2012/02/24

アジア「罰当たり」旅行(書籍)

面白い人が旅行記を書くと本当に面白いと思う典型的な例が、丸山ゴンザレスさんの「アジア『罰当たり』旅行 」という本。ポッドキャストの「海外ブラックロード」を初回から聞いていて、その喋りの面白さから、最初はDJの仕事をしている人なのかとおもっていたら、なんと作家さんだったことを聞いて、どういう本を書いている人なのかなと思ったのが読むきっかけだった。しかし、作家だというのを知ったあとに最初に読んだのは旅行記の本ではなく、東日本大震災後に現地へ入って、現地の惨状をレポートしたどこかのサイト主催の記事だった。その記事を拝読したときに、周りの状況を見る着目点の鋭さと、冷静な分析力、そして熱い思いというのを秘めている人だというのはわかった。ポッドキャストを聞いている分には、単なるエロくて面白い格闘家のお兄さんというイメージだったのに、全く印象を払拭してしまったような気がする。

それで、書物も読んでみたいと思っていたのだが、手持ちの本が多すぎて、まだ読む機会を逸していたが、とうとう手に取ってしまった。

2007年に発行した本だから、もういまから5年前くらいの記事だとはいえ、文章にはとても勢いがあり、いま執筆されている内容からすると少し青臭いという点が否めないがそれでも、文章から当日の場面を容易に想像できる様な書きっぷりは面白い。それよりも、アジアという魔力の巣窟みたいなところに旅行をする人は、こういう体験を多くするものなのか?とアジア旅行に対して幻想を描いてしまうようなものなのかもしれないという危険性もはらんでいるなとは思った。

アジア各地をバックパッカーで旅行をする人の多くは、現実世界からの脱却とか、ちょっと刺激が欲しいとか、なにか現地にあるんじゃないのかなという期待のために行くのではないだろうか?果たしてそれは希望している旅行者にとって、実際に現地に行ったときにどのように感じることだろうか、それは旅行者によって違うだろう。著者の場合、アジアへ行ったきっかけは実際にはこの本を読んだだけではわからない。しかし、アジアを旅行したときの周りの変な人たちを惹きつける魅力は彼にはあるようだ。題名は「罰当たり」というような言葉を使っているが、個人的は、「インドとタイを旅行したときに出会った変なやつら」というのが正しい内容だと思う。

ただ、どの話も共通しているのは、「ナメられたらダメ」ということ。アジアの多くの国では、まだまだ日本人神話が通っており、日本人はおとなしい、多少ふんだくっても文句を言わない、英語が出来ないというのがある。そう思われていたとしても、思わせないようにするのが旅行者の鉄則なのだが、著者はそれを実力行使で実現するというもの。それが痛快でコミカルなのだから、面白い。ご本人が、空手を使う方なので、多少乱闘になったとしてもそこはねじ伏せることが出来るだろうという、力強いバックボーンがあるからなんだと思う。それは乱闘や強奪のようなことに出くわしたときには威力を発揮するものである。しかし、多くは詐欺のほうに出くわすのだが、それは体力や気力だけでは対応できない。臨機応変な頭の回転の速さだ。それをこの著者は出来るとは、読んでいてとても面白いのだが、途中途中、文章の中が紙面の都合からか、内容がぶっ飛ばしているところもあるので、事件の経緯やその後の結果の顛末について、読者の経験や知性で保管しなければならないところもある。

タイやインドは、本当にいろいろな変な人がうようようろついているところなんだと思う。それは住民だけじゃなく、それを求めてやってきた旅行者も含まれる。タイは、以前1度だけ行ったことがあるのだが、その時に、到着後初日からひどい下痢に襲われたので、あんまりいい思いをしたことが無い。でも、それはもう15年も前のことだし、いまだともっとマシになっていることだろう。初回のタイの印象がめちゃくちゃ悪いので、それから二度と行きたいという候補地に上がらなかった。ポッドキャストのいろいろな番組や著者のような本を読むと、タイも面白いかもと思うようになる。しかし、自らどこまでタイのめちゃくちゃぶりのところに入り込んでいくのかは、旅行者によって異なるだろうが、たぶん、あんまりディープなところまでは踏み込むつもりはないし、現地でナイトライフを楽しもうというつもりも全く無い。たぶん、著者からみたら、自分はつまらない旅行者にあたるんだろうとおもう。

ただ、あんまりディープなところに踏み込むつもりが無いので、著者のような方たちの体験記を読むのは好きだ。だから、どんなに変な人が世の中にいて、どんな変な事件が周りに起こるのかというのを本を通してどんどん読みたい。この本はまさしくそういう本の入口に当たるものだろうとおもう。

そして、この本を読んで「これ、今度使ってみよう」と思ったことがある。それはタクシーでめちゃくちゃな値段をふっかけてくるようなドライバーがいた場合には、いつもなら口でなんとか捻じ伏せているところなのだが、後ろから椅子ごと蹴りを入れてしまうというのが一番効果的のようだということ。確かに、キック力だけではあの狭い社内の中ではかなり有効な手段なんだと思う。相手が泣こうがわめこうが知ったこっちゃない。相手がすべて悪いのだから。これまでふざけたタクシーは、ベトナムと中国でしかお目にかかったことが無いが、どちらも相手より大声でわめいて周りを見方にしたことでねじ伏せたが、今度はこれに蹴りが入ればどうなるのだろうか?まぁいいや。

そういえば、著者はなんで「ゴンザレス」なんだろう?インパクトが大切だから?


アジア『罰当たり』旅行 [文庫]
著者:丸山 ゴンザレス
出版社: 彩図社
発売日: 2007/7/20

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