2010/04/18

ベトナム怪人旅行

ゲッツ板谷っていうおっさんは、本当に頭がおかしいと思う。裏表紙に「不良デブ」と書かれているが、これがまさしくぴったりなのだという印象は読んでみてよくわかった。終始爆笑しまくりの内容であるし、話や書き方、それに比ゆが全部下品なのである。下品であるがゆえに内容がないかというとそうではなく、ちゃんとした描写を使って表現しているのがおもしろい。特に過去の歴史の部分については、暴走族の抗争に例えているところは、わかる人は理解が早いが、わからないひとにとっては、チンプンカンプンな比ゆだといえるし、体験している内容というのが、ほとんど呆れるほどダメな日本人をそのまま演じているからなのである。

そんなゲッツ板谷が旅行記を記載している書物の最初に読んでしまったのが「ベトナム怪人旅行」というものだった。二度目のベトナム旅行だというふりだったのだが、なぜか旅行に対して「勝負」を毎回挑んでいる。勝負というのは、現地の人間に対して「参った」とか「絶対服従しない」ということを意味する。

自称日本人と称している詐欺師の中国系ベトナム人に出会うわ、天然記念物にもなっていて狩猟してはいけないことになっているはずなのだが、なぜかその手乗り鹿をメニュとして提供している店に行って実際に食べるわ、または本当に手乗り鹿なのかを確認するために、何度も店に通って生きている状態で鹿を見るまでがんばり続けたあげく、本当にその存在を確認してしまって、食べたことに罪悪感を感じてしまうとか、ゲイばかりが集まるクラブにわざわざ出かけるのは良いが、そこで「チンチン食べたいです」と日本語でナンパされて慌てて店から逃げるとか、キャバクラまがいのカラオケ屋に行くのは良いが、店の女性が全く飲まないで傍からバケツに捨てているのを発見してしまい、「ぶっ殺すぞー、てめー!!」とマジぎれして店の中で暴れるわ、蝦が好きなだけ獲れるという釣堀がある探しもとめて行って見るのだが、ほとんど無意味な農家のところに存在したことが発覚し、時間と金の無駄だと騒いで見たり、いったいこのひとたちはベトナムで何を探しに着ているのかと本当に疑問に思うことばかりである。

ただ、内容としては、怪しげなベトナムのいろいろな状況を紹介しているだけではなく、ホーチミンからハノイまで幅広い範囲でベトナムの紹介をしているのがおもしろい。こういう体験記まがいの旅行案内は楽しく感じることができる。

もっといいのは、ところどころ写真を挿入しているのだが、これが文章に拍車を掛けて、文字では感じられない実際の状況をそのまま理解できるような内容になっているのもおもしろい。たぶん写真の撮り方がうまいのだとおもうのだが、何気ない様子をとっているというのではなく、絶対演出がいるだろうというような光景を撮っているところなのだ。た

どうしても避けられない事実として、ベトナム戦争のことはベトナム紹介としては存在する。ベトナム戦争の傷跡というのは現在でも残っているもので、先の蝦の釣堀についても、もともとば爆弾が落ちたあとにできた穴に勝手に蝦が住み着いただけのことで、良きに悪しきにベトナムは魅力的なところだとも言えるのだが、ベトナム戦争を知らないでベトナム旅行に来ると、各方面で何でだろうというようなことに出くわし、理解するのに時間が掛かるだろうとおもう。著者もベトナム戦争のことをまったく知らないでベトナムに来て、一緒に同行していたカモちゃん(鴨志田穣)や現地コーディネータの鈴木君に馬鹿にされ、現地でベトナム戦争のことを教えられて、それで事の真相がようやくわかるというような様子は、無知のままで旅行に行ってしまう日本人の典型っぽくて笑える。

スペインについてとても詳しい内容を記載している中丸明の場合は、名古屋弁ばかりが出てきて、読むに耐えられないときがあるのだが、この人の内容は、下品この上ない。下ネタばかりのオンパレードであり、常に下半身の征服ばかりを狙っているどうしようもない男だ。タバコと酒と女のことしか考えてないアジア旅行者の典型と言って良いだろう。ただ、残念ながらこの男には、自分の趣向を満足するための幸運度は結構低いように思われる。その様子は書物の中で、かなり多く見受けられるのだが、その不憫さがかなり可愛そうに思う。もっと用意周到に準備すればいいのだろうと思うのだが、アジア諸国で綿密な計画をして旅行をしている人なんて、よっぽど意気地のない人ではない限り行わないだろう。出たとこ勝負!これが筋だとは思うが、この男はその筋がいつも裏目に出てくる。失敗ばかりだから、なんだか親近感が沸くのだ。

他にもゲッツ板谷が書いた書物はあるようなので、今度はそれを読んでみたいと思う。

ベトナム怪人紀行
ゲッツ板谷 (著), 西原 理恵子 (イラスト), 鴨志田 穣
文庫: 351ページ
出版社: 角川文庫
出版日: 2002/12/25

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