地下鉄の駅名にもなっているセント・ポール寺院(St. Paul's Cathedral)。日本でも結構有名な海外の寺院であるのだが、はっきり言って、なにがそこまで有名にしているのかさっぱり分からないところでもあった。見かけとしては、バチカンの建物みたいに見えるのだが、ルネサンス期に建てられたこともあり、そのために似ていると思われても仕方ないのだが、なにしろこの国のキリスト教はローマンカトリックではなく、独自に作った英国国教会であり、このセントポール寺院ももちろん英国国教会に属している教会である。ただ、この寺院はイギリスの中の特別な存在に扱われているので、寺院の中に入ると、後述するが、まぁびっくりすることが結構ある。
さて、この建物、寺院としては随分前から存在するのだが、それまでは木造だったので、大火事があったときに燃えてしまったことから、その後、現在まで存在する形の寺院に仕上げたのが、建築家のクリストファー・レン。実はこれ以上のことはこの人についての情報を知らない。イギリス人だったら、もっと詳しく知っていることだろうから、もう少しイギリス文化に精通したいところだ。
残念ながらこの建物は、内部で一切カメラ撮影は禁止。頻繁に係員が館内を廻っているので、その監視の目を盗んで写真を撮ろうとしていたら、カメラを取り上げられてしまう。中国人観光客がカメラを撮られて、激ギレしているところをみたが、あれはどう考えても中国人が悪い。基本はバレなきゃいいんだろうという人たちと、絶対許さないという人たちでは、後者のほうが断然理屈に合っているからだ。ただ、そういう変な客は極少であり、大抵の観光客はみなカメラは鞄にしまって、寺院の中を見学しているし、あんまり人の目を盗んで写真を撮ろうという人はいなかったことが結構不思議である。
カメラで撮る代わりに、実は無料で借りれる説明ガイドは絶対借りたほうが良い。このガイド、たぶん持って帰りたいとおもうくらい、内容が濃すぎる。かつて、ヴァチカンの博物館のオーディオガイドを借りたときにも、このガイドの説明、1個1個が長いなーと思ったのだが、セントポール寺院のガイドも、これに勝るくらい1つずつの説明がすごい長い。その説明を全部聞いていると、タメになるということもあるのだが、もっと聞きたくなるという説明のしかたも面白いし、その説明を聞いていると、写真なんか撮る気をうせてしまうくらい、各所の装飾や展示物について凝視してみてしまいたいという気持ちになれる。もちろん、日本語のオーディオガイドがあるので借りるときには日本語をでと頼んでみるとよい。そういえば、このオーディオガイド、London Passを持っている人は無料で借りれるのだが、普通の人はもちろん有料。
とにかく人がたくさん集まっているところで、そこに集まっている人たちが皆同じ振る舞いをしているのが、天蓋の真下の部分。ここには椅子が設けられていて、その椅子に座って、真上にある天蓋を見ている人がたくさんいる。もちろん、先述のオーディオガイドを聞きながら天蓋に関する説明を聞いているために、第三者からみたら、何でみんな上をぽかーんとみているんだろうという不思議な光景に出くわすのだ。
寺院の見所は建物だけじゃなく、実は床と壁のあちこちに掲げられている故人のレリーフだろう。誰が何年から何年まで生きて、生前何をしたかというのを墓標のように書かれているのがあちこちにある。あちこちというより、ほぼすべての床と壁にあるといったほうが良いだろう。世界の寺院はだいたいどこの国の場合も、床には故人の墓だったりする場合も結構ある。ここセントポール寺院についても同じように故人の墓が床になっているのだが、なにしろ、ここはセントポール寺院であり、イギリスを代表とする寺院の1つであるということになれば、事は全く異なる。なにしろ、壁や床に書かれている文字を何気なく見ていると、聞いたことのある人の名前が次から次へと出てくるのである。万有引力を発見したアイザック・ニュートンだったり、作家のオスカーワイルドのような有名人の名前がめちゃくちゃたくさんある。ただし、それらの人たちが全員遺骨がここにあるのかどうかは不明で、名前を刻んだ板をここに奉納しているという感じさえもするのだが、1つ1つは共通の形をしているわけじゃないので、独特の形と材質を使っているから、遺族や関係者の思い入れによって違うんだろうとは思う。そういう有名人の名前探しをしているのだけでも、ここの寺院にいる時間はかなり経過することになるだろう。
寺院の一番奥にいくと、第二次世界大戦時に死亡した軍人の総合的な慰霊が置かれているところである。ちょうど靖国神社のような位置づけにもなっているのがここの寺院なので、興味がある人はこの慰霊のところにもいってみるとよいが、誰が死んだかというようなことはあまりにもたくさんのひとが多すぎるために、特定の名前の刻みは無い。ユニオンジャックの旗がライトアップされているので、それを見ていると、寺院のなかにいるのに、一気に宗教的な雰囲気から軍事的・政治的な現実に目を見つめないといけないことに引き戻されるので、気分が変になる。
さて、実はこの寺院、表向きには礼拝堂のようなところだけしかないとおもったら、先にも書いているとおり、一部は遺骨が置かれる墓場でもある。地下階に降りれるのだが、それがまためちゃくちゃ広い。その地下階にいくと、昔の寺院跡を使った、秘密結社のための祭壇があったり、有名人の棺が置かれたところもある。ネルソン提督のような超有名人のものもあったり、首相のチャーチルの棺もあったりする。ただ、棺があるだけで、中を覗けるわけでもなんでもないので、それでどうなのか?といわれるとそれまでだが、棺はすべて大理石だったり黒磨石だったりするし、彫刻の施しかたが素晴らしいものだったりするので、1つの芸術作品を見に来ている感覚で観るのが良いだろう。ただし、地下階は薄暗いライトしかないために、観にくいかも知れない。
セントポール寺院(St. Paul's Cathedral)
URL : http://www.stpauls.co.uk/
Open : 8:30 - 16:00
Holiday : Sunday
Admission Fare : £16.00 (London Pass だと無料)
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