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どのガイドにも載っている話題のレストランに夕ご飯を摂るために行ってみた。名前はテンプル・クラブ(Temple Club)である。名前から考えて怪しそうだ。そういえば、フエにも似たような名前の「
テンプル・レストラン」なんていうのがあったが、名前を付けたコンセプトはたぶん違うと思う。テンプル・レストランのほうは、レストランの敷地内に祠があり、元々は寺があったところだからという意味でつけられたのだが、ここでは寺なんか存在しない。店内の装飾に、寺院で使われているような仏像や掛け軸などを使っているだけのことだ。日本でも一時期、仏陀バーなるものが流行ったが、あれと同じである。
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リゾート地のヴィラ風に建てられている建物の2階にこのレストランはあるのだが、入り口から、いかにも何か出て来そうな雰囲気を感じられる。レンガの床と天井からぶら下がっている洒落た電燈の廊下を進んでいくと、会員制の店の扉のような、普通の人は入ってこないで欲しいと暗黙の拒否をしているような扉が出てくる。ここが店の入口だ。
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予約無しで行くと、たいていは待たされる。それほど人気の店であるからということもあるのだが、入り口で長蛇の列を作って待たすというような野暮なことはしない。予約無しで来店し、店内は満席である場合には、店の横にあるラウンジで待つことになる。こういうシステムを採用しているのは、パリのレストランで体験したことがある。客はメインのエリアで食事をする前に、食前酒などをカウンターバーで時間を潰すというものであり、お客としても待っていることを苦に思わないし、店の外にみっともなく列を作らせるというようなこともさせることはないという合理的なシステムだ。フランス統治下にあったベトナムだから、フランス文化を踏襲してこの店も採用しているからか、ラウンジのほうに行くように奨められたときには、ここはベトナムか?と一瞬頭がおかしくなりそうになった。
ラウンジなので、カウンターバーのような立ち飲みタイプではない。見えるか見えないかわからないようなくらいの明るさのライトがテーブルに置かれていて、その灯りの下でちょっとした飲み物を頼むことになる。もちろん、ここでの飲み代は無料じゃないのはあたりまえ。その飲み代をケチるくらいなら、こんな店にこないで、マックかケンタッキーでご飯を済ませればいい。ラウンジの雰囲気は、ホテルのラウンジよりも、怪しげな雰囲気であり、アヘン窟ほどの怪しさはないのだが、ヤクや武器の取引を葉巻を吸いながら行なっている人たちが集まってきそうな雰囲気はある。たぶん、ライティングと椅子、そして壁に掛かっている中国風の絵画がその雰囲気を作り出しているのだろうと思う。
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ラウンジからは食べている人たちの様子を伺うことができない。だから、食べている側からも、客があとどれだけ待っているのかを気にしなくても良い。もちろん、順番というものは店のほうでも把握しているため、席が空いたらスタッフが呼びに来るので、「まだかな、まだかな」と店内を覗くような非エチケットなことはする必要は無い。ただ、気が短い中国系の観光客が、スタッフに「まだぁ?」というようなことを何度か聞きに行っていたのをみて、どこにいっても中国人ってダメなやつらだと思った。
ラウンジの雰囲気をそのまま店内でも続いているところはすばらしいインテリアだと思うし、なんとなくドレスアップしなければ来てはいけないようなところではないだろうか、と感じてしまった。雰囲気は最高である。この店が人気のレストランになるのも納得だ。
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どのガイドでも載っているためか、日本人の客がちらほらいろいろなテーブルに見られたのが気になったが、白人の観光客や中国系のひとも結構いたのは言うまでも無い。ただ、隣のテーブルが、日本人カップルだったのが気になって仕方なかった。女性のほうが旅なれていて、男性のほうがあまりそうではなく、海外での料理の注文のしかたや店員との対応の仕方がとてもぎこちなく、それを女性のほうが「あーっ、もうじれったい」とそわそわしているのが、隣に座っていても丸わかりだったからだ。知らない言語で会話されていたら気にならないが、母国語で喋られるとどんなに小声でも聞き取ってしまうのが悲しい。
さて、料理はどうかは楽しみだった。注文した料理は下記のとおり。
・サイゴン風かぼちゃのスープ (Sup Bi) : 65,000 VND
・サトウキビに巻いたエビつくね (Chao Tom) : 120,000 VND
・魚のタマリンドソース (Ca Sot Me) : 120,000 VND
・オレンジ味付けの焼豚 (Heo nuong Vi Cam) : 120,000 VND
まず、スープは、濃厚な南瓜のスープで、これは粉やそんなもんじゃ実現できないものである。それにめちゃくちゃ甘い。たぶんそのままの素材を使っているのだろうと思うのだが、これがとても美味い。それもサラサラとしたものではなく、ねっとりと濃縮されたような濃さなのである。こういうスープは味が濃いので、あとの料理に影響があるかなとおもったのだが、甘さも自然の甘さなのでしつこくなく飲みやすかった。
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サトウキビに巻いたエビつくねは、これまたおもしろかった。綺麗に皮をむかれたサトウキビにエビを巻いて、それを揚げ春巻き風にしたものなのだが、サトウキビの甘さはそんなに濃いわけじゃないのは、生でサトウキビのスジをチュ-チュ-吸ったことがあるひとならわかるが、あの甘さを上手にエビの持っている甘さにあわせ、それを揚げ衣で包んだものであるので、これは食べやすい。なぜこのような食べ方をいままで思いつかなかったのか、本当に不思議だった。
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魚のタマリンドソースは、タマリンドなので甘味のある味噌っぽい味がするので、甘いソースで飯は食いたくないというような人には合わないと思う。しかし、日本でも甘い醤油で煮付けをしたりするので、それと似ているのではないだろうか。ただし、味噌の甘味とは違うのがこの料理だろう。壷に入った白身魚をタマリンドソースで漬けているわけだから、たっぷりのソースをつけていただきたい。白身魚なので、元々が淡白だから、どんなソースでもあうのだろう。
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オレンジソースの豚肉なのだが、これはフルーツソースが苦手な人にとっては地獄なのだと思う。よく、肉が不味い北欧の料理にはオレンジソースを使った料理がたくさんあるのだが、うまい豚肉を使っているのだから、なにもこんなソースにしなくてもとおもったりする。しかし、なんとフルーツソースを使ったほうが、肉が柔らかくなるようで、これはワインで肉を煮たりすると柔らかくなるのと同じ原理なのだそうだ。
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最後に勝手にデザートとして甘いお菓子をだしてくれたのはサービスだった。あとは、お茶のサービスとして、蓮花茶も出されたのは嬉しい。
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テンプル・クラブ (Temple Club)
Address : 29 D Ton That Thiep
Phone : 829-9244
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