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ブダの丘の上にある王宮は、ハンガリー王国が建設されたときからここに存在するというわけではない。最初はセンテンドレに王宮はあった。モンゴル軍がハンガリー大平原を荒らしに荒らしまくったあげく、当時のモンゴル皇帝オゴティが死んだことによるモンゴル軍の撤退によって、ハンガリーをもう一度再建しようと立ち上がったのがベーラ4世(Bela IV)。そのあと、ルネサンス時期に王になったマーチャーシュ1世のときに、イタリアからの職人たちが集まって、いまのような華やかな佇まいのある建物群を作った。
ケーブルカーで丘に上がってくると、そこは王宮の外庭のところに出てくる。まずは、王宮のほうに向かって歩いてみることにするのだが、正面に行くには階段を下りて前庭に行ってみよう。目の前にドナウ川が流れているのが見えるいい景色だ。
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階段を下りるときにちょっと左上のほうに顔を向けて欲しい。羽根を広げた鳥の像があるのが分かると思う。それはハンガリーでは伝説の鳥といわれている「トゥルル(Turul)」。ハンガリーでは一番重要な鳥であり、マジャール民族を率いたアールパードの母親が夢の中でこの鳥が現れ、アールバードを身ごもったという、まるでキリスト教のマリアがキリストを身ごもった受胎告知に似ている。そのときの大天使ガブリエルと同じ役割になっているのがこのトゥルル。現在のハンガリー国軍の紋章にこれが使われている。
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王宮は実は5つの建物から成り立っており、そのうち4つの建物は国立美術館として使われている。前回ハンガリーに来たときにここは観ているので行くのは止めた。ウィーンのシェーンブルン宮殿みたいに、宮殿で使われていた装飾品や展示品があるのであれば見たいところではあるが、ここは主に絵画と彫刻しか無いので、個人的にはちょっと趣向に合わないから、二度見たいとは思わなかった。そして、王宮のもう1つの建物は、中庭を通って行く事のなるが、ブダペスト歴史博物館(Budapesti Torteniti Muzeum)だ。
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建物の目の前には、オスマントルコがハンガリーに侵攻してきて、ブダから追い出したオーストリアの大尉オイゲン・フランツ・フォン・ザヴォイエン=カリグナン(Eugen Franz von Savoyen-Carignan)。通称オイゲン公と呼ばれるこの人は、サヴォイア家の貴族であり、フランス人。フランス人なのになぜオーストリアの軍人になっているのかというと、彼が長男ではなかったから。伯爵家に生まれていたのに長男であるため爵位を受け継ぐことが無かったので、職業軍人としてしかいきていくことができなかったのだが、祖国フランスでは採用されてなかったので、オーストリアにきたというのである。その働きは、とてもすごかったので、こうやって銅像としていまでは崇められている。
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そして是非忘れてはいけないところが、マーチャーシュ王の泉と呼ばれるところがある。ローマのトレビの泉のような役割を観光客にはあるみたいで、ここにコインを放り込んで「またブダペストにこれますように」と祈るのだそうだ。トレビの泉ほど有名ではないし、コインを投げている人を見かけることは無いのだが、それでも彫刻としては見事なので是非忘れずに観て欲しいと思う。
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