2011/05/21

聖マルコ教会(ザグレブ)

ザグレブの象徴にもなっているのが、高台のゴルニィ・グラード地区に存在する聖マルコ教会(sv. Marka crkva)である。この教会はケーブルカーに乗って高台に上がってきたあと、そこからまっすぐ伸びる聖キリル&メトデイウス通りを歩くと、正面に見えてくる。この通り名になっている聖キリル&メトデイウスというのが、スラブ系で使われているキリル文字を発明したキュリロスとメトディオス兄弟の名前から付けられたのだろう。
この教会、一度見ると本当に病みつきになって印象深いものとして記憶に残るものだ。クロアチアを紹介する雑誌やガイドには絶対この教会のカラフルな屋根を紹介している。それだけ印象が強いものなのであろう。写真で見るより、青く晴れた天候のしたでこの教会の屋根を実際にみると溜息が出てくる。

屋根はタイルで作られており、基調は赤・白・青の三色のチェックで、真ん中には2つの紋章がデザインされている。基調になっている三色は、現在のクロアチアの国旗に使われている赤・白・青の三色である。この三色はスラブ国家の象徴を表す色でもあるのだが、クロアチアでは、赤は内陸部、白が海岸部、青がアドリア海という象徴を表すものになっている。では、2つの紋章というのは一体何を意味するのか?左側のほうは、クロアチア王国の赤白のチェックと、ダルマチア地方の象徴の3頭のライオンと、スラヴォニア地方の象徴の星とテンとサヴァ川の紋章を組み合わせたものである。ベースがクロアチア王国の紋章であるところがミソだろう。もう1つの紋章である右側の紋章は、ザグレブ市の市章である。3つの塔のある城がデザインである。
クロアチアを知るためには、クロアチアの紋章を知っておくといい。クロアチアのサッカーチームのユニフォームにも使われている、カーレースのフラッグみたいな赤と白のチェック模様は、旧クロアチア王である王家の紋章である。それはいまのクロアチアの国旗の真ん中にも使われている。そして、クロアチアの国旗の真ん中を良く見ると、旧クロアチア王が使っていたチェックの模様の上に5つの家みたいな紋章が見える。これは、左からクロアチア、ドブロブニク、ダルマチア、イストラ、スラヴォニアの紋章をあらわしている。クロアチアの国旗のなかにクロアチアの紋章ってどういうこと?ということになるのだが、クロアチアという国家のある地域は、いくつかの昔から呼ばれた地域を総称してできるのであるが、そのなかでもクロアチアという地域はザグレブを含むハンガリー王国の一部になっていたときの北西内陸地域のことを指すのだ。そして、ダルマチアやスラヴォニアは地域名なのでいいのだが、ドブロブニクとイストラというのが特別な街として独立していた経緯があるために、1つの地域としてカウントされているところが面白い。だから、いまでもクロアチアのひとにとっては、ドブロブニクというのは特別な場所である思いはあるようだ。

さて、この教会はこの屋根のところだけがどうしても注目されてしまう。そのカラフルなデザインもそうなのだが、屋根はハンガリーのジョルナイを使っているから、また贅沢な教会だといえよう。ジョルナイは、ハンガリーを代表する窯焼きの場所。ヘレンドと並んで南部にあるジョルナイも人気だ。このジョルナイは、オーストリア・ハンガリー帝国において、代表的な窯焼きとして台頭してきたために、ウィーンのシュテファン寺院にも使われているほどだ。もちろんクロアチアもオーストリア・ハンガリー帝国に含まれて、いまのデザインになったのは1882年。まさしく、時は皇帝フランツ・ヨーゼフのときの華々しい時代なので、これだけ贅沢なものになる。

それで、内部にはなぜか入ることができない。たぶん入れるときはあるんだろう。教会の場所はクロアチアの大中枢部で政治機関がたくさんならんでいるところであるため、かなり警戒が強い場所。だからなのかわからないが、教会に近づく人に対して、警官隊が常ににらみを利かせている。それだけならいいが、内部に入るということは、そこに爆弾を仕掛けられる可能性があるからということもあるのだろう。それでむやみやたらに中に入れさせないのかもしれない。それでも、絶対この教会はザグレブの顔である場所なので絶対に行くべきだと思う。どこから写真を撮っても絵になる教会だ。

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