世界中のいろいろな場所を旅行した兼高かおるが「私の好きな世界の街」という本を出しているのを、ブックオフで発見したときに、一体どこの町を「好き」と思っていたのだろうというのがとても気になってしまった。色々な場所を知っているからこそ、誰もが気にしないような場所を好みの場所として選んでいるものと勝手に期待したのは言うまでも無い。しかし、意外にも選択された街というのが、普通じゃんというところばかりだったので、結構それはそれで衝撃的だった。本の中で書かれている都市というのは次のとおり。
・サンフランシスコ(アメリカ)
・ヴェネチア(イタリア)
・パース(オーストラリア)
・パリ(フランス)
・マラケシュ(モロッコ)
・サルバドル(ブラジル)
・ロンドン(イギリス)
・カシュガル(中国・ウイグル)
・ケープタウン(南アフリカ)
・バーゼル(スイス)
・ストックホルム(スウェーデン)
・マニラ(フィリピン)
・ニューヨーク(アメリカ)
・ミュンヘン(ドイツ)
・サマルカンド(ウズベキスタン)
・アムステルダム(オランダ)
・ナポリ(イタリア)
・ニューオーリンズ(アメリカ)
・グアム
・デリー(インド)
この中で「なんでこの都市が好きなわけ!?」とおもうところもある。マニラやグアムなんかそうだろうと思う。逆に、あぁやっぱり兼高かおるっぽいなぁーとおもう選択された年端、カシュガルやサマルカンドだと思う。中央アジア地域は普通の人でもなかなか行かない場所だが、文化的には非常に高いものが残っているところであるのだ。一般日本人のウケを狙ったものだろうと思うのが、ニューヨークとかロンドンやパリだと思うのだが、これはこれで別に町を紹介するほどでもないと思うのに、本の中に入れている意味がやっぱりわからない。
しかし、兼高かおるの「好き」「嫌い」の視点というのが、この本を通してなんとなく分かった気がする。基本的には人が好きなのだと思う。それとその都市に自分を置いたときに、雰囲気が良いとおもっているところが好きなのだろう。見るところ、することが無いような場所は、訪れる意味が無いという意味では「嫌い」なのだと思う。それがわかりやすい。
本の中では参考になった場所も結構あった。モロッコの記事のところでは、有名なカサブランカのほうを選ぶのが通常だが、「あんなところは行く価値が無い」とばっさり切っているところがすごい。サマルカンドは情景が見えるような書きっぷりをしているように、一見見えるが、他の本でここの場所のことを知っている下地を自分は持っていたので、改めて、いつかは行ってみたいと思うような気にさせてくれたと思う。
「好き」と書いている都市は、何度も訪れているようなので、常宿があるらしい。頻繁に同じ都市を訪れるところがあるのはいいのだが、世界のあちこちにその都市があるというのはすごいと思う。個人の金ではないとはいえ、そんなに頻繁に海外に行けるのはとても羨ましい。旅行ジャーナリストというのはどれだけ儲かるのか分からないのだが、儲からなくても、海外に行く際に自腹を切らなくてもいいというだけで楽しいではないか。
テレビ放映されていたのが、なんと1959年から31年間も放映されていたという長寿番組の「兼高かおる世界の旅」ほど内容充実した旅番組は今後も出てくるかというと、なかなか難しいだろう。時代が昔とは異なり、気軽に海外に行けるようになったことが一番の違いだと思うし、情報もネットで仕入れることが簡単に出来るようになったために、あのようなたび番組の必要性が無くなったというのが一番の理由だと思う。
兼高かおる
新潮文庫
平成12年3月1日初版
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