クーロン黒澤というと、タイ・カンボジア・ベトナムを中心として、セックス・ドラッグ・やばいもの全部を総括して、それを面白おかしく、日本でのほほーんと生活している日本人に対して、日本人が想像するアジアのごちゃごちゃした様子を解説したり、かなりのデフォルメをして紹介している書物をたくさん書いている人で、一気に脳みそを使わずに読める本ばかりだから、結構好きである。
「怪しいアジアの怪しいニュース」についても、いかにも日本人が好みそうな内容の読み物になっている。内容は、実際に各国の新聞記事になっているものから、日本では想像がつかないような変なニュースばかりを紹介して、その事件が起こった文化的・環境的・経済的な背景を解説しているというものだ。
舞台となっているのはタイ・ベトナムとカンボジア。クーロン黒澤の得意とする3カ国である。これにラオスが入っていれば完璧なのだが、ラオスはあまり情報として入っていない。実際に、これらの3つの国に行ったことがある人であれば、現在なら既に経済的に好景気になっているために、街並も一般的な日本人が想像するような、ボロ・貧困・汚いというような場所ではなくなっていることはよく知っていると思う。しかし、まだまだ多くの日本人は、アジアの各国は中国も含めて、どうしようなもない汚く、貧しく、危険がいっぱいで、まともな人間が居ないというような野蛮族の巣窟のように考えている人たちがたくさんいることは否めない。
そんなアジアを想像している典型的な日本人が読んでもおもしろいというか、期待通りのめちゃくちゃぶりだと納得できるのがこの本だろうと思う。
現地に行ったことがある人であれば、新聞やテレビでの普通のニュースは、日本みたいにぼかしはまったくないし、犯人についても容疑者である間は名前が伏せられていたりということは全くなく、捕まった瞬間からみんなの笑いものや怒りの対象物として世間に公表されるものである。もちろん、被害者についても、スプラッタームービーのように血がドバーっと出ていたり、土佐衛門として道端でくたばっていても、それをクリアな映像で堂々と放送しているのが東南アジアである。視聴者が「知りたい」と考えているからそれを実現しているだけというのが彼らの本音である。日本だと、結構それがあってないようなくらいのぼかしになっていたりすることがある。また、よく擦りガラスで、声を変えてインタビューというのがあるが、あんなものは東南アジアでは存在しない。誰もが顔出し、音声変更なしで登場するのだ。また、捕まったばかりで、後ろで手を縛られたままの犯人に対して、テレビインタビューをしたりしているのは頻繁に見られる。また、さらにいうと、凶悪犯がようやく捕まった場合、被害者の親族が捕まった犯人に、竹刀みたいなものや拳骨で普通にぶん殴っていたりするのをテレビ放送で堂々と放送しているのも良く観る。小さいころからこういう場面ばかり見せられていると、大人がやっていることはやってもいいんだと子供は思うんじゃないのだろうかとおもうが、これが文化の違いである。
そんな文化の違いの中で、現地では普通の事件として取り上げられているものも、日本人から観たら奇異だったり、それは倫理的におかしいだろうというのが結構ニュースとしてあり、それを紹介している本であるので、本当にそんなバカな事件があるのかと、読んでいるとだんだん信じられなくなってくる。たとえば、抗議のために、抗議対象の会社の中で、バケツいっぱいにいれた糞尿を、自分の頭の上からかぶって抗議したとか、そんなの普通の日本では考えられないだろう。でも、そういうのを紹介している。
全体構成として、4部構成になっており、最初は「んな、あほな」というようなニュースばかりを扱っている。そのあとは、「残酷な話」のオンパレード。そのあとが「後味が悪い」ニュースばかりを取り扱ったもので、最後に、世界のペテン師大集合といったような内容ばかりだ。
最初の「んなあほな」というものは別にして、「残酷なニュース」というのは、人身売買と子供による殺人事件と麻薬だ。麻薬や殺人は日本でも存在するからそんなにびっくりはしないが、やはり毎回似たような事件を見て、ちょっと嫌だなーとおもうのが、人身売買だろう。金のためなら身内も売るというのは、どこの国でも存在していたものであるし、日本でも戦前は特にそのような習慣があったことは有名で、それが発展したのがからゆきさんだ。ベトナムやラオスあたりでは、まだまだその人身売買+売春というのがまかり通っているようで、一度その罠に嵌まってしまったら二度とまともな生活ができないという。
この本が書かれたのは2002年ごろであり、出版されたのは2005年のことだから、いまではだいぶ経済的に向上しているこれらの地域のことは、本で記載されたような残虐で野蛮な行為がまだ残っているとは思いたくない。(実際にはあるらしい)もともとその民族が持っていた気質なのか、それとも経済が向上すれば必然的になくなる行為なのかはよくわからない。しかし、世の中こういう事件が普通に存在するのだということを、のほほんとふんぞり返っている日本人は知っておいたほうが、海外に旅行へ出かけたときに気をつけるポイントとして役に立つと思う。
「怪しいアジアの怪しいニュース」
著者:クーロン黒沢 (著), 梅本 善郎 (著), リン外川 (著)
出版社: ベストセラーズ
文庫: 285ページ
発売日: 2005/02/05
0 件のコメント:
コメントを投稿