フエのホテルであるインペリアルホテルからの風景は、ここがベトナムだというのを忘れさせてくれるようだ。泊まった部屋が角部屋で、それも三方向が見える場所だったことも、その景観を楽しめる雰囲気を一層に深めてくれたのだろうと思う。
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目の前にフォーン川が流れているのが見えているのだが、これがあるために、風景が観るたびにがらっと変わって見えるから不思議だ。天気がよく昼間の風景は、真っ青な空の下に、ゆったりとした川の流れが見えて、たまにその川を観光遊覧船やテレビに出てきそうな荷物船が航行しているのが見えると、やっぱり川は道路の一部なのだなと思う。
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また、晴れた日だと特に思うのだが、南国だからかもしれないが、緑がとても豊富で殺風景というのが無い。そして、ヨーロッパの風景のように屋根が茶色なので、一瞬ここが東南アジアではなくヨーロッパにいるのではないかと錯覚してしまうから不思議だ。
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夕陽が沈む風景もまた格別である。川沿いで見るのもいいのだが、やっぱりベトナムは暑いところなので、長時間行くと汗がにじんでくる。それに比べて部屋の中から夕陽を眺めていると、冷房も効いているし、飲み物も自分達で用意は事前にしているので本当に便利だ。なにしろ、ごろんと横になっても観られるというところが一番リラックスができる。
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夜の風景はフエの夜景でも書いたが、橋のライトアップが見えるのが楽しい。フエ王宮にもライトアップがあるらしいのだが、ホテルの窓から見えることは無かった。まぁ、大仏ように下からライトアップをしているというような感じではないため、遠目で見てもどこにあるのかわからないのだろう。
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川上の方角を見ると王宮に繋がる橋が見える。ホテルの窓からみると、川に架かっている橋の風景がどことなく京都あたりの橋にみえてしかたがない。端の向こう側には国旗が掲揚されているのがみえるのだが、それよりも遠くに山がみえるところが、京都の盆地のように見えるのかもしれない。京都の人がいたら「全然ちゃうわー」といわれそうだ。
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川のある方向ではない方面を見てみると、フエ師範大学の巨大な敷地が見える。見えている範囲が学校の本当に一部しか見えないので、どこまで一体学校なのだろうかと不思議に思う。それに学生の姿がたぶんたくさんいるのだろうが、どこにいるのか不明だ。もちろん、地上に下りて、学校傍の道を歩いていると、師範学校の生徒たちがたくさんいるのがわかる。
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また、ホテルのプールからホテル近郊を眺めてみると、まず見えてくるのはフエの国立郵便局だ。これがとても立派な建物で、どこぞのホテルかとおもってしまった。すこしギリシャ様式の建築形式に見えるのは、植民地時代にフランスが建設した名残なのかもしれない。社会主義での建物ほどつまらないものは無いので、こういう古きよきデザイン形式の建物が残っているのはありがたい。
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さらにホテルの傍には一般市民が生活をしているところを眼下にみることができるのだが、これが観てはいけないものを観てしまったという感じに陥ってしまった。もちろん一般人の生活はそんなに豊かではないと思う。だから、建物としてもそれほど立派なものはない。トタン屋根だの、漫画の世界にでてきそうな貧乏そのままの建物がみえるのである。それも部落のように固まってみえるので、これが本当のベトナムの姿なんだろうなと思う。北京や上海に行くと、そういう庶民の生活の場は、道路からは高い塀が囲んでいるため、観光客はなかなかみることができない。中国のバカ面子のために汚いところは見せたくないという配慮なのだろう。ところがベトナムはそんなことはしない。ベトナムも面子を重んじる国民性なのだが、自分達が生きていること自体が本当の自分達であるという自負があるためなのだ。
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