お話は、ニューヨーク郊外に建つ市長代理の豪邸へ結婚記念日のパーティーに呼ばれた4組のセレブカップルが起こす、ドタバタコメディで、最初のウソがだんだん尾ひれをつけてしまい、最初にウソを作ったカップルのあとにこの家にやってくるカップルがさらに別のウソを作って・・というような、典型的なお笑いもの。話の内容を記載してしまうと、お話をこれから観ようと思っていた人に種明かしになってしまうので、これ以上は述べないことにしよう。
途中休憩20分間を挟んだとしても全部で2時間40分のお芝居は、そのおかしさで一瞬たりとも気を抜けないものだったが、いくつかこの芝居で気づいたことがあったので、話に関係ないところの部分だけ述べたいと思う。
以下、黒柳徹子を「徹子ちゃん」と呼ぶことにするが、このお芝居では、2階建ての家の内部を想定した舞台つくりになっているので、話の流れによってはたまに2階に行かねばならないことがある。他の共演者は、何度も1階と2階の行き来をする芝居をしており、そのたびに舞台につくられた階段を上り下りすることをしなければならないから、結構足腰が大変だなーとみていて思った。しかし、徹子ちゃんの場合は、もう御歳80歳になるくらいの年齢であるため、さすがに階段の上り下りをさせるのは演出家としても忍びがたいとおもったのか、この舞台上の家には、家の持ち主の親のために、エレベータを作ったということにして、徹子ちゃんのみが1階と2階の行き来するための道具に使っていたという点だろう。演出の台本によくいれたなーと感心したのはこの点。全然不自然にエレベータを使っていないのだ。だけど、やっぱり、階段をドタバタ下りることで、あたふたしている様子を演出しようとする本来の動きを表現するには、エレベータは「間」を空けてしまうものだった。エレベータが動いている間は、芝居は止まってしまうのである。徹子ちゃんが移動する間は、芝居は先に勧めないのだ。ましてやエレベータが巧く動かなかった場合には、まさしく「どうした徹子?!」と観客もそうだが、舞台に立っている俳優たちも思ってしまうことだろう。
以前からもそうなのだが、周りの俳優・女優が個性派ばかりを集めていることにもよるが、徹子ちゃんの芝居をよくサポートしていると感じる。それは演技もそうなのだが、徹子ちゃんもさすがに歳には勝てないのか、言葉の切れが悪くなっているのは否めないところで仕方ないが、それを別の俳優や女優が言葉をアドリブで補っているところだろう。あれは観ていてすぐにわかるのだが、さすがに、事前稽古も含めて数ヶ月一緒に行っているということを考えれば、互いに全部のセリフを覚えてしまうことなのだろうから、そこで相手のセリフを補うことも可能なんだと思う。不自然に行わないところがプロだ。
トークショーのほうは、当初は20分間の予定だったが、結局90分も独りでしゃべくりまくったというオチ。これは毎度のことながら、徹子ちゃんが勝手に約束を破って「まだいいでしょ?」とどこかのスタッフに言いながらしゃべくりまくるというものだ。これがもう芸能界の裏話みたいなものを伝える定例会みたいになっているのでおもしろい。が、どうしても前年と同じ話をかぶしてしまうというところもご愛嬌。寅さん映画のように、毎回話しに出てくるのは分かっていることを前提に聞くのも楽しいではないか。それにしても、ザ・ベストテンのときの徹子ちゃんのときと同じように、喋る勢いは全く衰えなし。全部入れ歯にしてしまったので、シャカシャカした喋り方になってしまっている点だけは仕方ないと思うが、どこにあんな元気なパワーがあの歳であるんだろう?と本当に不思議に思うし、すばらしい女優だと思った。
さて、ル・テアトル銀座での徹子ちゃんの芝居は、今回で実は終了。ル・テアトル銀座は旧・銀座セゾン劇場と名乗っていたときに一度倒産したが、サポートしてくれるところが出てきて再建して芝居ができるところとして復活したという歴史があるが、これで2回目の営業停止だ。また新たなサポート会社・組織が出てくれば、劇場として復活するかもしれない。しかし、徹子ちゃんの芝居は今後は渋谷のBUNKAMURAで行うことになるようだから、徹子ちゃんファンはこれまでと同様に芝居にいって、徹子ちゃんの健在ぶりを見ることができるのは嬉しい。
黒柳徹子主演海外コメディ第26弾「ルーマーズ 口から耳へ、耳から口へ」
公演日程:2012年10月18日(木)~11月4日(日)
作 :ニール・サイモン作
演出:高橋昌也
出演:黒柳徹子
羽場裕一 かとうかず子 大森博史
茅島成美 鶴田 忍 平栗あつみ
石田登星 森レイ子 石田圭祐
会場:ル テアトル銀座 by PARCO
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