2013/09/26

ロンドン博物館(ロンドン)

セントポール寺院から歩いて5分くらいのところにあり、世界的金融街のCity地区内にあるが、その北西部に位置するところに、ロンドン博物館(Museum of London)というロンドン市立の博物館がある。ここの博物館は市立博物館では、世界一大きな博物館として有名なところである。博物館といえども、ここは誰でも無料で入館することができるところであり、もうロンドンには行くところがないなという場合には、もってこいの時間つぶしの場所だと思う。

ここはロンドンに関するあらゆる歴史的な事実を展示している場所であるので、もう少し世界観を広げて「イギリスの」ということにはならない。したがって、イギリスの植民地時代に関する海外の様子については、ロンドンとは全く関係ないし、関係があるとすると、植民地活動によって得られた莫大な富が、ロンドン市民の生活をどのように変えていったかということは、ここでは観ることが出来るところだ。

なにしろ、いちおうは歴史博物館のニュアンスもあるので、あんまり興味が無い旧石器時代の頃のロンドンとはどうなっていたのか?というところから始まる。これは歴史博物館を作る人たちにとっては、必ずしも通らなければならない道なのかというのは甚だ疑問なのだが、たぶんローカルな人たちにとっては、自分たちの街は大昔から存在している町であるということをアピールしたいのだろう。

ローマ時代になると、ポンペイ遺跡でしか観ることがない、一般家庭の家の中の様子というのもここでは展示されている。遺跡として残されていた、住居に使われるモザイク床の見事さは是非必見。確かにロンドンは、ローマ帝国時代にもドーバーを越えて支配地域にしたというのは歴史では習ったことがあるのだが、遺跡として出てきたところに住んでいた人はローマ人だったのか、それともローカルの人で帝国内人民になったひとなのかはよくわからない。ただし、ローマ帝国の文化がここロンドンにやってきて、一般市民にまで影響があったという証拠ではある。
しばらくの時代はロンドンも他のヨーロッパ諸国と同じく、暗黒の1000年間を経験するため、文化的にも低迷し、なんの発展もしなくなる。したがって、展示されている物品についても何の新しさも発展性もないもののためか、一気にルネサンス時代頃までなにもなくなる。ゲルマン民族が台頭してくると、無知で無教養のひとたちが支配していただけで、単にキリスト教というローマ時代と共通する宗教だけで繋がっていたために、文化的に発展がなかったんだろうとは思う。

そのルネサンス期になってくると、生活の向上があっという間に上がっていく。特におもしろいのは、ペストが何回も大流行し、その原因がネズミだということを証明するもの。そして、ベストに罹った患者に対する一般的な仕打ちや処理についての紹介というのも、あまり知られていなかったので、興味津津で見ていた。なにしろ、住民の1/5が死亡した1665年のペスト大流行(The Great Plague)のときは大変なことだったようで、ペスト病に罹った患者に対して、生きた鳥を肝臓におくという、迷信的なことでしか医者が対応しなかったという真面目な笑い話も紹介されている。
 
ロンドンのもう1つの大事件としては、記念碑が建てられている結果にもなった、ペスト大流行の翌年に起こったロンドン大火災(The Great Fire of London)の紹介。絵画と瓦礫での紹介になっているのだが、街全体が炎に包まれている様子はよくわかる。なにしろ、ロンドンの街の85%がこの大火災のために焼失したのだから、その後の木造建造物の建設を禁止するという法律が出来た。ペスト大流行の翌年だから、ちょうどこの大火災によって病原菌が死滅して、ペストも収まったという話もある。セントポール大聖堂もこの時の大火災で焼け落ちたので建て替えられた。したがって、ロンドンの町はこの年を境に、全く違う町に変わったといって良いだろう。そういうのが分かる紹介だった。
その後の植民地時代になってくると、日本人が想像するちょっと昔のイギリスの華やかな文化というのを実現化するような時代になってくる。服装から家具からすべての生活様式を、それまでの原始的な生活スタイルだったイギリス人をガラッと変えさせた。なにしろ、海外から得られた品物を第三国で半強制的に売ることで利益を莫大に取っていたイギリスだから、その恩恵も一般市民にまで降りてくるのは当然のこと。そして、それまで文化の「ぶ」の字もなかった島国のところに、世界各地からの変わった品物が流入することで、多国籍的な文化が混在する街に変貌していったのは言うまでもない。その街の様子というのが店・家・人の様子という形で紹介されているので、すべての展示物をじっと見ているだけで面白い。なにしろ、それらの紹介の仕方が、観覧客を当時の街の中にタイムトリップさせるような展示になっているので、自分が当時に戻った感覚になるのが面白い
 
 
 
近代になってくると、テクノロジーの発達の時代になる。車の登場や電信・テレビの登場、そして地下鉄のサービス開始と、現代の生活に繋がるような数々の新しい技術を導入した生活スタイルに変わってくる。特にテレビの登場というのは、我々現代人にとっても切ってもきれないメディアの1つになっているのだが、それをBBCが初めて放送した内容というのが紹介されているエリアは面白い。1936年8月26日から始まった試験放送を経て、同年11月2日に正式にテレビ放送を開始したのはもちろんBBCによるもの。そのオープニングイベントでは当時の人気歌手である Adele Dixon がその名もズバリ「Television」という題名の曲を生放送でスタジオから歌っており、視聴者はそれを見ることができた。最初の映像であるために、当時の裏方の様子やテレビ放送に必要なミキサーなどの機械なども紹介されたプロモーションビデオ風になっている映像がここでは観ることができる。もちろん、いまではYoutubeで同じ映像が見ることができるので、そちらでも確認しても良いだろう。

Brings television to you ~♪

「r」の発音が当時はフランス語の影響なのかすごい巻き舌で歌っているのが印象的。ちなみに初めてのカラー放送および中継放送というのは、現イギリス女王のエリザベス2世の戴冠式のときのこと。
ちょうど館内を歩いていると、どこかの学校の生徒がめちゃくちゃたくさんいたるところに散らばって、館内の各種の展示物を写生している様子に出くわした。どこの時代のどんなものでもいいようなので、好きな題材に付いて写生を行っているようなのだが、本当にそれは写生でもしているのか、それとも題材をモチーフになにか違うものでも作るように先生に言われているのかどうかは知らないが、まともな写生をしているようには全く見えなかった。

なお、どこの書店でも結構普通に売られているとは思うのだが、ロンドンに特化した書籍に付いては、おそらくここの博物館で売られているのが一番ラインナップとしては充実しているのではないんだろうか?お土産コーナーでは、あらゆるジャンルのお土産になるものが売られており、よくもまぁこんだけデザインを考えたものだと感心した。ここでは、後日、地下鉄駅の写真集を買ったのだが、実は写真集もどきのものはこのとき生まれて初めて買った気がする。
 
ロンドン博物館(Museum of London)
URL : http://www.museumoflondon.org.uk/
Address : 150 London Wall London EC2Y 5HN
Open : 毎日 10:00 - 18:00
Holiday : 12/24 - 26

Adele Dixonが歌う「Television」
URL : https://www.youtube.com/watch?v=9Rpfek-F8Rw

0 件のコメント: