2012/05/21

コンセルトヘボウ(アムステルダム)

 
コンセルトヘボー(Concertgebouw)はオランダのみならず、ヨーロッパでは格式高いクラシックホールとして名を馳せており、ヨーロッパのクラシック演奏家たちにとって、ここの舞台に立って演奏するということはとても名誉あることであると言われている。そして、そのクラシック音楽を聴く観客も耳が肥えたひとたちがたくさんいるために、演奏家も気が抜けない状態にもなるようだ。

クラシック音楽にあまり興味が無いひとでも実はこのコンセルトヘボー全体を楽しめることもできる。毎週日曜日の昼だけしか開催されていないのだが、コンセルトヘボーのありとあらゆる場所に入り込み、コンセルトヘボーを構成する装置・舞台・舞台裏の出来事等々についてガイドを伴って汲まなく歩き回ることができるツアーが開催されている。日曜日の昼だけの1回しか開催されていないので、これを逃すと1週間待たねばならないのだが、そんなに長くアムステルダムに滞在しているような人は少ないと思うので、是非滞在する日曜日の昼には立ち寄って欲しいと思う。館内ツアーに参加するには、1人15ユーロ。ツアーの時間は、ガイドの力量にもよるとおもうが、1時間半くらいはかかるとおもう。

ツアーガイドは、実際にコンセルトヘボーに属している団員が説明する。今回担当してくれた人は、声楽とフルートを修めた人が担当。実際にコンセルトヘボウで演奏をしているので、演奏秘話みたいなのも伝えてくれるし、コンセルトヘボウの歴史も含めて知らないとここでは演奏技術だけでは認められないということの現われのようである。

説明によると、コンセルトヘボウがあるこの地域はアムステルダムの中でも港からはちょっと離れた地域であって、コンセルトヘボウができた時代のころには周りにはなにも無かった場所に建てられたようであり、一般的な住民や貴族はもっと海側に住んでいたというものである。じゃぁ、なんでこんな内陸部に作られたかというと、それは「音がうるさいから」ということと、大きな建物を建てるのに、埋立地の最先端のような海沿いに立てるのは至難の業だったということが原因のようだ。

そして、コンセルトヘボウは馬車に乗ってきた観客が馬車から降りるときに雨に濡れないように、建設の最初から道路にはみ出る様な形、つまりアーケード状態に少しなっているような形にしているという配慮が成されているという。これを現代の建物であれば、常識として考えられるが、当初こんな形に建物をしたときにはさぞキチガイ扱いを建築設計者は思われたに違いない。しかし、コンセルトヘボウはアムステルダム中央駅も作ったヘント(Adolf_Leonard_van_Gendt)が設計の1人に携わっている。

2階の廊下の部分に行ってみるとわかるのだが、建物自体が台形の形をするようになっているのが分かる。つまり、外側の壁が内側に入り込むような形状になっているのだ。これは最初からそんな建設方法にしたわけではない。建物全体が大ホールの部分を中心に中心から地盤沈下を起こしてしまったことの結果なのである。なにしろ、ここはアムステルダム。もともとは浅瀬の海の底だったところを、風車で無理やり水を掻き出して陸地にしてしまったような地盤としてはとても弱いところなのである。1990年になって大規模な補強工事を行ったことによって、その地盤沈下を食い止めることはできたというものの、地震国日本では当たり前だろうとおもっていたような建物の建て方がまったくここでは施されておらず、まるで積み木を組み立てればいいんでしょというような程度でしか建物建設をやっておらず、当然剛性のような要素なんか全く考えないで作り上げたという感が否めない。例えば、日本式の建築補強方法だと、支柱になっている柱同士を斜めの棒状の杭で支えあうというのは良く見かける方法だが、その方法を、ガイドがさも「すごく革新的な方法で建物を補強しましたー」と説明していたときに、同じ日本人館内ツアー参加者のひとたちと「はぁ・・・そうですか」という顔をしたのは言うまでも無い。

チケットを買うときにはカメラはNGですっと言われたのだが、ガイドのツアーに参加するときにツアー参加者のひとりが「カメラはダメなんですか?」と聞いたら「いいですよ」と答えたので、そこから写真を撮りたくて我慢しまくっていたひとたちが一斉にカメラ小僧のように大ホールの写真を撮り始めたのは笑えた。ただ、大ホールの光景は、クラシックのコンサートを見に来ないと本当は見れないのに、あの激安値段で見られるんだったらこんなに良いものはないとおもうし、立派なコンサートホールだということがわかるものだ。パリやウィーンのようなオペラハウスと異なり、ここはあくまでもコンサートをするための建物であり、オペラ歌手の音声が通るために作っている建物ではない。

コンセルトヘボウの内部見学ツアーでは最初は大ホールの観客の目線でホール全体を眺めたあと、2階席のほうに廻る。そのときに豪華でありながらシックなつくりで、赤絨毯が敷かれている階段を上っていく。2階は実は指揮者の控え室があり、これは演奏者とは立場が異なり、そのコンサートを全部仕切るリーダになって演じてもらうための配慮からか、一切の外部や雑音から排除されたようになっており、この控え席から直接ステージのほうへ下りていけるようになっている。控え室といったら、単なる衣裳部屋みたいなイメージがあるのだが、ここではほとんどホテルのスイートルーム並みの整備がされており、シャワールームまでも付いているのには驚いた。

2階席の客席のほうに移動してみる。ここでは注目の場所が1箇所ある。クラシックのコンサートを全体的に見通せる場所といったら、やっぱり2階席のほうがよく見えるのだが、この2階席の一番先頭列は特に前に人の頭がないのでとても見やすい。そういうところには実はVIP席が用意されているものなのだが、やはりそのとおりで、2階席一番先頭の席の79番席は、実は女王観覧席の指定席になっているところである。この席は誰も座ることができない特別の席なのだ。確かにこの席からの眺めは会場全体を見ることができるし、ステージ側からも女王が来ていることがよく見えるし、1階席の多くの場所からも女王席が見えるようになっているのだ。

さて観覧ツアーでは舞台裏も当然みることができるのだが、まずは天井裏のほうに行ってみた。こちらではライティングに関する情報を教えてくれる。実はライトは建物の天井から紐によってぶら下がり、それをコンサートホールの天井に穴を開けて、その穴を通してホールに光を与えているのだが、コンサートホールの使い方によっては、客席上部にライトは要らないだろうというようなこともできるのである。約1.5四方間隔でライトが下ろせる穴が揃っている。穴へライトを下ろすときにはリフトみたいなもので下ろすのだが、1個ずつその設定をしなければならない状態なのだ。

次はステージにいく。ステージなんていうのは演奏者じゃないと立てるような場所じゃない。こういうツアーじゃないと絶対に経験できないなーと思いながらステージに立つ。しかし、メインのステージでは、その晩から開催されるコンサートの準備をしている様子だった。

他にも音響・光調整室にもいけるし、楽団員が食事を取れるカフェテリアもあったり、特に声楽の人が発声練習をするための音響設備が整っている部屋にいけたりすることもできた。ここで、ガイドのひとが、音響調整室でいくつか面白いことをしてくれたのだが、1つは、ステージや観客をいくつかのカメラでモニタリングしているのだが、そのカメラは調整室から手動でズームアップやパンすることができるので、観客のなかにかわいい子がいるかこれでよく探しているというのを教えてくれた。また、カフェテリアのところでは、楽団員はここでは無料で食事をすることができるのだが、中国人だったらきっとその「無料」という言葉をきいたら、毎日自分の食生活をこのカフェテリアで採ればいいというようなことをいち早く思いつくことだろうし、タッパーを持ち込んで余ったご飯を持ち帰ろうとするに違いない。

ツアーの最後には、小ホールのほうに行き、そこでもミニコンサートができるというような説明をされていた。

コンサートには金を払っていくべきなのだが、こういうツアーを通して権威あるホールを見学するというのもおもしろい試みだろうと思う。

コンセルトヘボウ(Concertgebouw)
URL : http://www.concertgebouw.nl/

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