毎年4月30日は女王の日である。しかし、現女王であるベアトレックス女王の誕生日というわけではない。ベアトレックス女王の誕生日は1月31日である。じゃ、なぜ1月31日ではなく4月30日を祝日にしているのかというと、実際にこの日は前女王のユリアナ女王の誕生日なのである。日本だと、今上天皇の誕生日は「天皇誕生日」として祝日になるので、その感覚で言うと、なんで前女王の誕生日を祝日にするのか?と考えがちだが、われわれ日本人も昭和天皇の誕生日である4月29日を「みどりの日」という名前にして、いまでも祝っているではないかと考えれば納得はいくだろう。しかし、1つだけ納得が行かないところがあるとすれば、現女王の誕生日はまったく祝日ではないということだ。
その理由は、本当なら現女王の誕生日を「女王の日」とするべきなのだが、1月31日は真冬のど真ん中。オランダは不凍港だとはいえ、冬はやっぱり寒いところである。女王の日を1月31日にした場合には、せっかくの祝日なのに国民がおもいっきりはしゃげないという配慮から、別に1月31日は祝う必要はなく、ユリアナ女王の誕生日の4月30日のほうが気候がいいときだし、これまで同様国民は楽しむことができるということで、いま「女王の日」は4月30日なのである。
さて、女王の日になると、街中はオレンジ一色になる。オラニエ公から始まったオランダのファミリーカラーがオレンジだからというのがその理由なのだが、オレンジ1色だというがその統一感といったらハンパなく、どこにいってもオレンジばっかりである。建物もオレンジで飾りつけされているし、街中を歩いている人も、オレンジ色のTシャツやポロシャツを着るのは当たり前、オレンジ色に髪の毛を染めたり、顔をオレンジ色に塗りたくっている人もいたし、変態的なひとはオレンジ色に体全体を塗り捲っている人もいた。そして、場所によっては、無料でオレンジ色の帽子を配っていたので、もちろんそれをゲットしたのは言うまでも無い。が、本当なら自分の分と友達の分ともらったのだが、途中にイカレぽんちで酔っ払いのオランダ人に帽子をかっぱられたので、自分の分が無くなった。くそー、オランダ人、死ねや!とおもったのだが、酔っ払いの人間ほど絡んでしまうととんでもないことが起こるやつらは嫌な人種なので、無視して、先を急いだ。また別のところで帽子くらいは貰えるだろうと思っていたこともある。
そして、女王の日の特徴のもう1つの特徴として、街中が自由にフリーマーケットを開いていいという日なのである。だから、アムステルダムの人だけじゃなく、観光客でも道端で空いているところがあればフリマを開店すればいいのだが、その品揃えといったら、もうめちゃくちゃだ。日本でもフリマというのはいろいろなところで流行っているのだが、実際にそのフリマに行って何かを買った人というのはどのくらい多いのかわからないのだが、女王の日のフリマなんかも同じだと思うが、ろくなものを売っているわけじゃなく、その家または人にとって不要なものをフリマとして店を広げていたりするわけだから、ほとんど他人にとっては無駄なものばかりが並べられている。品物だけじゃなく、食べ物屋なんかもフリマの一種として開店してもいいらしい。そういう店は人が出入りしているわけなのだが、他の店に対しては通る人たちはほとんど冷やかしで眺めているというのが正直のところである。
道を歩いていたら、犬を散歩しているひとを見つけた。よく見たら、その犬も無理やり人間様の都合でオレンジ色の服をきているではないか!忠実な犬もここまでされたら文句も言えばいいのだが、人間語を幸いしゃべれないので喚き散らすことは無かったのだろう。
さて、市庁舎のほうに向かってみたところ、運河のところにはたくさんの船が出ていることを発見した。それもどの船も荷物を運んでいるというわけじゃなく、大音量の音楽をかけながら、たくさんのひとたちが今にも船から落ちそうなくらいぎゅーぎゅー詰めになり、さらにそれも立ちながらワイワイ騒いで船に乗っているという光景をたくさん見かけた。今日は祭りなので、アムステルダムならではの運河ではしゃいじゃおうということなのだろう。ただし、船はどこか目的地に向かって走っているわけじゃなく、運河を好き勝手に走っているという感じがした。
ただし、アムステルダムの中では有名なホテルであるホテル・ドゥ・ルロープ(Hotel de L'Europe)のあたりがどうやら船が集まる執着地点みたいのようで、ここのあたりの運河は、タイの運河市場みたいなくらいめちゃくちゃたくさんの船が出ていたし、そのあとどうするんだ?というくらいのアナーキーな状態になっていた。それにしても、船の上で酒飲みながらわーわー騒いでいるのはいいんだが、トイレに行きたくなったらどうするんだろう?やっぱり、運河に垂れ流しなんだろうか?
レンブラント広場(Rembrandtplein)からブラウ橋(Blauwbrug)にかけては、オレンジの服とオレンジの帽子を被っている人たちの塊がいて、ほとんど花火大会の駅と同じ状態。 もちろん橋のところでは、テクノ音楽をがんがんにかけているDJがオープンスペースにブースを設けて周りの客を乗せまくっていた。が、個人的にはここで掛かっていた曲は全然乗れない。
女王の日が終われば、ほとんど戦争の後みたいに道路はゴミだらけになってしまう。これを誰が片付けるのだろうとおもっていたのだが、そこはアムステルダムの市清掃局がもちろん行う。昼間もするが、夜も活動するのがアムステルダム。日本みたいに午前中だけしかゴミの集配をしないなんていうのはないのだ。
面白いことに、女王の日では、アムステルダム中が祭り会場になるようなものなので、トイレの確保をするのも結構大変。河川敷のトイレのように簡易トイレが設置されたりしているのもよく目撃したが、簡易トイレの究極版は、写真の通り、プラスチックでできた男子トイレだろう。3人が同時に用をたすことができるタイプなのだが、もちろんここでは「小」しかできない。その光景はもうほとんど丸見え状態なのだが、それはまだ許す。許せないのは、人間様から排出された尿が最終的にどこにいくのかというと、これがホースを伝わり地下に埋められた下水に直結するのが正しい接続。だが、祭りがヒートアップしてくると、そんなホースを蹴飛ばすようなバカもでてくるわけで、最終的にホースが下水管から外されて、道路にそのままじょじょじょーと垂れ流しという光景になるのだ。こういう状態になっているのは結構たくさんあった。だから、本当に街中がトイレ臭いのである。昔のヨーロッパは糞尿は窓から道路に対して垂れ流しだったので、それを思いっきり思い出してしまった瞬間だった。
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