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民族博物館の建物は博物館として建たせているにはもったいないというくらいの重厚な建物だ。展示物よりも、まずは入口を入った最初のホールのところで目を奪われる。一体この豪華さはなんのためにここまで装飾したのか?そして、この無駄なスペースはなんのために作られたものなのか?という2大疑問が出てくる。
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この豪華な1階エントランスホールの全景写真を撮ろうと思ったら、2階に上がらないととてもじゃないと無理。1階からは単に高い天井をぽかーんと口を開けて見上げるだけしかできないし、360度撮影ができるようなカメラがあったら、楽しい写真が撮れるだろうとおもうが、そんなものは持っていないので部分的な撮影しかできなかった。
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中に進んでいくと、ここでは博物館の名前の通り、ハンガリー各地の民族衣装の展示から、ハンガリーの田舎での生活スタイルや、一般家庭の家具の展示はもちろんのこと、ハンガリーのひとたちの結婚式や葬式のようなイベントの様子、それとハンガリー名産になっているワインの造り方や陶器の作り方のようなものまで幅広くハンガリーの民族・文化を知ることができる。
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衣服デザイナーやファッションコーディネータのひとにとっては、最初に現れる民族衣装のエリアを見るのはとても参考になるのではないだろうか?ハンガリー平原に広がっている各地の民族衣装が展示されているが、どれもこれもカワイイし、そして場所によっては、これはモンゴルか中国北部の服装に似ているのでは?と思わせるような衣装がある。それが正式な彼らの民族衣装であるということを考えれば、ハンガリーのマジャール人たちがアジアからやってきた民族であることが分からなくも無いだろう。
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それよりも吃驚したのは、ハンガリーがオーストリアと二重帝国になる前のハンガリー領土の最盛期の地図が掲示されているのだが、これをみると、ハンガリーは北はポーランド、みなみはルーマニアやクロアチアまでがハンガリーだったのかーというのを改めて知る。そして、その領土内に住んでいる各民族の紹介をこの博物館で行っているので、あれ?これはハンガリーかな?というようなものまで展示されていることに気づくときもあるのだが、それはこの影響のためだ。
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もっと面白いのは、100年くらいまえからハンガリーの各地の民族の様子を写真として残しているひとが居るようで、その写真から当時の本来の民族生活というのはどういうものだったのかというのを垣間見ることができるのも楽しい。展示物だけ置かれているのではなく、実際にその道具類を使って生活している生の人間の一部分を観られるというのは特に参考になった。
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衣装にバラエティさがあるということは、その衣装を作る生地の産業も盛んであることは当然だろう。その派生からか、実はハンガリーはカーペットなどの生地産業も昔から盛んなところだ。そのまたデザインがカラフルで、観ているだけで、これは楽しくなる。きっとここに展示されているデザインを真似して、グッチやヴィトンあたりが新しいベーシックデザインとして出展するときも近いのではないだろうか?デザイナーだって、脳みその中だけで次から次へとインスピレーションが出てくるとは思えない。民族衣装回帰から生まれてくるデザインだって、めちゃくちゃあるはずだからだ。
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結婚式の様子を展示しているところに行ってみたのだが、女性は花嫁衣裳群として、花婿の家に行く際に、引越しをするようなくらいの大荷物を持って移動する。そのときの家財道具がハンパなく多いのだ。クッションや毛布を中心に布製品の荷物が多いようである。
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そして人間には最終的には死が待っている。その死に対してもハンガリー人はどのような思いをもって故人をしのんでいるのかというのも、結婚式のような華やかさとは違う面を見せるという意味で展示されているのは面白い。もちろん、西暦1000年のマジャール王国建設のあとはハンガリーはキリスト教国家になっているので、キリスト教形式の葬式になっているのは分かる。
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地下階にいくと、薄暗いところに、いろいろなデザインの昔のカーペットが展示されている。そのデザインを見ていると、これいまの時代に使っても全然見劣りしないのにというようなものばかりが展示されている。絶対ここに展示されているデザインのものを、今風にデザインして売れば売れるんじゃないのかな?というのは思う。
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そして残念なのが、ここで展示されているものを1冊の本にまとめてくれれば、あとでじっくりと楽しめるのになと思ったのに、全くまとめるつもりがないのか、展示物一覧に関する書物がお土産コーナーに売られていなかった。どうでも良いようなクソ土産製品なんかがたくさん売られていたのだが、永久保存版になるような資料本をまず最初に売ればいいのにと本当に思う。
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民族博物館 (Néprajzi Múzeum)
Open : Tuesday - Sunday: 10.00 - 18.00 (Closed on Monday)
Address : 1055 Budapest, Kossuth Lajos tér 12.
Phone : 36/1/4732-440
Fax : 36/1/4732-441
URL :
http://www.neprajz.hu/
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