グリコ・森永事件というのは、事件的にも報道的にも、なかなか興味がある事件だったと記憶がある。事件が起こったタイムリーなことはあまりよく覚えていない(というか、あまり知らない)のだが、1億総国民が、自分が探偵にでもなったように新聞やテレビなどで報道されるニュースを元に犯人の割り出しを行っていたという気がする。通称「グリコ犯」とニュースの中では言われていたと思うが、その犯人達からのワープロで打たれた文章と妙に馬鹿にしたような関西弁でのコメントや要求の内容は、幼心に「変な人たちだな」としか思っていなかった。
もちろん当の被害企業の人たちから見たら、自社製品があっという間に全ての店頭から消えてしまって、その対策としてパッケージに、一度開けたら再現が出来なくなるような封をしたり、報道機関を使って安全性をアピールしたりと、それはもう努力が大変だったというのは記憶にある。しかし、いろいろな企業がターゲットになっていたことは覚えているのだが、なぜあの事件が「グリコ・森永事件」だったのかが、いまいち自分の中では分からないなーと長年ずっと思っていたのだ。確かに一番最初の事件としてグリコがターゲットになったので、事件の名前に冠としてつけられているのは分かる。しかし、森永はロッテなどのほかの菓子メーカーのあとにターゲットになったのにもかかわらず、事件名につけられているのである。事件名になっていなければ、事件当日のときんは確かにターゲットになってた企業も時間が経てば、ターゲットにされていたことさえも人間の記憶から消えるはずなのだが、こう大々的に事件名になってしまうと、グリコと森永の2社はいつまで経っても、この事件からの呪縛からは解放されないだろうと思う。
今回紹介する本は、そのモヤモヤとした事件名の真相や、もう時効になってしまったので犯人を特定しても意味が無いが、犯人探しをする際に、警察庁・各県警の当時の動きや、上層部と現場捜査官との軋轢、そして犯人達のメンバ構成やメンバの思想背景などについて、かなり突っ込んだ調査とまとめを行っている。
しかし、だいたいこういう大きな事件の際には、裏側で怪しい大きなバックがいるわけで、それに踏みこめないために事件の解明ができないというのは大いにあることだ。グリコ・森永事件も同じようで、調べれば調べるほど、政治家や海外の企業やヤクザの世界とすべてがリンクするために、うかつに手がだせなかったり、取材をしている際に逆にストークされたりするという恐ろしさがあるようだ。そのやりとりが、まるでその辺の三文小説なんかに比べると、はらはらドキドキさせられるものがあるし、臨場感をとても感じることが出来る文章と構成になっている。
事件に関わった人たちは、一方では「犯人を捕まえられなくて屈辱的」と思っている警察側と、「もう過去のことなので、そんなことは聞かないでくれ」と犯人に近い人間や事件関係上層部のひとたちのコメントが生々しく載っているのも良い。それぞれの思いがあの事件にはあるのだろう。新聞報道やニュースでは、その一部しか見ることができないが、このようにまとめてレポートされるように書かれると、事件とその間の企業の関係がとてもよくわかるので、不思議だ。表向き「何も関係ない」と装っても、ちょっと調べれば犯人との裏取引があったり、企業側が犯人を全く知らないわけでもないことがすぐに分かる。自企業を守るために建前を述べて事件との無関係さ・潔白さとアピールすればするほど、その信憑性が乏しくなってくるのも当然だろう。それがグリコの一番の印象だ。いまだにグリコ本社としては、あの事件に対して非協力的の態度を取っている。協力的な態度がでればでるほど、企業の本質に直結する事項が世の中に露呈されるのを恐れているのだろう。つまり、企業が大きくなるためにはそれなりに汚い仕事やヤクザがらみのようなことと関係が深く付き合ってきたということが証明されたくないのが企業なのである。
でも、誰もがどこか汚いことをして成り上がってきたくらいは分かっているのだから、いまさら隠しても意味が無いものだと思うのは個人的な意見だろうか?それでも、関係各者に多くの取材を行い、意見を引き出し、考えを聞いて書面化した作者は偉いと思う。長い取材の時間と膨大な資料を整理した上での大作なのだろうと想像ができる。
昔懐かしい快事件という点では「三億円事件」と並び、ミステリーの領域から出て来れない本当の事件であることは間違いない。是非、そのへんのつまらない小説やミステリーに飽きたのであれば、この手の本を読んではらはらしてみたいとおもいませんかね?
闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相
一橋 文哉(著)
新潮文庫
ISBN-13: 978-4101426211
もちろん当の被害企業の人たちから見たら、自社製品があっという間に全ての店頭から消えてしまって、その対策としてパッケージに、一度開けたら再現が出来なくなるような封をしたり、報道機関を使って安全性をアピールしたりと、それはもう努力が大変だったというのは記憶にある。しかし、いろいろな企業がターゲットになっていたことは覚えているのだが、なぜあの事件が「グリコ・森永事件」だったのかが、いまいち自分の中では分からないなーと長年ずっと思っていたのだ。確かに一番最初の事件としてグリコがターゲットになったので、事件の名前に冠としてつけられているのは分かる。しかし、森永はロッテなどのほかの菓子メーカーのあとにターゲットになったのにもかかわらず、事件名につけられているのである。事件名になっていなければ、事件当日のときんは確かにターゲットになってた企業も時間が経てば、ターゲットにされていたことさえも人間の記憶から消えるはずなのだが、こう大々的に事件名になってしまうと、グリコと森永の2社はいつまで経っても、この事件からの呪縛からは解放されないだろうと思う。
今回紹介する本は、そのモヤモヤとした事件名の真相や、もう時効になってしまったので犯人を特定しても意味が無いが、犯人探しをする際に、警察庁・各県警の当時の動きや、上層部と現場捜査官との軋轢、そして犯人達のメンバ構成やメンバの思想背景などについて、かなり突っ込んだ調査とまとめを行っている。
しかし、だいたいこういう大きな事件の際には、裏側で怪しい大きなバックがいるわけで、それに踏みこめないために事件の解明ができないというのは大いにあることだ。グリコ・森永事件も同じようで、調べれば調べるほど、政治家や海外の企業やヤクザの世界とすべてがリンクするために、うかつに手がだせなかったり、取材をしている際に逆にストークされたりするという恐ろしさがあるようだ。そのやりとりが、まるでその辺の三文小説なんかに比べると、はらはらドキドキさせられるものがあるし、臨場感をとても感じることが出来る文章と構成になっている。
事件に関わった人たちは、一方では「犯人を捕まえられなくて屈辱的」と思っている警察側と、「もう過去のことなので、そんなことは聞かないでくれ」と犯人に近い人間や事件関係上層部のひとたちのコメントが生々しく載っているのも良い。それぞれの思いがあの事件にはあるのだろう。新聞報道やニュースでは、その一部しか見ることができないが、このようにまとめてレポートされるように書かれると、事件とその間の企業の関係がとてもよくわかるので、不思議だ。表向き「何も関係ない」と装っても、ちょっと調べれば犯人との裏取引があったり、企業側が犯人を全く知らないわけでもないことがすぐに分かる。自企業を守るために建前を述べて事件との無関係さ・潔白さとアピールすればするほど、その信憑性が乏しくなってくるのも当然だろう。それがグリコの一番の印象だ。いまだにグリコ本社としては、あの事件に対して非協力的の態度を取っている。協力的な態度がでればでるほど、企業の本質に直結する事項が世の中に露呈されるのを恐れているのだろう。つまり、企業が大きくなるためにはそれなりに汚い仕事やヤクザがらみのようなことと関係が深く付き合ってきたということが証明されたくないのが企業なのである。
でも、誰もがどこか汚いことをして成り上がってきたくらいは分かっているのだから、いまさら隠しても意味が無いものだと思うのは個人的な意見だろうか?それでも、関係各者に多くの取材を行い、意見を引き出し、考えを聞いて書面化した作者は偉いと思う。長い取材の時間と膨大な資料を整理した上での大作なのだろうと想像ができる。
昔懐かしい快事件という点では「三億円事件」と並び、ミステリーの領域から出て来れない本当の事件であることは間違いない。是非、そのへんのつまらない小説やミステリーに飽きたのであれば、この手の本を読んではらはらしてみたいとおもいませんかね?
闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相
一橋 文哉(著)
新潮文庫
ISBN-13: 978-4101426211
0 件のコメント:
コメントを投稿