書物の中では現存する王室のうち、比較的有名なところをいくつか紹介している。タイやベネルクス三国の王室は、テレビでもたまに出てくるので知っている人は多いと思うが、ブータンやサウジアラビアの王室のことについては、なかなかメディアでは知ることが出来ない。ということで、かなり謎のように思われるところなのだが、知ってみれば大したことが無いというのが分かる。それを美味く説明しているこの本はとても有効だと思う。
また、現在は消滅してしまったが、かつては世界を轟かせていたロシアのロマノフ王朝、オーストリアのハプスブルク家や中国や沖縄の王朝も、その翻弄された歴史を簡単ではあるが集大成として要約しているところは参考になるものだろう。しかし、過去の王朝はいろいろな書物に書かれるが、現在の王朝については、現存しているのでいろいろ記述に規制がかかったりするのが定番だから、現存している王朝のことを書いているこの本は、有る意味貴重だともいえる。
日本の天皇家も同じだが、王室は常に一般庶民または海外の人たちからも、注目の的になっているため、すべての行動が色々な方面に影響を与えていることも多い。当然スキャンダルの対象としても、どの有名人よりも注目を浴びてしまう存在である。それを苦と思わないか、エンターテイメントとして演じられるかによって、王室の世間への門戸解放になるのだろう思う。日本では、天皇家の人が、その辺のデニーズでご飯を食べ、スーパーで買物をするということはまずありえない。北欧やベネルクス三国の王室では、普通に見られることもある。この違いはなんだろうという問いも、もしかしたらこの本は解決してくれるかもしれない。国民とその王室に対する距離感をどのように感じているのかどうかである。日本の場合は、昔ほどではないが、やはり天皇家=現人神という考えがあるので、近寄りがたい存在として、一種の威厳を持ち続けなければならないという意識があるのだろう。
時事通信社編
新潮OH!文庫
2001年12月10日発行
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