ホテルから歩いてすぐのところに、MRTのカリャオ駅(Callao)とカリャオ広場があり、そこに人だかりというか、人間の壁みたいなのがあり、なにか広場全体が盛り上がっていた。なにかの祭りかなーとおもっていたのだが、良くわからない。その日は日曜日だし、こういう広場であれば、何かしらの祭りやイベントが行われていてもおかしくないからだ。空港からタクシーでホテルに向かう際に、大通りがどうも通行禁止になっていたこともあるので、なにかなーとおもっていたのだが、その通りの延長がいま立っているカリャオ広場のところになる。道路を挟んで人垣がたくさんあるので、なんだろうなと思っていたのだが、実はこれが自転車レースのための道路封鎖だったのである。ちょうどカリャオ広場のところが折り返し地点のようなコースになっているらしく、大勢の自転車レーサーが束になってこの折り返し地点を廻ってくるという光景が見られる場所であるため、選手達を良く観察できる。直線道路の途中である場合には、レーサー達がめちゃくちゃ早いスピードで一気に駆け抜けていくので、あぁーと言っている間に居なくなるから、場所は本当にラッキーなところだった。
この自転車レースは、ヨーロッパでは「ツール・ド・フランス」「ジロ・デ・イタリア」と並んで三大ロードレースの1つに数えられる「ブエルタ・ア・エスパーニャ (Vuelta a España)」というものだ。正直、フランスとイタリアのほうは知っていても、スペインのこのレースは知らなかった。フランス版とイタリア版と同様に、このレースもスペイン全土をレース会場とし、競技場ではなく一般道を利用したレースを行うものである。コースは毎年変わっているらしいが、だいたいが市街地コースを利用したり、山間部の斜度の厳しいところを利用したりするのは、ツール・ド・フランスと同じである。
そして元々は4月から5月ごろにかけてレースは行われていたところ、この時期はジロ・デ・イタリアの時期と重なるため、有力な選手は全部イタリアのほうのレースに参加するためにスペインのほうには参加しないということがあった。しかし、8月から9月にかけての時期にレースの時期を変更したことによって、有力な選手がたくさんスペイン版にも参加するようになりレース自体がめちゃくちゃ盛り上がる。ツール・ド・フランスでもわかるように、ロードレースであるから、沿道に客が集まってレースの様子を自由に見られるという点で、ほかの競技とは違って身近に自転車レースに親しくなれると言う点があるだろう。ちなみに、2010年の場合は、8/28(Sat)のSevilleから9/19(Sun)のMadridまでの全21ステージで行われた。ツール・ド・フランスの場合、そのツアーで一番ポイントが高い人のことをマイヨ・ジョンヌという黄色のシャツを着ることができるが、こういうやり方はスペインでも同じようである。そして、名誉の印であるシャツの種類も、ツール・ド・フランスと同じようで、山間部を制した人に渡すシャツもある。
2010年の場合、参加チームは全部で22チーム。それぞれのチームには複数のメンバが選手が参加しており、団体でのポイントや個人ポイントを競うという点もツール・ド・フランスと同じである。今回カリャオ広場で見ていたときに、レースをしているひととは別に、ルーフの部分を開けた車が走ったり、車の上に自転車を載せて走っている車がひっきりなしに走っていた。これはそれぞれのチームが保有しているスペアの自転車なのであり、自転車レースも他の選手と体をぶつけながら競うために、たまには落車したり自転車に不調が出たりする事も出るだろう。そういうときのスペアの自転車を運んでいるというわけなのだ。これはツール・ド・フランスのときにはどうなっているのだろうと思ったが、たぶん一緒なのだろう。マラソンのときの先導する白バイ隊のようなものが来たあとに、各チームの自転車搬送隊がやって来る。そして、そのあとに選手の集団がやって来る。これはなかなか盛り上がる。最終地がマドリードであるために、なおさら選手達も気合が入るのだろう。長いレースの最後が首都のマドリードだ。その区間だけでも優勝すればそれだけでも名誉になられる。それも平地ばかりのマドリードでのレースだ。ここは負けられない。となると、必然的にもハンドルとペダルにも力が入るというものだ。そんな長丁場のレースを最終的に制したのはイタリア人のヴィンチェンツォ・ニバリ(Vincenzo Nibali)。チームLIQUIGAS-DOIMOの所属の選手である。
初めて自転車のロードレースを生で見たのだが、迫力はやっぱりあるし、よくあんな細いタイヤのチャリに乗れるなと思う。
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