これまでアムステルダムの観光地で行ったことが無いところばかりに行ってみようと思い、その中でも結構大き目の観光地としては、国立ゴッホ美術館(Rijkmuseum Vincent Van Gogh)だった。オランダを代表とする画家であることは、ゆるぎない事実なのであるが、彼は生存中には1枚も自分で描いた絵画が全く売れたことがなく、死後にようやくゴッホの評価があがって持て囃された可愛そうな運命の人である。そのゴッホの作品をたくさんこの美術館では見ることができるし、同じ時代を生きたほかの絵画の作品についてもみられることができるので、全体としてフランドルの人たちの絵画を集めた美術館というのではなく、ゴーギャンやロートレックのような印象画を描くようなひとたちの作品を集めたものだと思ったほうがいい。
ただ、個人的にはこの美術館に行く前に、是非、ゴッホという人物についての生きかたや考え方というのを事前に知った上で訪問をしたほうが良いと思う。元々の美術的な要素を持った人たちがこの美術館を観にいった場合には、学校の授業や美的センスで作品を純粋見に見ることができるんだろうが、たぶん一般的な絵画鑑賞をするひとにとっては、ゴッホという人物が描く作品について、これがゴッホという有名人が書いたものだから価値があるという先入観で見ているだけだとおもうので、本当にこの作品に価値があるのかどうかという点で見ているわけじゃないんだと思う。ただ、事前にゴッホの人生を知ったうえで、刻々と変化していく彼の作品の描き方を時間の経過とともにたくさんの作品を鑑賞していくと、ゴッホの心情がそのまま作品に現れているというのがとてもよくわかるのである。
生涯ゴッホは画商をやっていた弟テオの世話になっていた。テオが仕送りしてくる金で生計を立てていたのである。そして、テオに自分が描いた作品を売ってくれと、ほとんど押し売りというか脅迫みたいな感覚で頼んでいた。が、作品は売れない。でも、それを弟のテオが兄ビンセントには伝えずに仕送りをし続けていた。手紙魔でもあったゴッホは、頻繁にテオに手紙を送っている。売れ売れと煩い兄からの注文に対して、鬱陶しいとおもわなかったテオもすごいが、もっと理解があったのはテオの奥さんである。彼女がヴィンセントとテオとの間のやりとりしていた手紙を全く棄てずに残っていたために、後世の研究者たちは、ゴッホ兄弟の間でやりとりされていた内容を知ることができたわけだし、ゴッホの作品が一般的な目線で見たときにだんだん変な作品になって行く様子がわかるというものである。
だいたい有名な作品である「ひまわり」なんか、黄色の背景に黄色の花を描くなんていうのは分けが分からないし、全然メインの花が映えない構成なのにと思うところだろうが、これは美術専門家から見た場合、作品としてはどのような評価を与えているんだろうか?たぶん、その辺のクソガキが描いた様な作品だとおもうんだとおもうのだが、おそらく専門家はなんやらかんやらと、それこそ能書きを考えて作品に評価を与えるんだろうと思う。たぶん浮世絵の影響だとか描くんだろうが、個人的には全然違うと思う。なにをやっても誰も認めてくれないし、誰も評価してくれないし、良いといってくれる人が居ない状態で、だんだん温かい南欧のほうにやってきたときには、絵だけでしか自分を表現できないということだけは分かっていたヴィンセントが、作品の中でだけ唯一温かくなろうと無理しているとしか思えないのだ。
館内は写真が一切撮れないので、どういう写真があるのかは、それは実際に美術館にいってみて印象派の作品を堪能したほうが良い。ただ、この美術館も入館するまでにすごいたくさん人が並んでいるのだが、ミュージアムカルトを使っていたら、ディズニーランドのファストパスみたいな感覚で、いっきに並んでいるひとたちを横目に入館することができるのは嬉しい。そして、館内で歩きつかれたら、1階エリアにあるカフェに行って見るのも良いだろう。この館内、実は結構広いので、効率よく見て廻ったほうが良いのだが、じっくり見たら、ゆうに3~4時間は経過してしまうことになるだろう。それだけ美術館としてはかなり作品として展示されているのだ。絵が好きな人は絶対行くべきだと思うし、絵がそんなに好きじゃないひとは、ゴッホの人生と照らし合わせてみるのも良いだろう。自分はどちらかというと、2次元作品の絵画にはあまり興味が無いのだが、事前にゴッホの話を聞いていたので、その心情の移りを知りながら作品を鑑賞できたのでとても感銘を受けた。
また館内では作品をみるときに、日本語の音声ガイドがちゃんと用意されているので、それを聞きながら廻るのが一番良いだろう。作品をみるというより、ゴッホの人生劇場をゴッホ自体が描いた作品をつかって紙芝居的に表現しているようにみえてくるから不思議である。ちくま学芸文庫から出ている「ヴァン・ゴッホ」なんかが一番分かりやすい書物で、美術的センスとライフスタイルの両面から知ることができる本だと思う。もう1冊としてオススメなのは、司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズの第35弾「オランダ紀行」だろう。こちらもゴッホの足跡を追って、オランダ中を駆け巡ったついでにゴッホの核心に触れているような文章が多々見られるからである。こちらは絵の美術要素については全く触れていないので、純粋にゴッホの生活と心情が垣間見ることができるのでわかりやすい。
国立ゴッホ美術館 - Rijkmuseum Vincent Van Gogh
URL : http://www.vangoghmuseum.nl/
Address : Paulus Potterstr. 7
Open : 10:00 - 18:00
Admission Fare : EUR14.00
0 件のコメント:
コメントを投稿