日本から見るとスペインは1つの大きな塊のように見えるのだが、実際には各都市・各地方によってはかなり文化的な違いがあるおもしろい場所であるらしい。もともとイベリア半島自体が4つの異なる国家から形成されていたから、それがいまだに深くスペイン全体に残っているというためなのだろうと思う。日本も外国から見れば、1つの東洋の奇妙な文化を持つ国にしか見えないと思うが、実際に日本に住んでいる日本人から見ると、各県でさえ、それぞれ方言があり、互いに通じない文化があったりするのがわかる。それと同じようなことがスペインにはどうやらあるようだ。
紅山雪夫は長いこと添乗員としてヨーロッパの各都市・各国を廻っており、スペインのみならずイタリア・ドイツ・フランスと、日本人観光客が特に訪れる国の歴史と文化については造詣が深い人である。「魅惑のスペイン」は、スペイン全土を歴史的な観点からの説明と、各地方ごとに分けて、それぞれの見所とその背景をそつなく紹介している。
他の添乗員が自分が添乗する際には紅山雪夫の著書は必携書であるといわめているほど、この本はよく書かれている。全くスペインに関して知識も減った暮れもないような人が居たら、まずはこの本を読むべきだろうと思う。そうすれば、スペイン全体のことが知りたくなるだろうからだ。
各都市を周る際には、ガイドのお供にこの本をもって行くのはとてもいいことだろうと思う。そして、都市の紹介をする際には、はずしてはならない箇所は必ずといっていいほど記載しているし、ガイドブックには記載されないような奥の深い内容が記載されているからだ。他の本と同様、この本もどこに泊まって、どこでご飯を食べるのがお勧めであるなんていうのは一言も書いていない。だから、買い物と食べ物しか興味がないような人には、まるっきり役に立たない書物だろう。まぁ、そんな買い物と食べ物しか興味がない人は、世界のどこに行っても「行ってきた」ことが目的であり、中身はどうでもいいことであるため、それなら銀座の各国料理屋でご飯を食べていたほうがいいんじゃないのか?と疑問を持ってしまう。
スペインは歴史抜きには訪れてはいけない場所だと思う。ガリアによる統治のあとイスラムの台頭、レコンキスタのあと、大航海時代になり、イギリスとの植民地戦争に負け、2つの世界大戦のあと、フランコの独裁を経験している。こんなに歴史的に面白いところはないだろうと思う。それを紅山雪夫は奇麗にまとめて、そして各都市の分析と見どころに関して丁寧な文章で説明を加えているのは素晴らしい。
スペイン旅行のお供にぜひ、この一冊を持って歩くべきだろう。
添乗員ヒミツの参考書―魅惑のスペイン
著者:紅山 雪夫
出版社: 新潮社
出版日:2009年5月1日
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