2010/11/13

天皇家の常識


日本の天皇は現在では日本の象徴ではあるし、世界一長く系統が続いている唯一の皇族であるし、たまに天皇陛下が行う行事参加や古来から続く伝統的な天皇家にのみ許される出来事は、これからも継続して行っていくべき素晴らしい事項だと思う。そして、その行事はテレビや新聞で偏重なりなんらかの主観を含めて報道されているのをつぶさに見ているのだが、本当のところ、なんでそんな出来事を行っているのかという解説は、ほとんどのテレビや雑誌では行われない。基礎知識というか予備知識というか、天皇家とそのとりまきの皇族を含めたこれまでの歴史と文化について、一般庶民とはあまりにもかけ離れているし、むしろメディアのほうも天皇制度は全く要らないというようなことを言っているメディアもあるくらいなので、本当の正しい情報が良くわからないところと、イベント自体が身近に感じられないようになってしまっているからこそ、天皇家に対して排除してもいいんじゃないのかというような意見が出てくるんだとおもう。もっというと、天皇家のことを話題にすること自体がタブー化してしまっているような風潮も良くないと思う。しかしながら、これまで1945年時点までの日本の歴史は、政権が誰の手に落ちているのかに関係なく、そして、時代に関係なく、天皇家を中心とした日本の政治が行われていたことは確かである。しかし、現代人である自分達はその天皇について一体何のか?ということ自体をほとんど学習しない。日教組が天皇制を反対しているから、天皇についての話題を当たり障りの無い程度しか教育させないからという原因もあるのかもしれない。

常に歴史の中心にいたのは天皇であるため、天皇についてさまざまなことを知らないと、日本の歴史は全く理解できないんだと思う。天皇が権威を振るっていたのは鎌倉以前までだと思っている人は大半だろうが、実は間違いだし、武士の世界で幕府がいくつか変わったとしても、常に天皇から称号を貰って統治をしていただけであるから、目立つ存在だったか目立たなくなった存在になったのかの違いだけであり、やっぱり天皇有りきの社会構造であったことは確かだ。

そんな天皇について、一般常識から各時代に登場する各天皇について、あまり実は歴史では習わない。何らかのイベントが発生して、そのときに何天皇だったかということくらいは教わるが、どのように天皇が関わってきたのかなんていうことなんか一切教えない。そういう現代の日本人にとって天皇家に関するなぜなに的な疑問を解消してくれるのが今回紹介する本である「天皇家の常識」である。

題名から観ると、天皇にとってそれが常識だと思っている、一般庶民の感覚とは異なった考えをお持ちである思想というのは、こういう中身である・・・という内容では全然違う。あくまでも天皇家とその皇族の制度について、これってなんでそうなっているんだろう?というような疑問について答えてくれる中身になっている。

古代や中世のときの天皇については歴史の勉強として教えてくれたりするところもあるので、あぁこれは知っている事象だというようなことも出てくるかもしれない。むしろ、分からないのは現代の天皇にまつわる話だろうと思う。

個人的に面白いなーと思った内容は、スポーツの大会に使われている「天皇杯」というのがなぜ付いているのか?や宮中晩餐会というのは、なぜ和食ではなくフランス料理になっているのか、実は身近な話題として天皇・皇族に関するイベントは何気にあるのに、あんまり良くわかっていないなーということの説明だろう。その中でも一番面白かったのは「天皇は競馬の馬券を買ったことがあるのか?」という話題である。実際には中を呼んでいただきたいのだが、1つ1つのエピソードに関して、各天皇がどのような人間性を持っていたのか、そして天皇である地位に関して天皇自体がどのように思っているのかというのを、歴史的な事象やイベントを通して知ることができるということだろう。

もっと日本は全体的に天皇について知るべき事項があるのだと思う。個人的にはヨーロッパの王族のように王族がエコノミークラスの飛行機に一緒に乗って旅行しろとか、天皇とその取り巻きに無駄遣いなことをさせるなというようなことを一切言いたくない。むしろ、やっぱり天皇は権威あるべきものであるということを確固してほしいとおもう。元平民民衆が身分制度は反対だとか、平等が当たり前だーとのたまっているのがうるさいが、本当にそんな輩はうるさい。単なる僻みにしか聞こえない。自分の出自が低いからというやっかみを表現しているだけとしか思えない。そんなうるさい奴らの意見を完全に無視して、天皇は天皇としていつまでも象徴であって欲しいと思う。

自分が天皇の立場だったら絶対イヤだと思う。国民に対して24時間365日監視されており、身動きに自由がなく、好きなところにも勝手にいけないという束縛された閉塞空間にいなければいけないなんていうのは、窮屈でたまらないのである。そんな中でも天皇はご不満を漏らさず君臨されている。それはこれまでの天皇制度を守っていきたいからという表れなのだろう。従って、過去からの天皇にまつわることをこの本を使って知識として持ち合わせることで、これからの天皇がされるイベントについて考えてみればいいと思う。どれだけ大変なことか。そして、どれだけ毎日何をしなければならないのか決まっているのか。単に毎日ぶらぶらしている人ではないのである。

小沢が「中国から要人を迎えるから、急遽天皇との謁見を調整した」というが、あれは本当にダメである。ニュースを見たときには最初、別にいいじゃん、天皇なんか毎日暇なんだから、たまには働けと思った。が、本を読んでいっぺんに考えが間違っていたことが分かった。毎日のイベントの多さと天皇・皇后の年齢を考えると、むちゃな調整だったのである。天皇軽視をしている小沢とその取り巻き、およびメディアの思慮の浅さのために、天皇だけが悪者にされてしまった気がある。悪いのは小沢である。中国と仲をよくさせるために、むりやり天皇に合わせたことが原因なのである。

ちなみに天皇が押すハンコである国璽は、国名が「日本国」になったとしてもいまだに「大日本国璽」という印が彫られている。それから面白いなーと思ったのは、よく正月の天覧、皇居に旗を持ったひとたちが集まって、万歳を三唱しているのをテレビでみるのだが、あれは、明治22年2月に大日本帝国憲法が発布される際に、文武百官が参殿して大典が催される一方、観兵式が尾壊れ、明治天皇がその式に向かわれる沿道で、帝国大学の職員・学生が「万歳」を三唱したのが最初なのだそうだ。おもしろい。

天皇家の常識
著者:松崎 敏弥
出版社:新人物往来社
出版日:2009年6月5日
文庫:319ページ

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