ポルトガルの料理ってどういうものだろう?という単純な興味から買ってみたのが、「ようこそポルトガル食堂へ」というA5版の書籍。小さい国土のポルトガル全土を廻って、家庭料理からその土地の有名料理まで幅広く紹介していることと、その紹介では、ほとんど写真付きだし、作り方まで掲載されているというものであるから、読んでいて、その光景をみるだけで涎が出てくる感じがする。
まず、本の表紙では、本の中にエピソードで登場するおばさんが料理を作っている途中、スープの味見をする写真が掲載されているのだが、これが本当にいまにも動きそうな様子で「うん、よくできた」と次のコメントが出てきそうな良いショット写真なのが、心をワクワクしてくれる。
各街を訪問して、そこの美味しいと評判のレストランに行ったり、地元の家に泊まって家庭料理を紹介したりしているのだが、ポルトガルを旅行する人にとっては、どれもこれも少し紹介されている店には時間の関係上辿り着けないのだろうと思う。なぜなら、旅行者にとっては、旅行の中身と時間の制約とはトレードオフなのだが、ここではほとんどポルトガルで生活している筆者が評判の場所に行ってみて、堪能できるだけ堪能してくるという形式で料理を紹介しているために、ふらっといくには行きにくいところばかりなのだ。実際にそのレストランやおうちに時間が制約されている旅行者が行くことはできなくても、似たような料理というのは当然ポルトガルには存在するわけで、メニュを見たときに「なんじゃ、こりゃ?」と戸惑うよりは、この本で記載されている内容を事前に予習をしていくのもいいんじゃないのだろうか?
紹介されている内容が、女性特有の目線で書かれているために、御飯大好き、作り方にはすごい興味があるというような読者にとっては、これほど詳細に書かれて、是非自分でも行ってみたいというような気持ちにさせるようなことは無いだろう。取材をしている視点というのがすごい狭い範囲で見ているために、これはこうなってというのが詳細にわかるところがたぶん楽しくなる要素なんだろう。男目線であれば、料理の手順を説明する場合には、一通り説明するのはいいとしても、切っている最中や仕込をしている最中の心情までは取材や記載は全くしないだろうと思うからだ。本の中で随所に出てくるので、それは文章を読みながら感じていただきたいと思う。
また、取材している筆者が女性だからということもあるのだろうが、ローカルの人でその店に来ている人、レストランのシェフ、あとは訪問先のホストが快くウェルカム体勢で接してくれているのは特権だなとおもう。男が取材をすると、相手が悪い人ではないのはわかっていたとしても少し警戒感を持って最初は接してこられるときもあるのだろうが、そこは女性の武器を使っているところも素晴らしい。ご本人はその意識は無いと思うのだが、やっぱりラテンの血が流れているポルトガルの人たちにとっては、男性なら女性に対して優しくなるのは当然であるという土壌があるようだ。
ポルトガルの歴史や文化については、この本では一切出てこない。そういうのは抜きにして、純粋に食べ物のことについて楽しめる本に仕上がっている。もちろん、この中には料理だけではなく、ワインのことについても詳細に述べられている。あまり日本ではメジャーにはなっていないのだが、ポルトガルも有名なワインの産地である。その中でもポルトは、その場所名がひとつのブランドになるくらいの一大ワイン算出地であるのだが、そこにもちゃんと取材をして、ワインの種類もわかりやすく記載している。がぶ飲み用と楽しむ用のワインをどの醸造者も誇らしげに語っているところが頼もしい。ワインを飲む際には、こういう作っている人たちの自信も堪能したいところだ。
挿絵のようにポルトガル各所で見つけたお土産用になる小物も紹介されているので、女性にはさらに楽しい本だろうと思う。が、まったくポルトガルとは何ぞや?というような根本的なポルトガルの知識は全く身に付かない。
ようこそポルトガル食堂へ (私のとっておき)
著者:馬田 草織
出版社: 産業編集センター
発売日: 2008/04/11
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