クロアチアはサッカーがとても強いところである。サッカーのワールドカップフランス大会だったかで、日本はクロアチアと対戦したこともある。そして、名古屋グランパスエイトで活躍したストイコビッチの故郷でもある。いまストイコビッチは名古屋の監督をしているから、意外と日本とクロアチアはサッカーを通じてよく知った仲だといったほうがいい。
クロアチアが欧州選手権で試合をするとき、その応援のすごさは、イングランドのフーリガンとは異なるのだが、なかなか定評があるものと言えよう。なにかの拍子で Youtube でクロアチアの応援団のハーフタイムでの様子を撮影した映像を観たのだが、スタジアム全体が揺れるような応援をして、そして決して打楽器でうるさくするのではなく、声だけで、歌だけでその応援をやろうとして盛り上がっている様子だった。クロアチアは人口が少ないとはいえ、サッカーにかける熱はどこの国よりも熱いという印象はあった。
その歌によるクロアチアチームへのエールを意味する応援というので、絶対使われる音楽というのがクロアチアにはある。それはクロアチアのロックバンド・トンプソン(Thompson)の「Lijepa li si」である。この歌を歌うことが慣わしといつのころかわからないが成り立っているようである。それは、テレ朝でワールドカップサッカーへの途中経過を報告する際に、サラ・ブライトマンの「A question of Honor」の曲がかかるくらい現地では御馴染みとなっている。つまり、トンプソンの曲は誰もが知っている曲であり、誰もが歌える曲なのである。
でも、この曲がトンプソンという人たちの曲だというのは全くしなかったのだが、クロアチアの情報を渡航前に調べているうちに、クロアチアで一番良く知られているバンドというのがトンプソンであるというのを知って、トンプソンというのはどういう曲を奏でる人たちなのだろうというのが全く想像できなかった。なぜならトンプソンという名前が、アメリカ人にでもありそうなありふれた名前なので、ガイドあたりに書いているトンプソンと、検索して出てきたトンプソンが同一のものなのかは全然わからなかったのである。だから、クロアチアに着いたら、まずはトンプソンのベスト版でも買って、どういう曲なのか聴いてみたいなと思った。
さらに事前に調べてみると、トンプソンはその曲が過激すぎるために、いろいろなところで反対にあったり、自粛にあったりしているという話も見たことがあった。どこまで本当の話なのかは定かじゃないから、きっとロックバンドというキーワードはわかっていたので、今は亡き聖鬼魔Ⅱみたいな曲調だったり、「ぶっ殺せー」みたいな歌詞をばんばん使っているバンドなのかと、勝手な妄想は広がった。
しかし、帰国して、現地で買ったベスト版のCDアルバム「Sve najbolje」を実際に聞いてみた。アルバムの曲は下記の通り。このアルバムはトンプソンが活躍した過去の曲の中で、1991年から2003年までに発表したなかから選ばれている。CDはクロアチア語の題名しかないので、括弧書きで英語に訳したものも追記してみた。
「Sve najbolje」: Thompson
Released in 2003
1. "Ivane Pavle II" (John Paul II)...............................4:28
2. "Radost s visina" (Joy from Above)............................4:58
3. "Lijepa li si [s gostima]" (You are Beautiful)................4:18
4. "Prijatelji" (Friends)........................................3:56
5. "E, moj narode" (Oh, my people)...............................4:56
6. "Reci, brate moj" (Tell me, my brother).......................4:25
7. "Neću izdat ja" (I will not betray)...........................4:08
8. "Rosa" (Dew)..................................................3:02
9. "Ljutu travu na ljutu ranu" (Sour grass on the sour wound)....4:18
10. "Ne varaj me" (Don't deceive me)..............................4:15
11. "Geni kameni [uživo]" (Genes of stone)........................6:02
12. "Iza devet sela" (Behind nine towns)..........................4:00
13. "Moj Ivane" (My Ivan).........................................3:33
14. "Zaustavi se vjetre" (Stop, wind).............................4:19
15. "Pukni puško" (Gun, shoot)....................................3:36
16. "Bojna Čavoglave" (Čavoglave Battalion) ......................3:23
17. "Anica - kninska kraljica" (Anica - the queen of Knin)........3:52
18. "Stari se" (Getting older)....................................3:45
このアルバムの中には、クロアチアのサッカーチームの応援歌にも該当する「Lijepa li si」が入っているので、是非聞いて欲しい。
さて、曲調なのだが、決して「あぁあああ」と叫ぶようなヘビメタ系でもなければ、過激な歌詞をばんばん出しているようなバンドでは全然ない。バンドが持っている基本的なコンセプトとしては、「祖国、神、家族」。もともとクロアチアは歴史的に、大国に常に侵略されていたので、独立心というのは常に持っている。そしてどこかに支配されているため、クロアチア人であることを一番の重要の誇りだとしているのである。つまりアイデンティティを常に保持しているからということだろう。だから、クロアチアの内戦だったり大セルビア主義勢力に対する反抗というのが、反抗された勢力からすると「過激」というのに見える。自分たち日本人から見たら、遠い国での事象は、一方からの情報が正しく、それ以外の情報は嘘だと勝手に思ってしまうところがある。実際に曲を聞いたら、全く過激でもない。祖国が好きだー!祖国が素晴らしい!祖国が一番美しい!と言っているだけ。どの曲も実はニュアンスは同じ。だから、愛国心バンバンに入った歌詞を歌っている人たちなのである。それが過激だと言われてもしかたないが、クロアチア人の愛国心は半端無いので、彼らの曲が好きになり、いろいろな場面で使われるのは当然といえば当然なのだろう。
いい曲をたくさん歌っているので、是非クロアチアの音楽にも日本はフォーカスを当てて欲しいと思う。
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