シントラに到着して市街地のほうに歩いていくと、だんだんタジン鍋みたいな形をした2本の塔が見えてくるのだが、これがシントラの王宮(Palacio Nacional de Sintra)である。もともとはイスラム教徒のムーア人が住んでいたところを、第6代ポルトガル王であるディニス1世(Dinis I)が最初に使うようになった主旨の内容がかかれているのだが、それは大きな間違いで、ディニス1世も居城として使っていたが、それまでもこの城はひとつの城として使われていたのは確かだ。そのあと、ポルトガル王国アヴィシュ王朝の創始者になるジョアン1世が増改築してほぼ今の形になっただけのこと。それでも全部ではなく、そのあともマニュエル1世のときにも改築されているから、もうどこまで昔のものなのかよくわからない。
この王宮は入場料が9ユーロもするものだが、リスボンカードを持っていれば割引価格(7ユーロ)で入ることが出来る。最初はカードを持っていれば無料なのかと思っていたのだが、切符を買いなさいと入口のガードマンに言われてしまい、渋々買う。あとで切符売り場に戻ってきてもいいのだが、この王宮には王宮に関する小冊子を含めたあらゆる書物が全く売られていない。だいたいこういう金になるような観光名所に関する書物がお土産として売られていてもいいと思うのだが、全くといいほど何も売られていないのだ。だから、後で気になったところの解説みたいなのが欲しいなーとおもってもそれは無理である。じっくり見たほうが良い。
館内は写真撮影をしても全く問題なし。いちおう警備員が立っているのだが、それは展示物を誰かが傷つけないようにするための監視しているだけのこと。この宮殿は特に窓ガラスというのが存在せず、窓はあるんだが、それは全部外が筒抜けになっている状態なので、泥棒が入ってこようとすれば容易に入り込むことができるような仕組みになっているのが面白い。そんなことより、こんな山奥なのに、よくもまぁ、これだけの建築材と建築を行ったものだと感心した。ミュンヘン郊外のノイシュバンシュタイン城ほどの豪華さはないにしても、それなりに王が住む住居として改築されただけはある内装と建材だったのが印象的。
ここの王宮の特徴は、いたるところの部屋に使われているアズレージョの見事さと、天井画の面白さだろうと思う。さすが王宮に使われているだけあって、アズレージョのデザインが結構細かくて、大きな視野でこのアズレージョを見ると、細かいデザインの重なりが、イスラム圏で見られるモザイク模様に見えてくるから面白い。レコンキスタとしてイスラムからヨーロッパの土地をキリスト教の土地として解放したとおもったら、イスラムの良い所だけを積極的に取り入れたんだろう。
この王宮の見所は実は3箇所ある。1つは、梁を鮮やかな木の色と金色で飾り、無数の三角形のパーツで仕切られた天井は、実は1枚1枚に鳥が描かれている。そして、鳥の顔の向きをよく見ていると、パーツを複数使って1つの動きのあるデザインにしており、そのため顔の向きは、見ようによってはリズミカルになっているのが面白い。しかし、なぜこんなものを天井デザインに使ったのかがわからない。
それから中庭のところにあるイスラム風の庭園だ。ここにも鮮やかなアズレージョが残っているのだが、そのアズレージョだけじゃなく、庭園全体がキリスト教文化圏のなかのアラブ風という奇妙なマッチングが印象的なところである。
そして、一番のメインは八角形のドーム側になっている部屋だ。ここは壁および天井の装飾がまぁ見事。壁の1面1面が全部違ったデザインになっているので、それだけを見ていても全然厭きない。ましてや天井についても同じで、おもわず口をぽかーんと開けて見入ってしまうものだ。特に天井のデザインは細かい模様を寄せ集めて作っているので、イタリアあたりのルネッサンスでは観られない、アラブ風のモザイク模様の秀逸版だという感じにも見える。
王宮(Palacio Nacional de Sintra)
URL http://pnsintra.imc-ip.pt/
Open : 9:30~17:30
Holiday : 水曜日
0 件のコメント:
コメントを投稿