バッキンガム宮殿を見終わったあと、そのままの余韻で次に向かったのは、ハイドパーク(Hyde Park)の入口にあり、目の前には冠をもった広場まで持っているのが、イギリスでも一番有名な軍師であるウェリントン公の住まいだったところを博物館化したウェリントン博物館(Apsley House)だ。
ウェリントン公のことを知らないひとにとっては、「誰、それ?」「何した人?」ということになっていて、その人の存在自体がわけのわからん存在になっているのだろうが、ナポレオンというキーワードを出すと、「ん?」という人も出てくるだろう。百戦錬磨だったナポレオン・ボナパルトとワーテルローの戦いによって勝利を収めたときの軍師が、このウェリントン公。正式名称は、アーサー・ウェルズリー陸軍元帥。ウェリントンは大英帝国の貴族の名称であって、苗字ではない。このアーサー・ウェルズリーは、根っからの軍人であり、インド遠征はするわ、ナポレオンのイベリア半島侵攻に対して、ポルトガルの要請に対して進軍することはするし、その戦争への情熱はハンパ無いものだったが、その功績によって、爵位を短い期間に徐々に上げていき、最終的には公爵の地位を得ているひと。なにしろ、この兄もすごい軍師であり、ウェルズリー公爵であるリチャード・ウェルズリーだからだ。なお、公爵の爵位は代々引き継がれることになっているため、現在もその爵位というのは子孫が保有していて有効。通常「ウェリントン公」というのを使う場合は、初代のこのアーサー・ウェルズリーのことを指すと思って良い。
ちなみに、ニュージーランドのウェリントンという都市の名前は、ニュージーランドはもともとイギリスの植民地であり、ウェリントン公に敬意を表して名づけられたものである。
さて、建物の中はどうなっているのかというと、貴族らしい貴族の屋敷というものを全体的に博物館として公開しているようなものだった。なにしろ、王室とは異なり、貴族としてはそんなに派手になっている必要は無く、必要なものを品の良い感じにそろえているという点では、拝観していて大陸的な貴族文化を彷彿させるような感じがした。しかし、残念ながら、こちらも拝観時に写真撮影は禁止。
まず入口を入ってすぐのところにある銀食器と陶器の食器のコレクションは目を見張るものがある。各国の王室宮殿に展示されている食器コレクションと引けをとらないくらい豪華であり、品数が多く、貴族だからいろいろなお客さんが家にやってくるために、用意する食器も多かったんだろうなというは容易に想像できた。なにしろ、ウェリントン公といったら軍師でもあるが、政治家でもあり、二度の首相を務めて、ヴィクトリア女王の補佐官としても活躍をしていた人でもあったわけだから、そりゃぁこの家に頻繁に出入りしていただろうから、客人をもてなすという意味では必要な食器数だったことだろう。
食器といったら、それを使っていた場所である食卓の場もやはりここでは必見の場所。ここの食卓では、まずは壁に注目をして欲しいと思う。正面のところにはウェリントン公の肖像画があって、当主であることをアピールしているかのような堂々とした姿が映し出している。そして、両脇の長い壁には、それぞれヨーロッパの列強王国の国王が並んでいる。たぶんこの肖像画が描かれた、もしくは壁にかけられた時期というのは、ナポレオンとのワーテルローの戦いの後ではないかと思われる。その理由はあとで記載したい。まずはウェリントン公が仕えた主人である大英帝国のジョージ4世、要はヴィクトリア女王の前国王にあたる人である。それから、大陸ヨーロッパでは絶大な権力と領土を保有していたオーストリア・ハプスブルク帝国のフランツ・ヨーゼフ皇帝。あの髭が特徴的な人である。それから同じドイツ騎士団に所属していながら、ハプスブルグ家とは一線を画して別の帝国として力をつけていったプロイセンのフリードリヒ・ヴィルヘルム3世。そして、東方の国家ながら徐々に力をつけていったロシア帝国のツァーであるニコライ1世。さらにドーバー海峡を挟んで対岸にあるフランスのルイ18世のそれぞれの肖像画だ。外交官というわけじゃなかったのだろうが、なぜウェリントン公がこれらの外国の国王の肖像画を掲げていたのかが不明である。いずれにしろ、各国の国王に敬意を払っていたことは確かだろう。
黙って食卓の場の部屋で写真を撮ってしまった。バレたらめちゃくちゃ怒られるんだろうな。
そして、生涯の敵にあたる人物であったはずのナポレオンに関する展示もここには結構揃っている。もしかして、ウェリントン公とナポレオンは友達だったのだろうか?といわんばかりの展示物がたくさん存在しているのだが、おそらく博物館側からすると、ナポレオンと戦ったことにより功績をあげた公の業績を評価して、ナポレオンに関する展示も一緒におこない、こういう人物を負かせた偉大な人であるというアピールをしているだけかもしれない。もしくは、同じ軍人としてナポレオンが最終的には皇帝まで上り詰めた業績に対して、敵ながらあっぱれと評価をしていたのかもしれない。
ウェリントン公の博物館の前には、凱旋門を保有した公園が広がっている。こちらの名前もウェリントン公園と公の名前を称しているところである。偶然にもここにいたときに、近衛兵の騎馬隊が通ったので、思わずシャッターを押してしまった。イギリスと馬っていうのはやっぱり似合うところだし、それは車がバンバン走っている現代でも全然雰囲気をぶち壊していないところが素晴らしい。
ウェリントン博物館(Apsley House)
URL : http://www.english-heritage.org.uk/daysout/properties/apsley-house/
Admission Fare : £6.70
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