、店の人が上へ行くように案内してくれた。ちょうど3人席が空いていたので、そこを使う。自分たちが座っているところからは1階の様子も丸見えになっているので、なかなかカフェとしては良いと思う。クソ暑い中を歩いていたのだが、店の中は冷房がガンガンに効いていたので、ここでは暖かいコーヒーを頼む。他にケーキ類でも頼もうかと思ったのだが、夕ご飯の時間に近いのでやめる。
しかし、思ったのは地元のがきんちょに囲まれるように座っていた配置だったのだが、これが全然落ち着かない。たぶん彼らとしては普通の声の大きさで話をしているつもりなのだろうが、これがめちゃくちゃうるさい。広東語で話をしているから、ただでさえ、広東語で話す人たちの会話は声がでかくなるのだが、追い討ちをかけるように天井から声が反射してきて、かなり声がでかく聞こえる。自分たちも丸テーブルを囲むように座っているのに、これが周りの広東語の会話に声が消されて、自分たちの会話が全く聞こえないということがわかった。広東語で話をしている人たちは、耳が遠いのだろうか?

マカオ散策

マカオの中には色々な世界遺産がたくさんある。媽閣廟からはマカオの中心地であるセナド広場へ移動する。これはバスで移動することにした。マカオ島の間はバスが縦横無尽に走っているので、これを利用するのが一番いい。媽閣廟は島の端にあるので、ここを起点にいろいろなところに行くバスがあるので、便利だ。いくつかのバスはセナド広場のほうへいくので、これは観光案内所でくれるガイドブックを見るのが良いとおもわれる。

その前に媽閣廟に行った後に入った中華料理屋は、マカオらしいところではなく、いかにも地元のどうしようもなさそうな人たちが普通に入る場所だったのだが、これがまた衝撃的だった。料理はまぁまぁで、強いて言えばちょっと味が濃いかなと思ったのだが、それより衝撃的なのは食器の適当さだ。日本なら絶対、こんなものは出さないだろうというような皿とカップが出てきたことだ。よく見ると、ところどころが掻けているのである。
店の名前は「銘記」だ。衝撃的な食器をみたいのであれば、料理は別にしてここに入って一度味わって欲しいものである。
セナド広場へバスで移動してみた。本当に美しい広場で、ここは世界遺産として登録するのは当然だと思った。中華の世界の中でここだけはまるっきりポルトガルそのままだからだからだ。だから、異様に見えてくるのだ。それもこの景色があまりにも綺麗すぎるので本当の世界じゃないのではないか?と一瞬思ってしまう感じだ。
マカオは結構キリスト教徒が多い。やはりポルトガルの支配下にあったからなのだろう。このセナド広場の傍には結構教会があるのだ。一番大きい教会はたぶんセント・ドミンゴ教会だろうと思う。中にはミサじゃない時間帯であれば自由に入ることが出来る。これまでヨーロッパの教会をたくさん見たことがある自分にとっては、ここまでシンプルかつ何も無い殺風景の教会も素晴らしいと思った。やはり暑すぎるからか、扇風機ががんがんに教壇のところにあるのはちょっと笑える。
マカオの代名詞にもなっているセントポール寺院跡に続く道は、まるで台北の夜市のように賑やかで色々な店が道の両側を占拠している。しかし、不思議なのはなぜかビーフジャーキー類を売っている店が多かったことだろう。あれは何か意味があるのだろうか?
やっぱりセントポール寺院は、入り口しか残っていないのだが、ここは絶対訪れるべき場所だ。ほとんどのものが焼けてしまったので存在しないが、若干昔からの遺品が残っている小さな博物館も併設しているので、是非訪れたい。ここでは、歴史の授業でみたことしかない長崎のキリシタンのことがよく分かる。殉教したキリシタンの肖像画もあるので、遠いマカオの地なのになぜか日本に親近感が湧いてしまう場所である。
セントポール寺院からはマカオ博物館のほうに行ってみたい。途中に大砲がずらっと並ぶエリアに出てくるので、ここが「モンテの砦(Mount Fortress)」あることが分かる。全部で22本の大砲があり、いまでは展望台として利用されている場所である。しかし、本当に博物館に行こうとするのであれば、こちらのほうの階段から行くべきではなく、博物館直通のエスカレータを利用したほうがいい。絶対疲れる。しかし、展望台に来て見ると、心地よい風を感じることが出来るので、これを堪能したい人は辛い階段を上るべきだ
展望台と併設しているのが博物館である。香港の博物館とどこがどう違うかと言われるとなかなか答えるのが難しいところであるが、マカオの歴史を知るためには是非ここを訪れたほうがいい。しかし、中は思った以上に広いところなので、のんびり見て歩いていると、他のマカオの各所を見ることが出来ないので、適当に廻ったほうがいい。
夜のセナド広場もなかなか綺麗だ。夜の散策は日差しが無いので涼しいため、この時間帯に出歩くのも悪くない。
夜のマカオといえば、やっぱりカジノだろう。夜になると、何処からともなく集まってきた人たちがネオンが光るカジノ拠点に続々とやってくる。今回はカジノへ出かけることは無かったのだが、ひさしぶりにネオンきらびやかな新宿歌舞伎町のような雰囲気の場所に来たな-という気がした。

マカオの媽閣廟

マカオタワーを後にして、次に向かったのはマカオの代名詞になった媽閣廟だ。媽閣廟は中国南部系の人であれば結構信仰が厚い海の神様であるので、台湾でも海岸地域ではたくさんみることができる。台湾では鹿港の媽閣廟が一番大きなところであるが、最近横浜でも関帝廟と一緒に媽閣廟も建立されて、その派手さゆえに、またしても中華街に1つの名所ができたなーという気がしたが、ここマカオの媽閣廟は本物といってもいいくらい由緒正しいものだ。

この媽閣廟だが、とにかく天気がいい時には、日除けになる何かを持っていないと脳天から腐って死んでしまうくらいのところである。それだけ日陰になるようなところが一切無い。海の近くなのに、全然風が入ってこないのだから、かなり暑い。それを我慢すれば、ここがマカオのなかでもかなり中国的な文化を残している場所だとわかるだろう。

媽閣廟の入り口を入ってすぐのところに、カラフルな色使いをした船を掘った岩を見つけることができる。これはマカオの人たちの多くが福建省からやってきたこともあり、その故郷から持ってきた岩なのだそうだ。海の神様である媽閣廟を祀っている代表的なものなので、ありがたがって拝むことにしよう。でも、これに気付いて見つめている人はあまり居ない。

媽閣廟は階段状になっており、段々上に上っていくと、屋外に剥き出しになっている神様たちに会う事ができる。これが神様?と拍子抜けしそうなものが飾ってあって、それを発見しても決して笑わないように。海とともに歩んできたマカオの人にとっては神様なのだから。どちらかというと、廟の中で収まっている、可愛らしい人形みたいなのが神様だと思っても仕方ないのだが、こちらは所詮神様の代理。本物は、行き止まりのてっぺんに、赤い字で彫られたデカい岩の前にあるのがそうなのだ。

あと、気になるのは、とぐろのように巻いている線香がいろいろな木にぶら下がって飾られていることだろう。線香であることは変わらないのだが、これが何を意味しているか分かる人はあまりいないかもしれない。実は簡単なことで、昔は漁に出ることが生計を立てる手立ての1つだったマカオの人たちは、一度海に出て無事に帰って来れるのかどうか分からない。従って、自分が海に出て無事に帰ってくるまで、線香が連続して燃えるようにという意味で、こんな巨大でいつ消えるのか分からないような線香を使って祈願していたようである。同じようなものは香港にもあるし、そういえば、台湾でも見たことがあった気がした。今では海に出る人はほとんどいなくなったとはいっても、自分たちの家庭が反映できるようにと言う意味をこめて、常に線香が消えないように燃えている線香を寺に寄贈している家も多いようだ。線香しか飾っていないものもあれば、上に飾っているために、下に灰が落ちるのを防ぐために、たらいみたいなのを線香の下に敷いて掲げている場合もある。その場合には、たらいの底に自分の名前を赤字で書いているから、誰がいま祈願しているのかというのが良く分かる。