神保町には良い店がたくさんあるが、神保町界隈が勤務先だったときに、気になっていたのに結局行かなかった店が結構実はある。創業元禄15年(西暦1702年)の老舗中の老舗である「笹巻きけぬきすし」もまさしくその1軒。小川町交差点で淡路町方面から神保町方面に向いて信号待ちをしていたら絶対気になる店である。
店構えが、その場所だけ、どうも江戸時代にまま時間が止まっているのがよくわかるたたずまいである。なぜなら周りがコンクリートジャングルの定番のような建物が建っているのに、該当する店だけが、入口に木が鬱蒼としていて、一元屋は来るな!と無言で言っているような圧力を感じる。そして、玄関の外にあるショーケースには、寿司の値段が掲示されているのだが、これが持ち帰りの寿司折としては、ちょっと高いんじゃないの?というような値段であるから、なおさら、この店に入ることはちょっと躊躇ってしまうのである。
そんな店にモノは試しにと、ほとんどお化け屋敷にでも入るような感覚で実際に入店してみた。
ここの寿司は、すべてのネタが酢漬けになっているため、醤油につけて食べる必要は全く無い。そのまま食べられるのである。それも酢漬けになっている酢が最初は強めのものを使っていてつけており、そのあと弱い酢を使ってさらに〆ている形式をとっているため、実は鼻がつーんとなるような酸味は全く感じられない。そして、種類は数によって決まっているだけで、なんのネタを使っているかは、もうお任せ状態である。決して複数個の寿司を頼んだとしても、1つたりとも同じネタを使わないで、1つの箱に入れてくれるところがすばらしい。さすがに50個くらいの寿司を頼んだ場合には、どれかのネタはかぶっている事あろう。
このときは12個入りの寿司を注文。寿司は当然だが、注文してから作り上げる。なので、15分くらいは待たされることは覚悟しないとだめである。でも、その待っている間がわくわくするのである。厨房を見ているのも楽しいと思うのだが、ここは職人の気を散らさせないようにおとなしく待っているのが一番いいだろう。店を紹介したような本がたくさん陳列されているので、それを読んで待っているのも良しだとおもう。
寿司は木箱に納められており、それを持って帰るのだが、これがお土産やちょっとしたプレゼントとして渡すのにはとても重宝されているのが、箱から見ても良くわかると思った。よく芸能人がロケ弁当に使っていたりするという話を聞いたことがあるが、それに使われるのもよくわかる。しかし、芸能人は贅沢なものを食べているなと思う。実際に食べてみると、1つ1つは熊笹に包まれているために、他の寿司とくっつくことは無い。そして、熊笹は臭みを取る役割にもなっているためか、包まれた酢漬けの握り寿司は、あんまり酢が臭いというようなものではない。そして使われている寿司ネタは、鯛だったり鯖だったりと、切り身になっているので実は詳細はよくわからなかったりするのだが、全種類異なったネタだった。どれもこれも、パクパクと食べてしまって、本当ならもっと味わって食べなければならないというようなことをしなければならなかったのだが、どうしても食欲には適わなかった。
個人的にはここの寿司の味は好きだが、なんでも醤油をつけないと食べた気がしないような人にとっては、きっと嫌な寿司なんだと思う。調理人が自信を持っているからこそ、このような味が出来るというものだと思うし、食べる前からなんでも調味料をかけるような人は食べなくても良いというくらい、食べ物が食べる人を選ぶような寿司だなという気がした。また、絶対どこかに行くときには、ここの寿司の弁当を買って行きたいと思う。
笹巻けぬきすし総本店
住所:東京都千代田区神田小川町2-12
TEL : 03-3291-2570
定休日:日曜・祝日
営業時間:9:00-18:30
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