2013/05/11

サンタ・エングラシア教会(リスボン)

サンタアポローニア駅から高台のほうに上がっていくと、空に突き抜けるような荘厳な教会が見えてくる。その名前はサンタ・エングラシア教会(Igreja de Santa Engracia)だ。この教会に行くには、結構急な坂道を上っていかないといけない。ただし、ヨーロッパ特有の石畳の道なので、歩くにはとくに問題ないとおもう。ところが、トランクを引っ張っていく場合には、この石畳は強烈な嫌がらせにしか思えなくなる。

そんな坂道を上っていくと、急に目の前に広がる広場と、白くてホワイトハウスの小規模版みたいな建物が見えてくるのだが、これがサンタ・エングラシア教会である。建物の形式はバロック式。もともとは今の形で最初から建っていたわけじゃなく、最初の教会は、マヌエル1世の王女・マリアのスポンサーによって1568年に建てられたのだが、そのあと1681年に建物が崩壊。翌年の1682年から王室建築家による建設が1712年まで行われるのだが、その後に王座についたジョアン5世は、この教会に金を出すということ自体にきょうみがなくなって、そのまま放置。1966年に当時の独裁者、アントニオ・サラザール(António de Oliveira Salaza)がこの教会をパンテオンとして使うまでずっと放置されていたからポルトガルっておもしろい。
途中で建設するのをやめてしまって、そのまま250年も放置プレーにしてしまった結果、ポルトガル語のことわざとして、なかなか終わらない様のことを「サンタ・エングラシアみたいだ(obras de Santa Engrácia)」と言うようだ。

高台にあるのに、さらに教会の中に入るには階段を上っていくために、最終的に教会の入口のところでも結構な高さになるのだが、この教会の屋上部分は展望台になっており、そこから外を眺めると、結構遠くまで眺めることが出来る。が、それもテージョ川のほうだけ。逆側のほうは、リスボン自体が丘の集まりであるということがわかるくらいのところであるが、建物がたくさん建って、その建物のために遠くまでは見ることが出来ない。
 
さて、内部に入ってみると、ここは教会というよりパンテオンとしての機能にしてしまったために、キリストおよびキリスト教に関するものが全く感じられない。ポルトガルを世界の海洋王にしたときの功績を忍んで、6人の偉人の慰霊がここでは眠っている。入口を入って左右3体ずつがねむっているのだ。実際にここに各人の遺体があるかというと、それはウソであり、あくまでも慰霊を収めているというところであるとおもったらいい。しかし、偉人のためとはいえ、慰霊を収めたものは、全部大理石でできており、すべてが豪華だ。6体の慰霊というのは次のとおり。
左側:
  -ヴァスコ・ダ・ガマ(Vasco da Gama)
  -アフォンソ・デ・アルブケルケ(Afonso de Albuquerque)
  -ヌノ・アルヴァレス・ペレイラ(Nuno Alvares Pereira)

右側:
  -ルイス・デ・カモンイス(Luis de Camoes)
  -ペドロ・アルヴァレス・カブラル(Pedro Alvares Cabral)
  -エンリケ航海王子(Infante d'Henrique)

この6人のために存在するパンテオンというわけじゃなく、戦後の偉人の埋葬先としても利用されている。一番有名なところは、ポルトガル版の演歌であるファドの歌手として活躍したアマリア・ロドリゲス(Amália Rodrigues)が埋葬されていることだろう。歴史的偉人の慰霊の場所とは違い、入口を入って左側にある別室にまとまって戦後の偉人たちは埋葬されている。

内覧するためには、1人3ユーロの料金を払う必要があるのだが、リスボンカードがあればここは無料で入館できる。大したものがないのに3ユーロも払うのはイヤだとおもって、入口のところから写真だけは撮って、中に入らないひとも結構いたりするのだが、この教会、いやパンテオンは内部に入ってこそその価値があるとおもうし、建築学的、デザイン的にその素晴らしさと豪華さを観てみることだけでも有益だと思う。もちろん、上の階に上って外の景色を見るのもいいだろうし。建物的には、大理石を全面に使っていると簡単には説明できるのだが、その大理石も、白大理石、赤大理石、緑大理石と各種の大理石をこれでもかーとふんだんに使っているため、日差しが強い地中海沿岸にあるこの地域の建物であるだけ、中に入るとひんやりしていて気持ちがいい。派手さはカトリック教会のようなものはないのだが、天井が高いし、それほど混んでいることも無いので、観光としてはうってつけのところだろう。しかし、事前にガイド等で情報を知っておかないと、なんのためにこれがあるのかということが全く分からない状態で訪問したのでは、最終的に「なんなの、ここは?」というオチになりかねない。だいたい説明書きは全く無いから。
サンタ・エングラシア教会(Igreja de Santa Engracia / Panteao Nacional)
Address: Campo de Santa Clara, Lisbon, Portugal
Opening hours: Tuesday to Sunday: 10am to 5pm
Admission Fare : EUR3.00

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