ユトレヒトの中心にあり、街のシンボルとして君臨しているのがドム塔とドム教会。どちらもプロテスタント教会のものであるために、そんなに見ても楽しいものでもなんでもないのだが、ユトレヒトの綺麗な街並みにはやっぱりここくらいの高さがある塔が建てられているのは、映えて見えるから不思議だ。展望台としての機能はもちろん持っているし、むかしは時計表示の意味としても、ユトレヒトの町はどこからでも見えるという点では、便利だっただろうし、みんなの共有財産として利用されていたんだろうとは想像できよう。
ユトレヒトの街自体が実はローマ帝国時代から存在している街なので、オランダの国家ができるよりも先にユトレヒトのほうがヨーロッパでは実は有名だった。オランダがまだ州同盟で軽い結びつきになっていたときには、もうユトレヒトだけは街で1つの州と同じ役割を担っていた。それだけユトレヒトは他の場所から一目を置かれていた場所であったわけだが、その街に負けないような建物としてドム塔とドム教会はあるんだとおもう。
ドム教会はオランダの中でも最古の教会として実は有名で、いまはプロテスタント教会に成り下がった(?)位置ではいるのだが、建物自体はゴシックを絵に描いたような建物であるために、懐古好きなひとにとっては、数少ない教会の1つだとは思われる。
また、ドム塔のほうも実は建てられた時代は古い。そして、塔の高さはオランダで一番高い建物であるというのもすごい。塔に上りたい人は上ることができるのだが、塔の上からみるユトレヒトの街は、単なる赤茶色の屋根が広がるヨーロッパにありがちな風景だというように映るんだろうと思う。
さて、ドム塔には上らなかったのだが、ドム教会は誰でも入れるところなので、内部に入ってみた。中に入るとカトリック教会のままプロテスタント教会になったんだというのがわかるようなつくりになっていた。なんといっても、中央奥に教会には絶対必要な祭壇がある。新しいプロテスタント教会には、どこが正面なのか?というくらい分からないところが祭壇だったりするのだが、ここは違う。堂々と祭壇が存在する。それに窓に貼られている見事なステンドグラスもいい。どうでも良いような街の歴史や単なる装飾としての役割というのではなく、無学な一般市民にキリスト教の素晴らしさを視覚的に訴えるための手段に使われたステンドグラスをそのままの形で残っているのは素晴らしい。
ただ、残念なこともいくつかある。せっかくの彫刻が顔はほとんど破壊されている状態になっているのだ。まるで、ギリシャ彫刻の裸体像が、あまりにも卑猥すぎるからと陰部を全部別に隠したり、陰部を切り落とした状態にしたのとなんとなく似ていなくも無い。あまりにも露骨に人間味溢れる像だったから、プロテスタントとしては許されなかったことなのかは分からない。戦争で削られたというのであれば、それなら教会自体がもっと破壊的になっていてもおかしくないのだが、それはないのだ。
それともう1つ。教会は集会場としての利用になることもあるのはわからなくもない。しかし、それは宗教的な集会の場として利用されるだけであり、ローマ時代のように議論をぶつけるような場は屋外だというのが定番だったヨーロッパなのだが、まさか教会が昼食会の場に使われているという事実を知ったのは衝撃的だった。ピンク色のクローゼットを使ったテーブルがたくさん並んでいて、まさかと思っていた、そのまさかだったのを知ることになる。教会が晩餐の場になるのは今まで見たことが無い。特別な場なのか?とおもったが、どうやら定例お食事会というのをここでは行われているらしい。だから、ユトレヒトの人にとっては、教会で御飯を食べるというのは普通のことらしい。
あと、見逃せないのは、教会裏には中庭があるような回廊が存在する。しかし、そんなところを見にいこうとするひとはとても少ない。そんな色とりどりのような花壇が存在しているというわけじゃない。中庭はベルサイユやシェーンベルン宮殿にある迷路型庭園のようなものを縮小した感じであり、常緑樹を中心としたつくりになっているので、石造りの教会と緑の庭園がとても映えてみえるところはお勧めだ。
さらに横にはヨーロッパの中でも最古のうちにはいる名門ユトレヒト大学(Universiteit Utrecht)の本部が存在する。歴史上、オランダが緩い1つの国家になり、宗主国であるスペインから独立することを誓い合った、かの有名な「ユトレヒト同盟」を結んだのはこの中でのことだ。
ドム教会 (Domkerk)
URL : http://www.domkerk.nl/
Address : Achter de Dom 1
Phone : 030-2310403
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