恵比寿にある山種美術館の存在はよく知っていたのだが、実際にはまだ行ったことが無くてどういう内容の展示物を保有しているのかどうかは不明だった。国立博物館のような規模を持っているわけではないので、結局は何かに特化したような内容を展示していることになる。今回は「歴史を描く」というテーマで展示されていた日本画を見に行ってみた。
明治から昭和にかけて活躍した日本画の大家たちが描いた、歴史的な主題や宗教的な主題を西洋から取り寄せて、それを日本画にまで押し上げて作り上げることになった内容を一挙に見ることが出来た。平家物語の一場面や伊勢物語の場面を描いたものなど、なかなか見ごたえがあるものがたくさんあり、浮世絵と違い、細い筆一本一本まで細かく描写されており、さらに色使いがとても繊細に描かれているのが結構観ているだけで見事だ。細かい説明は全く無いのだが、歴史的な一コマを描いているので、その描かれている背景のことが分からないと、この主題は一体なんなのか?という初歩的な疑問にぶち当たり、絵の構成や技術や題材の選択と言う良さについて全く分からないことになる。
その中でも目を引いたのは、上村松園が描いた作品群だろう。
あまり絵画についての知識が無いため、上村松園という名前さえも正直、全然知らなかった。しかし、名前は知らなくても、その絵画に描かれている作品の素晴らしさはため息をつくものばかりだった。もちろん筆使いのこともそうなのだが、フレームの構成がとてもすばらしい。真ん中に主題となる人間を持ってくるだけという単純なことだけではなく、あえて端っこにだけ描いて、フレーム全体を写真のように使うという描き方が他の絵画に比べて違うなーというようなことが分かった。主題「蛍」というものが個人的には大好きだ。画集で紹介されると、人間が描かれている所だけがフォーカスが当てられるのだが、そんなのは彼は書きたいとはおもっていなかったはず。画集として発行する際の編集者の美術に対する理解のなさをかなり痛感した。あの作品は構成が一番重要なものなんだと思う。それを潰してしまうなんていうのは、全く作品として、作家の意図を全く無視してしまっているだけに過ぎない。これで分かったのは、美術館で売られているものがすべて正しい作品として本として掲載されているわけではないということである。
山種美術館において、初めて上村松園という日本画家に出会った気がした。是非、他の美術館でこの画家の作品を展示する機会があった場合には、探してでも見に行ってみたいと思う。それと思ったのは、郵便切手の世界においてもこのひとの作品を使ったものがあるに違いないと思った。切手はあの小さいスペースなのにも関わらず、結構題材としていろいろなものが描かれているものである。日本画なんて一番利用するのに便利なものだろうと思うからだ。
上村松園の画集が売られているのであれば買ってみたい。あっ・・・そういえば、山種美術館で売られていた気がする。でも買うのを忘れた。
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