ホテルから歩いていける下町っぽいところにあるレストランに行ったときに、地元のおっさんたちが、店内で放映されていたテレビのサッカー中継を齧りつく様に見ていたので、やっぱりポルトガルはサッカーが盛んなところなんだなーくらいしか思っていなかったのだが、実はこの日のサッカーの試合中継は、普通のサッカーの試合とは異なるものだったことが帰国したあとに判明してびっくりした。
リスボンには2つのクラブチームが存在しており、どちらもポルトガルのリーグの中では強豪であり、さいたまに浦和レッズと大宮アルディージャがあって、浦和ダービーと言われるくらい地元同士の試合だったら、すごい盛り上がりがあるのは有名だが、それと同じように、地元リスボンのチーム同士の試合のときは、町が二分するくらい盛り上がるものになっている。そのチームは、SLベンフィカ(Sport Lisboa e Benfica)とスポルティング・リスボン(Sporting Clube de Portugal)というチーム。SLベンフィカは赤白、スポルティング・リスボンは緑白のユニフォームだから、両者の対決のときにはスタジアムに両者を象徴する色が華やかに揃うため、それは見事な状態になるだろうと思う。
それで2013年5月2日はこの両チームの試合があったかというとそうではなく、ポルトガルのサッカーリーグの試合ではなく、ヨーロッパのクラブチームが欧州チャンピオンを決めるための試合、UEFAヨーロッパリーグの決勝を進出するかどうかを決める、地元SLベンフィカと、トルコのクラブチーム・フェネルバフチェSK(Fenerbahçe Spor Kulübü)の試合が、SLベンフィカの本拠地スタジアムであるエスタディオ・ダ・ルス(Estádio da Luz)で行われたのである。そして、その試合に地元チームが勝利をし、決勝戦へ進むことができたという祭りになってしまった日なのである。地元チームがもしかしたらヨーロッパ1位になるかもしれないという期待があれば、普段おとなしいポルトガル人も熱狂するのは当然だろう。
対戦チームのトルコのチームは、一時期ジーコが監督するということになったことで日本でもちょっと知られたチームである。が、あんまりこれ以上のことはヨーロッパのクラブチームのこと、トルコのチームに付いてはよくわからないので述べられないし、詳しい人にこのあたりの説明は受け継ぎたいところだ。
ご飯を食べたあとにホテルに戻ったら、どこのテレビチャンネルを捻っても、もちろんポルトガルのテレビ局ばかりだが、サッカーの試合で勝利したことばっかりしか放映されておらず、なにか解説があるかというと、そうでもなく、試合会場からのライブ映像が延々と流れていて、アナウンサーや解説者のコメントなし。現場の興奮を視聴者のみんなで共有しようという雰囲気が伝わってきた。サッカーファンであれば、UEFAヨーロッパリーグでの決勝進出というのがどれほど凄いものかと言うのは分かるのだろうが、個人的にはよくわからない。なにしろ日本のサッカーリーグでさえもよくわかってないんだから。ただ、ご贔屓のサッカーチームがポルトガル国内ではなく、ヨーロッパ全体の中で優勝できるかもしれないということへの期待については、経済的に下降し停滞しているようなリスボンの人にとっては、ちょっとした悦びであろうというのは容易に想像できる。
なにしろ、テレビ中継で「勝った」ということが報道されはじめると、街中も知らない間に騒々しくなっていた。自分たちが泊まっていたホテルは、ポンバル侯爵広場の傍ではなかったのだが、この広場を中心にサポータたちが通りに繰り出して、勝利を祝う祭りが始まってしまったのである。その騒ぎが自分たちのホテルまで聞えてきたからビックリした。ポンバル侯爵広場のところはロータリーになっており、かなり広い広場になっているからたくさんのひとがやってきたとしても全く収容できるほどの広さはある。さらに、サポーターたちは、道路を走る車の行き来なんか無視して、通る車の運転手に「一緒に勝利を楽しもう」とわざわざ車をとめて同意を求めているというすごさだ。それをテレビ中継し、警官も出てきて「やめなさいっ!」というようなことを一切やることはないところが、リスボンのひと、ポルトガル人のサッカーに対する情熱を示していると思われる。日本だとすぐにDJポリスなんか出てきて、秩序ある行動を歩行者や集まってきたひとたちに求めるのだが、そんな幼稚な要求を市民にしないところがリスボンのひと、ヨーロッパ人の人間性が出来ているところだろう。
だいたい、テレビ中継のときに、スタジアム全体に横断幕として「Go To Amsterdam」というのが出ていたので、なんのこっちゃ?と思っていたのだ。なにしろ、最初にテレビ中継をみたときに、てっきりポルトガルリーグの試合中継でもやっているのかと思っていたので、それだったら、アムステルダムなんて関係ないじゃんと思ったからだ。ヨーロッパもそうだが、サッカーの試合はいろいろなリーグが併行して行われているので、なんの試合で盛り上がっているのか実はよく理解していない、無知な状態で見ているというところに問題があるのだろうと思う。あとで調べたら、上述の通りの状況だということであり、その決勝戦がアムステルダムで行われるということを知ったので、あの横断幕の理由が後で分かったということに気づくのだ。
ちなみに試合が行われたスタジアムは、地下鉄青線のコレジオ・ミリタール・ルス(Colégio Militar / Luz)駅の目の前にある。この駅はスタジアムの隣りに巨大ショッピングモールのコロンボ・ショッピングセンタ(Centro Comercial Colombo)が存在しているので、このあたりはそれだけでひとつの巨大な街が形成されているところだ。ポンバル侯爵広場は、同じ青線で乗ってくれば、そのままやってこれる場所なので、スタジアムの興奮のまま地下鉄に乗ってきている人も多かったのだろう。なにしろ、ここは乗り換え駅でもあるわけだから。なお、スタジアムは正式の名称以外に、いろいろな名称を持っている。地下鉄の駅にも使われている通り「光のスタジアム」と言われていたり、SLベネフィカの選手・ファンにとっては、「カテドラル」と呼ばれていたりするのだ。それだけ、ファンにとっては聖地であることは間違いない。
しかし、2013年5月15日にアムステルダム・アレーナで行われた決勝戦では、イングランドの強豪チェルシーに2対1で負けてしまって、残念ながらこの年のリーグではSLベンフィカは準優勝で終わった。1983年以来の準優勝である。
SLベンフィカ(Sport Lisboa e Benfica)
URL : http://www.slbenfica.pt/
本拠地:">エスタディオ・ダ・ルス(Estádio da Luz)
UEFAヨーロッパリーグ
URL : http://jp.uefa.com/uefaeuropaleague/index.html
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