2012/09/29

国会開会のパレード(デン・ハーグ)

1年に1度、デン・ハーグが盛り上がる日がある。それは、オランダの国会が始まる日でオランダ語では「Prinsjesdag(プリンシェスダッハ)」というときだ。単なる国会が始まる日だったら、そんなのはあまり面白くないのだが、このときに、日本の国会がはじまるときと同じように国家元首である女王が国会開催宣言をするようで、その宣言をするために国会に女王が出向くのだ。その出向くときに乗車する馬車が黄金であるため、それを観るために、オランダ中はもちろんのこと、海外からもたくさんの観光客が観にやってくるのがこの日である。毎年9月第3火曜日がこのイベントの日にあたるのだ。

2012年9月18日のこの日は、朝から雨がしとしとと降っていて、たまに晴れたりするのだが、だいたいが雨の状態だった。デン・ハーグに到着したときには、全然雨が降っていなかったのに、女王の馬車がパレードとして通る時間帯に近づけば近づくほど雨がよく降るようになってきた。晴れ男なのにこんなのはおかしい!

事前に馬車が通る道というのをウェブでチェックをした。居住地兼執務室になっているノールドエンデ(Noordeinde)宮から馬車は出発をし、最終地として国会議事堂(ビネンホフ)まで行くのである。ウェブ上では、結構あちこちをぐるぐる廻って、ビネンホフまでやってくることになるのだが、どこで観ようとも人がわんさかやってくるので、どこでも混んでいるものだと思っていたら、やっぱりそうだった。

デン・ハーグ駅からビネンホフのほうに向かう際に、ビネンホフの前にウィレム1世公の銅像があるが、そのあたりにはカフェがたくさん並んでいる。パレードの時間までそのカフェでのんびりしていようとする人たちで、すでに朝から店はどこでも満員御礼状態。しかし、そんなところでのんびりしていたら、良い席でパレードを見られるとはとてもじゃないが思えない。なにしろ、沿道の場所取りは、パレード3時間以上前から戦争状態になっているからだ。さらにいうと、外国人やデン・ハーグの町に慣れていない人たちにとっては、実はノールドエンデ宮のほうに近ければ近いほど観やすいことを知らない。それはビネンホフに近いほうが人が集まりやすいからであり、店もあるからなのだろうが、一番の障害は、道が全面的に通行止めになるために、普通なら横断できる道もできなくなり、地図が全く当てにならないような交通規制が入るからなんだろうと思う。とにかく、見学するには、曲がり角のあたりを陣取ったほうが、パレードの様子を右方向から目の前を通り、そして左手のほうだと曲がっているからお尻がちゃんと見られるという良いポジションではある。

が、だいたいこの場所は警備が非常に厳重になるところでもあり、今回陣取ったところにも同じように警官がすごい数で立っていた。だいたいの警官が何もせずに他の警官とくっちゃべっているだけであり、道路を横切ろうとしているひとを注意したり、国会議員でも、このときに初めて登院するひとたちを誘導していたりしていた。しかし、このひとたち、パレードが始まったら座ってくれれば良いのに、ずっと立っているのである。立っているのも、沿道の観客が変なことをしないように観客側を見てれば警備をしていると言う意味で納得するのだが、やつらもパレードを観覧したいという欲望があるからなのか、一緒になってパレードのほうを観ているのだ。ということは、警官たちが一番良い場所で見ているということになる。これには沿道の観光客や地元のひとたちからブーイングである。ちょうど黄金の馬車がやってこようとしているときになって、観客の中から「へいっ!警官たち!座ってくれよー!全然見えないじゃないか!!!!」と騒いでいるオッサン1名が騒ぎ始めた途端、それに便乗して同じように不満に思っていた人たちが、一斉に口をそろえて「どけー!」と叫び始めた。警備をするという名目で良い場所で陣取れるとほくそえんでいた警官たちから瞬時で笑みが消えた。それと同時に警備を彼らは止めて、隅っこに座ってじっと事の成り行きを見ていた状態になったわけである。

ビエンホフ近くのところでは、階段状に並べられた席も用意されており、そこからだとパレードを人の頭で観られないということはなく、ちゃんと全貌をみられることができる。しかしながら、この階段状の席は全席予約制であるため、一般客は座ることができない。たぶん、カフェあたりでのんびりしている人たちはこの予約席に座る予定の人たちなんだろうと思う。その予約席に座れない人は、一般人として沿道に立ちんぼうで見なければならないし、パレードが終わるまでじっとしている必要があるというものだ。

そういえば、パレードが始まるまで、たくさんの車がビエンホフの駐車場に入っていくところに出くわした。実は国会の開会式のときだけは、各国の大使がゲストとして呼ばれるようで、その大使たちの車が駐車場に入っていくのである。車の前頭部に国旗がはためいているので、それを観ればすぐにどこの国の車かというのが分かる。日本の大使も当然ゲストとして呼ばれていたし、中国も韓国も呼ばれていた。あとは観たことも無いような国旗の旗があったのだが、あとで調べようと思ったのにどういう旗だったのかさえもいまとなってはわからなくなってしまった。
パレードは、最初は民族衣装を着た人たちが歩いてくるというところから始まる。それはまるでキリストの聖血祭でもやっているかのようだったので、このパレードはいつになったら、メインの黄金の馬車がやってくるんだろうと思い始めた。が、ちょうどそのときに急激に雨が降り出してきて、一時パレードがそれで中断。民族衣装を着たパレード参加者たちが一斉に軒下に逃げて、雨から避けるということをしでかした。そうなると、これはパレードの続行が危ぶまれるはずである。



しかし、降ったり止んだりしている雨のなか、国会開催の日が変更になるかというとそれは無い。ということは、それなりに黄金の馬車を使って女王が国会に参列するのも変更が無い。じゃぁ、どうなるのかとおもっていたら、民族衣装のパレードは途中で終わって、何周か楽器隊のパレードがビネンホフの周りを回り始めた。それは沿道の観客を厭きさせないための演出であるしかない。次から次へとパレードの行進があれば、女王の馬車が来るまでの時間は潰せるし、あまり気にしないで時間を待つのは耐えられることだろう。

戦車や軍用車が走っているわけじゃないが、ライフルを持った軍人のパレードもあったりして、これが国会開催日のパレードと思うと、なんのパレードだったっけ?と困惑してしまう。

それにしても、沿道の観客は本当に多かった。それにしても、オランダ人は概して背が高い人ばっかりだから、そのひとたちの後ろに居ると、何も見えなくなる。オランダ人は男性は当然だが、女性も背が高いので、アジア人にとってはこれらの人の後ろにいたくない。鬱陶しいが子供たちがうじゃうじゃいる辺りの後ろにいたほうが見えやすいのだ。沿道を見下ろせる建物があれば一番観やすいのだろうが、そういうところは地元の人たちが真っ先に陣取ってしまっているために、席を取るのは無理。

続いて馬に乗った警備隊が登場。石畳の道を馬の蹄が響く音は、いつの時代になってもなんだか緊張する。しかし、やっぱり馬に乗った姿は誰が乗ってもかっこよく見えるのはなぜだろう?特にユニフォームを着たようなひとたちが乗っていると、自動車の時代にも関わらず馬のほうが絵になるんだろうと思われる。

最後の最後に馬車隊がやってきた。最初は普通の黒塗りの馬車で、中に乗っていたのは誰だったのだろうか?王女かその親戚か?しかし、馬車は馬の警吏隊の後ろを悠々と歩いてきた。それは周りの雰囲気を一気に変えたような気がする。いよいよ、本命の馬車が来るか!?という期待のワクワク感が見ているひとたちから出しているように見えた。



そしてとうとう、黄金の馬車がやってきた!中には女王と女王の旦那である大公が同乗している。あんまりよく女王の顔が見えなかったのだが、それでも黄金の馬車というのを生で観られたのは感激。あっという間に前を通り過ぎていったのだが、馬車の装飾はものすごいものだったと思う。金メッキで塗られているのは当然だと思うのだが、あの馬車にゆられての登院というのはどういう気分なんだろう?それに国民と観客はどういう感情で女王の登院を見ていたんだろうか?

 
当日はテレビ中継もされていて、この様子はオランダ全土に生中継されていた。中継を見ていた人たちもこの様子を祭りと思ってみていたのか、それともいつもの行事だなというくらいでしか思っていなかったのかはよくわからない。しかし、女王が自ら国会議事堂にいくときの様子をテレビ中継され、そして国民全体から祝福のような意味合いで状況を眺めているという様子は日本では考えられないので、とても羨ましい光景だと思った。

馬車および馬のパレードが通った後の道は、いくら訓練された馬だとしても、脱糞からは免れなかったらしい。もう道はうんこまみれで大変。もちろん、この後は清掃隊が道をきれいにしていったので、安心して通り抜けられることができる。

パレードの時間は1時間もないのだが、それをみるために国内および世界の各地から祭りのような雰囲気のこのイベントを見るためにやってきているというのは素晴らしい。伝統的なイベントになっているが、これからもこのパレードは是非続けていって欲しいと思う。

2012年の国会開催式典のスケジュール
URL : http://www.prinsjesdag2012.nl/prinsjesdag/

黄金の馬車のルート(2012年度)
URL : http://www.prinsjesdag2012.nl/prinsjesdag/de_gouden_koets

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