入館すると、いちおう「順路」というものがあるので、それに従って進むと良いのだが、最初にこの起雲閣の歴史をパネルで説明してくれるところからはじまる。館内に常駐している係員のひとがこの建物の歴史と特長について説明をしてくれるのだが、別に聞きたくなければさっさと次のところに出て行くのも良いだろうが、せっかくだから説明だけは聞いてあげて欲しいと思う。おばさんがウダウダ言っているなーと思うだけなのであれば、この説明をうけている部屋全体を眺めているだけでもかなり勉強になる。なぜなら、その部屋は壁や天井に群青色で埋め尽くされており、これは加賀藩の前田家が好んで使っていた色であり、所有者の1人である、ここを旅館として始めた桜井兵五郎の出身が金沢出身であったことに彩かって、建物の一室を替えたことによるものだ。最初の所有者、根津嘉一郎が作ったわけじゃない。しかし、この色で埋め尽くされた部屋というのは、紫とは違うし、藍色とも違う色なので、とても落ち着いた感じがするし、高貴な感じもする。こういう部屋にいると落ち着くかどうかはわからない。
次に、洋館「玉姫」は、これぞ洋館とも言うべき、どこを採っても溜息がでるばかりの内装であり、一つ一つ職人が丁寧に仕事をしている証拠だとおもう。格子型で埋め尽くされている天井もすばらしいのだが、格子の細かい細工についてもジッと凝視すると、その丁寧さに吃驚することだろう。また、暖炉がある風景がこの部屋にとてもマッチしているではないか。床のモザイク模様についても、これは箱根細工を思い起こさせるようなデザインであるところも面白い。ちなみに、この部屋は、宮大工によって作られているために、釘は一本も使われていない。すべて臍と噛むことで造られているために、柔軟性に富み、強固なつくりになっているのである。
洋館「玉渓」のほうにいくと、今度は山間部にある高貴な人の別荘の内装というような感じが汲み取れるような雰囲気の部屋に出た。暖炉が石造りではあるが温かみのある形に仕上がっているところがそう感じさせるのだろう。それだけじゃなく、電燈の部分も丸井シャンデリアのようにもなっているのも面白いし、窓枠についても、細かい装飾がついているところがおもしろい。この部屋だけでどれだけ金を掛けていたんだろうというのが気になるところだ。
洋館「金剛」も似たような暖炉のある洋室になっているのだが、こちらのほうがどちらかというと落ち着きが無い。しかし、ここは根津嘉一郎翁が作らせたところでもある。
ローマ風浴室は大浴場になっているが、ここが以前は普通に使われていたところだと考えると本当にそうだったのか?と今だから気になってしまうものだが、当時はここの宿泊客だけとはいえ、一種の裸の付き合いが出来る場所だったことはいうまでも無い。ただ、芋洗い状態になるような混みようは無かったことだろう。ステンドグラスが見事であることと、タイル式の床および浴槽は、昔のお風呂ではよく見られたスタイルである。
和館「孔雀」のほうにいくと、伝統的な日本旅館のつくりがそのまま持ち込まれているものになるため、どちらかというと、個人的にはこのような和室つくりのほうが落ち着く。背伸びするようにして無理やり西洋化したような部屋は日本ではあまり泊まりたくない。この孔雀の部屋は赤を基調とした落ち着いた雰囲気のある部屋であるため、こういうところに数泊するのはリフレッシュするという意味では良いところだろう。ただし、金があれば・・・の話。
喫茶室もこの中には存在する。時間帯にとっては満員状態なのだろうが、閉館時間間際に行くと人がまばらになるので丁度良いかもしれない。当時はここはラウンジとして使われていたところだろうが、そのまま現代でもその雰囲気は感じられる。高い天井とゆったりとしたソファが良い。また、ここでは、熱海名物の「ラング・ド・シャ」も食べられるので是非頼んでみたいところである。
起雲閣(熱海市役所内のサイト)
URL : http://www.city.atami.shizuoka.jp/page.php?p_id=893
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