バンコクの中でもワット・プラケオやワット・アルンのような超メジャー級の寺院とは、観光地としてはワンランクダウンしているとおもうのだが、個人的にはここの寺院ほど、優雅で、不可思議で、派手で、金をつぎ込んで建立されているものは無いと思っている。それがワット・ラーチャボビットである。正式名は「ワット・ラーチャボピット・サティット・マハーシーマーラーム(Wat Ratchabophit Sathit Maha Simaram Ratcha Wara Maha Wihan)」という寺院。こちらは、ヨーロッパ趣味のラーマ5世が20年もかけて作ったものなのだが、その出来上がった寺院は外見的にも、内面的にも、すごいことばかりである。
ホテルからこの寺院にタクシーで行こうと思ったときに、ホテルのドアマンに「どこにいくの?」と聞かれたから「ワット・ラーチャボビット」というと、「それ、どこ?」と聞き返してきた。あまり観光地としては有名じゃないというのはわかるのだが、地元のひとがこういう答えをしてくるというのは、どこまで知られていないんだろう?とおもったし、出かけるときに、もしかしたら大した寺院じゃないのかな?と思って半分期待はしないでいた。ところが、実際に現地に到着してみて、その煌びやかさには驚いた。もっといろいろな観光客がここを訪れば良いのにと思ったくらいである。
まず、正面にあるお堂だが、これ自体が超巨大な建物になっている。正面からみるとあんまり奥が深くないものだなとおもっていたのだが、そんなことは無い。一体何人ここの中には入れるのだろうというくらいの広さである。そして、外観としては、入口付近はいかにも寺院に入ってきたなと威圧感丸出しのようなつくりになっていて、これは一体仏教なのか?それともヒンズー教なのか?それともバラモン教なのか?というなんだかよくわからない建物だった。入口の屋根は三角形を積み重ねた形にはなっているが、三角形の辺にあたるところでは、上に伸びる炎をイメージした髭みたいなものが出ている。そして、屋根事態が、黄色・赤・青・白と、タイの国旗を知っている人だったら見慣れているあの亜カラーリングで色づけられており、いかにもこれがタイの王室御用達だと証明しているようなものだ。そして入口の形とは別に中央部になると、今度は巨大でしかも平べったい円柱形の講堂のようなものが見える。その上には金色の仏塔が聳え立っているという感じだ。上からみると、まるで前方後円墳のような形をしているのである。こんな寺院見たことが無い。
内部はどうなっているのかなとおもっていたら、ちょうどこのときたくさんの僧侶が念仏を唱えている場面に出くわしてしまったので、正式に内部に入り込むことはできなかった。しかし、日本の仏教の寺のように檀家信者らしいひとたちもたくさん来訪しており、そのひとたちが僧侶の後ろに座って一緒に祈っていたのはすがすがしい。さすが仏教の国だ。それは良いのだが、正面に金色の仏像があるのは何の変哲も無い。不思議なのは、その内装だ。天井のほうに目を向けてみると、なんと天井からシャンデリアが下がっている。それも超巨大の。寺院にシャンデリアなんていうミスマッチさは、ダリもさすがに考えなかったことだろう。
もう少し建物に近寄って建物の構造を見てみる。まず入口のところの柱は、黄色や緑のガラスやタイルを使って装飾しているのだが、これがイスラム教のモスクのようにモザイク模様になっていたりするとともに、細かい彫刻の寄せ集めのようになっていることは驚きだ。一体この柱1本を作るだけでも、職人をどのくらいの人数が必要だったのだろうか?まぁ見事というしかない。円柱形の壁も同じようにモザイクデザインの彫刻とタイル張りにより作られているが、遠目でみるとこれが鮮やかになっている。
別棟になっている東屋みたいな建物の内部についても、本堂とおなじように、内装がヨーロッパの王宮のどこかの部屋のような仏教寺院にとても思えないようなつくりになっているのが面白い。これだけラーマ5世はヨーロッパナイズされていて、ヨーロッパのものはなんでも取り入れちゃおうと思ったんだろうなとおもうが、それを当時のタイ人たちは、どうおもって受け入れたんだろうか?それがとても気になる。
建築的に、そして美術的にこの建物は全体としておもしろい構造をしていると思う。是と同じような建物を現在建てようとした場合には、いったい費用はどのくらい掛かるんだろう?と下世話な勘繰りをしてしまうのだが、たぶん数百億円のくらいの価格は必要なんだろうと思う(ただし土地を除く)。
ワット・ラーチャボビット
Wat Ratchabophit Sathit Maha Simaram Ratcha Wara Maha Wihan
Open : 8:00 - 17:00
Admission Fare : 無料
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