羽田から台北に向かう便の中では爆睡できなかったので、ご飯を食べている間以外はずっと映画を観ていた。まずは1本目として、シルベスター・スタローンが監督・主演している映画「エクスペンダブルズ(The Expendables)」である。この映画、内容よりも出演者のことが話題になったということだけが脳裏に残っていたので、どんな映画なのかなと少し気になっていた。
なにしろ、出演しているメンバーというのが、全員のギャラだけで一体いくらするんだろうということと、こんなメンバーを集められるのは、スタローンの交友関係じゃないと集められないというところだろう。
・「トランスポーター」でアクション演技が光っていたジェイソン・ステイサム。
・「ロッキー4」ではその存在がめちゃくちゃ印象に残るイワン・ドラゴ役をやった、ドルフ・ラングレン
・「ダイハード」シリーズで有名になり、禿の仲間では「にいさん」と言われるようになってしまった、ブルース・ウィルス
・知事の仕事が忙しいのになぜか出演していた、アーノルド・シュワルツェネッガー
・「猫パンチ」は誰でも記憶に残っている、ミッキー・ローク
・「少林寺」のジェット・リー
こんだけ主役級の人ばかり集めてみたら、一時期のスーパースターばかりをあつめてみたジャイアンツみたいに、内容が面白くないと、本当にどうしようもないような映画になるだろうなと思った。それも、映画の内容が、ドンパチもの。かつてのマッチョ系の人たちも、さすがに50歳や60歳代にもなっていて、それでもドンパチものに出ていたり、格闘シーンをやっているので、爺たちの戯れにしか見えないだろうなというのが、映画を観る前の勝手な想像だった。
映画のストーリは簡単に述べると、南米にある独裁国家の将軍を打倒するようにCIAより元グリーンベレーのメンバに指令が出る。だいたい、この設定自体がおかしい。現役のメンバではなく、引退した爺さんたちに指令を出すんだから変なのだ。ただ、そういうツッコミどころを気にしてたのでは、この映画を最後まで観ることは出来ないだろう。この映画の楽しみ方は、映画の内容を観るのではなく、それぞれの出演者の演じ方だけをみるべきだと思う。
分かりやすいところから観てみよう。
主役のスタローンは、友達なのか親友なのか分からないほかのメンバーよりももちろん出番が多く、一番かっこよく映っている。しかし、やつももう年齢は60歳オーバー。老体鞭打ちの格闘シーンがたくさんあるため、そのシーンが出てくるたびに、そんなにジジィをいじめるなよーと戦っている相手に対して憤慨してしまうような気持ちになってしまった。まるで、ジャイアント馬場が、リング上で戦っているときに、相手に選手が大げさな演技をして馬場の攻撃を受けているのを観ているのと同じだ。
シュワルツェネッガーは、映画の中では「協力できない」と仲間にならない宣言をするために教会にやって来るシーンで現れる。しかし、そのときのシュワルツェネッガーは、かつての映画の中でのムキムキな体型を披露しているわけでもなく、顔も皺くちゃで、だぼだぼの体にあってないようなジャケットを着て出演しているのだが、その姿が、さすがにしばらく映画に出演していなかっただけあって、ほとんど素人が出てきましたというような演技だ。こんなにこの人へたくそな演技だったのだろうか?といわんばかりのものだ。そして、現在、カリフォルニア州知事をしている彼だが、映画の中のセリフとして、仲間に協力できない理由が「大統領になるための準備に忙しいからな」である。なかなか笑わせるではないか。
ちょい役だったのだが、ブルース・ウィルスも見逃せない。映画の中では伝言役として出てくるのだが、そのときの様子があまりにも影が薄いのである。もっと長い場面に出演していればいいと思ったのだが、契約の都合なのかそれともブルース・ウィルスを起用する際の的確な役が無かったのか、短い出演を探してみたら良い。
一番笑ったのは、ドルフ・ラングレン。ロッキーのときのイメージしかなかった彼の演技が、ここまで映画の中で馬鹿な子のように演技しているのには、なにか痛々しさを感じてしまう。役柄、ヤク中になってしまっているというのだが、まるで壊れたロボットみたいな動きなのである。最終的には、仲間だったジェット・リーと戦うことになるのだが、背の高いドルフラングレンは、背の低いジェットリートの戦いの際、鉄骨が背の高さに存在するところに引き込まれてしまうことで、うまいこと戦えない。その様子も「馬鹿だな」と思う。もっと天井が高いところに誘い出せばいいのにとおもうのだ。
ミッキー・ロークは、諜報員・破壊工作員が集まるバーの店員をやっているのだが、ナイフの使い方はぴか一という役。ただ、彼もほとんどヒッピーのような格好で出ているので、最初、「誰?」と思ってしまった。落ちぶれたと思われるおやじが、ダーツの的をナイフで建て続けて真ん中にぶち込むというのは面白い。
ジェットリーは、やっぱり武器を使わず、肉体を使った格闘シーンだろう。背の高い人間達に囲まれているところでは、背の低さを馬鹿にされるようなことをされるのだが、それも愛嬌。でも、実際彼はもう50歳。少林寺のときのような技の切れは、さすがに無くなって来ているのだが、ドンパチものの映画の中ではその衰えは見え難いので、問題なし。ただ、もっとカンフー的な要素が出ていればいいのにと思うのだが、どうも洋式の戦い方に変わっているところが気に喰わない。
やっぱり、映画の中で一番輝いていたのは、ジェイソン・ステイサムだろう。年齢も実際には若いという理由もあるのだが、ジェット・リーに負けずと劣らず、空手技・足技の応酬で相手を倒していくところは圧巻だ。切れが良い。そして、無口で黙々と殺人マシーンのように殺したり倒したりするところが良いと思う。あまり、ぎゃぁぎゃあ騒がないところが爽やかだ。ただ、彼を見ていると、なぜかジャン・クロード・ヴァン・ダムといつもダブって見えてしまう。同じヨーロッパ白人だからなのだろうか?でも、ヴァン・ダムは腕による戦いは全くせず、ほとんど足技でしかやらないので、戦いのシーンを見るとイライラする。この映画では出演していなかったので、その出演が見れなくてちょうどよかったと思う。
ストーリはどうでもいい独裁国家撲滅が成功するということで終わる。そんなストーリはやっぱりどうでも良い。役に立たない独裁者が元CIAの悪人とグルになって悪いことをしているというところが、あまり悪そうに見えないところも、話に矛盾がでてくるような感じだ。
原題:The Expendables
URL : http://www.expendables.jp/
劇場公開日:2010年10月16日
上映時間:103分
製作国:アメリカ
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