
さて、そんな国王がかつて住んでいたところが王宮(Palacio Real)である。しかし、現国王はここに住んでいるわけではない。国賓を迎えるときの公式行事のときだけはここを利用する。従って、普段からこの建物は観光客に解放されている状態なのだ。そういう意味ではむやみやたらに警備員が居て、緊張の中訪問しなければならないというわけじゃないので良いと思う。
そうは言っても、王宮のなかが何でも解放というわけではない。他のスペインの施設でも同じなのだが、スペインの場合、建物の内部や博物館類における写真撮影は一切合財禁止である。入場する際に、荷物検査が行われたりするのはよくあることだが、写真撮影まで禁止にするなんていうのはケチだと思う。日本の施設に良く似ている。写真撮影を禁止にして、ガイドブックを強制的に買わせるようにしているのかどうかはよくわからない。さらに言うと、王宮のすべての部屋を見学できるというわけでもないのだ。もちろん、見学通路というのが確保されているために、どこを通ればいいのかというのは観光客にはわかるようになっている。しかし、その中でたぶん目立つところの部屋だけは解放しているのだろうが、細かい部屋については全然解放されていないというのは少し残念である。



実際の建物の内部に入る前に、いくつか紹介したいところがある。それは王宮の袖口にあたるところになるのだが、王宮の正面からみて右側のところの回廊に、王室薬局の名残が残っている。フィレンツェのサンタ・マリア・ノベラ薬局には負けるとしても、王室が研究兼治癒のために設置したものであり、当時は最先端の材料と研究機関だったと思われるものが、ここにはある。建物の中に入ると、中にはたくさんのフラスコやビーカーが並んだ部屋がいくつもある。そして、ラテン語で表記はされているが、見たことも聞いたこともないような薬品や薬草、そして化合物をそのなかに入れていたのであろうという名残を垣間見ることができる。いつから残っているのかわからないが、ビーカーやフラスコの中には、まだ薬品が残っているのもある。ただ、それがいまでも効能があるのかどうかは不明である。そして、この薬局の歴代の責任者が壁の上のほうに肖像画として残っているので、どういうひとがいたのかというのを観るのも楽しいだろう。すべては王のためにあったのである。


いくつかの見所のある部屋はあるのだが、玉座の間とカルロス3世の私室は、絶対見るべき場所だろう。玉座の間は、玉座の右側から部屋に入ってくるようなかたちになるので、想像としては部屋に入ったら目の前に玉座が現れるほうが、実は感じが良いとおもう。だから、玉座の間だと言われても、はて?玉座どこ?と思いっきり探してしまった。縦長の玉座の間ではなく、横長になっているためにそう思うのだろうと思う。玉座は、複数の大きな鏡があり、謁見をする際には、部屋の真ん中にやってくるという手法だ。
カルロス3世の部屋は、中央に丸い形をした座椅子があるのだが、これがベンチ形式のようになっており、どうしてこんなものが部屋の真ん中にあるのだろうと不思議におもう。ただ、部屋全体は、床から壁まで全面的に花柄の模様を特徴としたデザインになっており、はっきりいってこんな部屋に居ると気がめいってくると思う。当時のイタリア・ルネサンスの影響からこんな部屋を作ったのだろうと思うのだが、悪趣味だなという感じがする。
部屋の中で意味が分からないとおもったのが、喫煙の部屋。壁全体に陶器が埋め込まれているのだが、その色のセンスがめちゃくちゃで、黄色と紫と緑をつかったものが、中途半端に離れて埋め込まれている。こういうデザインを「好き」とおもった王様がいたのかどうかしらないが、日本の陶器をスペインに持ってくること自体が珍しいものだっただろうとおもうので、こういう部屋ができたんだろう。しかし、喫煙の部屋と言われるだけあって、部屋の大きさがそれほど大きくない。いまのビル内にある喫煙室と同じくらい、タコ部屋スタイルだったのは、今も昔も変わらない。
一度建物から出て、門内の敷地に立って見ると、建物が三方向を囲んでおり、そして一方向を大聖堂が見えるような形になっているのが良くわかる。床も壁も全面的に大理石を使っているので、これは天気がいいときにここに立っていると、きっと目がまぶしくて開かないだろう思う。あとは、大聖堂の2階から王宮を望む景色を楽しんだらいいと思う。



URL : http://www.patrimonionacional.es/
Open : 9:00 - 18:00
Admission Fee : EUR8.00
0 件のコメント:
コメントを投稿