2011/10/09

シナゴーグ(ブダペスト)

ブダペストのシナゴーク(Dohany utcai zsinagoga/nagy zsinagoga)は、とても大きく、まるでオペラハウスのような豪華絢爛な装飾とデザインになっているので、ぜひブダペストに行ったら見るべきスポットだろう。ヨーロッパで一番大きく、世界でも、エルサレムとニューヨークに次いで大きなシナゴーグだからだ。表通りから見れば、2つのたまねぎ頭の塔が見えるし、建物全体が縞々模様になっているので、遠目で見てもよくわかる建物だ。この2つのためねぎ頭の形は、ビザンチン式建築といわれ、ロシア正教の教会やトルコのイスタンブールに残っているモスクと似たような形式である。
内覧する際には、いくつかの料金コースが分かれているので、自分が行いたいコースを選べば良い。しかし、入り口付近にある料金表を見ても、実はよくわかんない。よくわかんないので、窓口の人に聞くのも良いのだが、これがまたわかりにくい。簡単に言うと、シナゴーグの中の見学だけ、見学+博物館閲覧、見学+博物館閲覧+もう1つの美術館という組み合わせに分かれている。見学といっても、これは自由に見られるというわけじゃなく、見学の際にガイドが就くようになっており、そのガイドの誘導のもと、説明と各所を廻るということになっている。ガイドは、英語、ドイツ語、ヘブライ語、フランス語、イタリア語、スペイン語だけであり、日本語の説明は無い。だから、基本的に英語の説明ガイドについていくことになるだろう。ガイドがスタートするまで、実は中の見学ができないかというとそうではない。ガイドは夏時間だと、毎時30分にスタートするので、その間に入館した場合は、次のガイドスタートまでが暇なのだ。その間に好き勝手にシナゴーグの中を歩き回るというのはありだろう。とにかく、シナゴーグの中は広いため、あちこち写真を撮っても撮りきれないかもしれない。ただし、二階席に行ける事は無いので、一階フロアであちこち見ることにしたら良いと思う。キリスト教とは違うので、なにか礼拝物があるというわけでもない。肖像画があるわけでもない。正面に祭壇があるだけなので、まさしく見ようによっては、劇場のように見えなくも無い。正面のカーテンが上がれば、中からステージ俳優が出てくるというような雰囲気さえもある。しかし、ここはあくまでもシナゴーグであるため、ユダヤ教の信者たちが祈りをささげる場所である。だから、むやみやたらにフラッシュを焚いて撮影するのはNGだ。
このシナゴーグ、実は特別なつくりになっている。それはなぜかというと、ユダヤ教のための教会というのではなく、キリスト教徒のための教会としても使えるようになっているということだ。シナゴーグ自体、第一次・第二次世界大戦のときにでも破壊されなかったためで、その際に、宗教が関係なく誰でも祈りができる場所として改造したらしい。ユダヤ教徒とキリスト教徒が同じ日に礼拝をすることはないので、それが可能なのだそうだ。だから、教徒たちが座る椅子に関してみれば、通常のシナゴーグだと、何も無いところに椅子が並べているだけというのが一般的だが、キリスト教礼拝との兼用になるために、聖書を置く机も用意されているし、跪いて正面を拝むことができるような仕組みにもなっている。ガイドの説明を聞いていて面白いことをいうなーと思ったのは、シナゴーグ正面のデザインについて。このシナゴーグができたのは、1859年のこと。いきなりガイドの説明がウォルトディズニーのことになったので、なんでシナゴーグと関係あるんだろう?と思った。ウォルトディズニーが実はユダヤ教徒だったとか、ウォルトディズニーと会社がこのシナゴーグのために大金を寄付したとか、そういう話になるかと思ったらぜんぜん違った。実は、正面天井に書かれている図柄の一部が、ミッキーマウスに見えるのである。ウォルトディズニーがミッキーマウスを作ったのは早くても1920年代。シナゴーグの内装が完成したのは1859年だとすると、実はウォルトディズニーは、ここのシナゴーグの柄からインスピレーションを得て、いまのミッキーマウスを作ったのではないか!という主張をし始めたのである。こういうギャグは英語話者にはとてもウケが良いみたいで、ツアーガイドに参加した人は割れんばかりの拍手をしていた。確かに言われてみれば、ミッキーマウスの輪郭に見えないことも無い。
ちなみに、1990年に内部の改装工事を行っているのだが、これは化粧品メーカーであるエステー・ローダーが、自身がユダヤ系ハンガリー人であるため、500万ドルの寄付を行ったことにより完成されている。従って、いまのような絢爛な内装になったのはエステー・ローダーのおかげだということでもある。

内部の閲覧のあとは、中庭のほうにガイドは移動する。中庭に行く手前には、実はユダヤ教信者の墓が見えてくる。ここには、ハンガリー全土で1944年ごろにナチスドイツによって大量殺戮されたユダヤ人の屍が眠っているところだ。元々は、各地で殺されたユダヤ人を、このシナゴーグの土地に全部集めて埋葬しているというものだ。その数2万体以上。埋葬されている人の名前は、墓の壁に小さい字で書かれているので、興味がある人は確認したら良いと思う。また、もともと屍だけ埋葬されていただけじゃなく、墓ごと移動してきたひともいるので、そういうひとたちもここに眠っているものだ。
さらに進んでいくと中庭が見える。ここには特徴のある1つのオブジェが存在する。「鉄の木」と言われるそのオブジェは、木の葉っぱに模した1枚1枚が、殺されたユダヤ人の名前が刻まれている葉っぱなのである。葉にすることで永遠に命をもらえることができたということを意味しているようである。
ガイドはこの中庭の説明でおしまいだ。裏の博物館に行かない人はここから出て行くことになる。裏の博物館には何があるかというと、ユダヤ人たちの礼拝に使う過去の遺物を収めている。礼拝に必要な旧約聖書や、銀皿などなどだ。最初は馬鹿にしていたのだが、意外にその量がたくさんあるので、まずはビックリするだろう。ナチスによる虐待とユダヤ教徒というのは切っても切れない関係であるので、日本における朝鮮人の扱いみたいに、微妙なもの、つまり腫れ物のようになっていることはガイドの説明を聞く限りにおいては感じた。どこの世界でもいじめられたほうが、過度に敏感になり、歪曲して歴史認識をしているということなのだが、ここでもそんな感じが見られた。Dohany utcai zsinagoga/nagy zsinagoga
住所:1074 Budapest, Dohany utca 2
メールアドレス: aviv@aviv.hu
電話:+36 1 462 0477
ファックス:+36 1 462 0478

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